名工作バジュラキラヤ
サイズ: 24cm
重さ: 2.2キロ
特徴: 鋳型抜きからの彫刻による銅製仏像
仕入れた時期: 6年以上前
スパイキーのお勧め度: 秘蔵・マイコレはすべて★4以上にて記載しません。
※わからない言葉等がございましたら、左側ナビのヒマラヤ水晶の解説と用語解説もご覧ください。
【 スパイキー解説 】
うわぁ、これはもう見るからにキテますよね。 大迫力、ドドドドドーンッですが、こちらの仏様はバジュラキラヤ(金剛橛)といいます。 さすがに日本人には見慣れないでしょう。 チベット密教の4宗派の中でも絶大な支持を誇る(確かどこかの宗派の最高神だったと思いますが)バジュラキラヤは宗教的儀式を行う際に結界を張る道具である金剛橛の仏の姿だと言われております。 この仏様自身が手に持っているものが金剛橛です。 バジュラのヘッドに3つの刃を持つ刀状の仏具です。 ご覧の通り怒りの形相でこちらを睨みつけてきますが、憤怒神(チベットでは憤怒神をヘルーカといいます)または調伏神とも呼ばれます。 何故仏様が怒りの形相となったのか、諸説ありますが己の中の3悪に立ち向かい克服する強き心と、外敵(仏敵といいます)から仏の教えを守り、そして彼らを教化する為だと言われます。 ちなみに調伏神が増えた時代はイスラム教の台頭とも年代が合致し、異教への対抗として強い仏様が量産されたというのもひとつの事実です。 しかし一際目を惹くのは憤怒の姿よりも男性神と女性神が抱き合っている姿でしょう。
これを男女混合尊といいます(チベットではヤブユム) 我々にとっては驚きの姿ですよね。 しかし何もこれは性的な教義を体現しているわけではなく、チベット古来の考え方である2元論的な思想が影響しております。 すべての事象には2つの側面がある、という考え方であり、簡単に言えば陰陽みたいなものです。 そして2つは常に表裏一体であり、2つがあってこそ完成形(完璧な姿)なのです。 それを男性神と女性神の交わりで表しているのですね。 さらに余談ですがこの2元論に基づき、このバジュラキラヤにも優しい顔の姿があります。 どういうことかって? チベット密教における憤怒相の神々は優しい姿の菩薩や如来のもうひとつの側面でもあるのです。 バジュラキラヤはアクショービア(阿閦如来)でもあると考えられているのです。 仏像のことを書くと無限に続いてしまいますので、説明はこのくらいで終わらせておきます。
それにしてもお姿もすでに人間を超越していますよね。 多足神(足が6本)、腕も6本、顔は3面、背後には炎が燃え上がり、体は青色…もはやメチャクチャ怖いです。
で、このバジュラキラヤや何が凄いかと言いますと、彫刻が凄い。 なぜならこちらは仏師が集う街でも3本の指に入ると言われるとても有名な仏師が手がけたものだからです。 仏像に詳しい方ならば見た瞬間にすぐにわかると思います。 全然違います。 何が違うって、私はそれを「センス」と言います。 彫刻のうまさ云々よりセンスです。 仏像は何でもかんでも勝手に作って良い訳ではないのです。 例えばですね、「この神様には剣を持たせてみようぜ」「この神様にもう一本腕を増やしちゃおうぜ」はできません。 仏像にはルールがありまして、仏様の姿等は絶対に変えてはなりません。何故なら仏様の姿は経典に登場する姿でないといけないからです。 なので仏師がおのれのクリエイティビティ(創造性)を発揮して良いのはルールの範囲内なのです。
ここで一般的なバジュラキラヤを見てみましょう。 写真一番下のポストカードがバジュラキラヤです。 はい、違いますね。 普通の仏師が作ってもこのポストカードのバジュラキラヤがそのまま立体的になると思って下さい。 この名工の何処が違うか。 まず顔ですよね。 こんなに格好良く怒りの形相を表現できますかって話です。 それと細かなところを見ると、例えば女性神の下半身の巻物をご覧下さい。 ポストカードは虎柄ですが、それを名工は虎の顔で表現しているわけです。 これは虎柄のパンツを身に纏い…的な部分から逸脱しないのでルールの範囲内です。 そういう表現が随所に見られます。
皆様、良く覚えておきましょう。 個性はルールの範囲内で発揮されてこそ価値があります。 ルールを破ってむちゃくちゃすることで個性を表現するなんて誰でもできることです。 個性とはどんな場面、どんな場所、どんな環境でも輝ける個人の力です。 あ、関係ないか。 しかし憤怒神+男女混合尊という超癖あり仏像。 しかもこのお値段ですよ。 このお値段、仕入れた当時の価格のままですので今となっては安いです(今仕入れたならば50万に近くなってしまうかも) 安いといっても高いですよね。 どちら様か引取ってくれますかね? まあ引取られなければそれはそれで良いです。
【 3つのマイナス要素 】
‐目立つマイナス点は特にありませんが、とにかく存在感のある仏様です。 きちんと飾りましょう。