ヒマラヤ水晶とは何か?
ヒマラヤ水晶とは何か?
いまや天然石や水晶、パワーストーンを語るにおいて欠かせなくなったヒマラヤ水晶。 実はその歴史は浅く、様々な解説がなされるようになったのは最近の話です。 ヒマラヤ水晶の圧倒的外観の迫力と内部世界の美しさ、ヒマラヤの高地からやってきているという神秘性は他の水晶とは一線を画し、市場でも絶大な存在感があります。 数年前までは非常に手に入れるのが困難だったという希少性やマーケット自体の不透明性、交錯する情報から、「ヒマラヤ水晶を語れる人(業者)は凄い!」という風潮が出来上がりました。それから数年、市場は落ち着きを取り戻し、ヒマラヤ水晶というものは天然石・水晶の世界において定着したといえそうです。 当スパイキーパサルは流行以前の2000年からヒマラヤ水晶ペンダントの加工を開始し、微力ながらもヒマラヤ水晶という市場の牽引に貢献できたのではないかと思っております。 そんなスパイキーの解説は現地密着型! 情報は徹底的に現地から、そして長年にわたる知識と経験から執筆しているものです。 また一部専門知識を要する部分には、英字の専門学術文献を参照・和訳している箇所もございます。 独自の解説でもございますので、他者さま他店さまと異なる場合、又は誤りもあるかと思いますが、ご了承下さいませ。
みなさま、今後ともヒマラヤ水晶及びヒマラヤからの天然石とその市場を見守って下さいますよう宜しくお願い致します。 2010年7月スパイキーパサルリニューアル時に記述を更新しました。
【プロローグ:水晶と人々の歴史】
水晶は最も古くから人々と関わりあってきた石です。 太古の昔より我々人類は水晶の美しさに惹かれ、内なる神秘性と響き合ってきました。 神話学上の話では、伝説のムー大陸やレムリア大陸の住人も水晶の力を糧として生活していたといわれます。 エジプトやマヤなどの古代文明においても、ラピスラズリやトルコ石などと共に水晶は宝飾品として重宝され、時には神殿を彩る装飾品とされてきました。 また、ネイティブアメリカン(インディアン)の部族でも、遥か昔より、水晶は呪術に欠かせない道具として活躍してきたという話があります。 世界各地の遺跡で水晶にまつわる何らかの出土品があるのは決して偶然ではないのでしょう。我々日本人も水晶との関わりにおいては例外では無く、古来より水晶と共に生活してきました。 人々はその神聖なる石には大地や精霊の力が宿っていると信じました。 今でも水晶を「水精」と書くことがあるのは、その為でしょう。 弥生時代にはすでに水晶の勾玉ネックレスが合ったというのですから驚きです。 奈良時代以降には、水晶の呪術性が語られるようになり、占いや神事、儀式にと活躍していたようです。 かつて水晶の一大産地であった山梨県(甲斐の国)の武将、武田信玄が自国の領土で取れる水晶を愛用していたという逸話も残っています。 我々日本人も水晶のもつ美しさに、そして秘めたる精霊達と触れ合ってきたのです。
【鉱物としての水晶・パワーストーンとしての水晶】
古代、水晶は氷が更に凍ってできたものだと信じられていましたが、実際には熱水から生まれます。 地球の奥深く、溶液中から溶け出して分離した二酸化珪素(SiO2)は長い年月をかけてゆっくりと結晶します。 実はこの水晶、鉱物学上は石英(Quartz)と呼び、中でも透明で美しいものを宝石名としての水晶(crystal)と呼んでいます。 したがって水晶は一般的な呼称であり、正式な鉱物名ではありません。 石英は自然に六角柱状の綺麗な結晶を成すことが多いのですが、例外も多く、その姿形は見ているものを飽きさせません。 石英のモース硬度は7であり、硬度10のダイヤモンド、9のコランダム、8のトパーズに次いで硬い石です。 石英(水晶)自体は無色の鉱物ですが、含有された鉄イオンやアルミニウムイオンの反応によって、他の色を示すことがあります。 アメジストやスモーキークォーツ、シトリンやローズクォーツなどは水晶とは別のものだと思われがちですが、鉱物的にはすべて同じ「石英」です。遥か昔から内在するパワーを認められている水晶には、パワーストーンとしての意味や効果も様々です。 恐らくはパワーストーンとしても最も認知されている石のひとつであり、ヒーリングやワークに使われる石は必ずといってよいほど水晶です。 そんな水晶の石言葉は「完璧・冷静沈着・神秘的」。 水晶はパワーストーンの中でもマルチな役割を果たす石とされ、時には御守に、時にはインスピレーションの助長に、時には能力の開発にと主様の意向に従って力を貸してくれます。 しかし、当スパイキーパサルでは、水晶のパワーに関する記述は極力控えめにしております。 まずは石自体のもつ神秘性や美しさに触れ、それを水晶(石)購入の際の根拠とするべきだと考えます。 あくまでもパワーはその副次的に付帯するものであり、石あってのパワーであるべきであり、パワーあっての石ではないとスパイキーパサルは考えます。 水晶との触れ合いは個対個のものであり、パワーの感じ方や水晶との対話は個人に委ねられるべきだと考えております。
【ヒマラヤ水晶とは何か?】
昨今の天然石・パワーストーンブームにより、当店が先駆けたヒマラヤ水晶も随分と知られるようになりました。 もはやヒマラヤ水晶は天然石業界において常識的なもの、そして不可欠なものとなりつつあります。 しかし市場が新しく、供給元もしっかりしていないため、様々な混乱が生じているのではないでしょうか。 では最も核心に迫った質問、「ヒマラヤ水晶」とは何でしょうか。 世間では「ニセモノ」のヒマラヤ水晶という言われ方もあるようですが、そもそも何が本物で何が偽物なのでしょう。 定義などは特に存在しませんが、言葉を分解すると、「ヒマラヤ」の「水晶」ということになります。 ヒマラヤ山中から産すれば何でもヒマラヤ水晶ということになりますが、ここで敢えてスパイキーパサルが定義するならば「ヒマラヤ山中にあるアルパインベイン系の鉱床から産出する結晶形の明らかな石英(水晶)」ということになるのではないでしょうか。(※アルパインベインに関しては後述します) しかしこの定義も完全なものではありません。 例えばチベット国境に近いシンドゥパルチョークに産出するローズクォーツ、これはアルパインベイン系鉱脈から産出するのではなくペグマタイト中から産出します。 カンチェンジュンガのアクアマリン鉱山の水晶も明らかにペグマタイト中からの産出であり、アルパインベイン鉱脈からの産出ではありません。 さらに皆様を悩ませるのは、それがネパール産かインド産か(もしくはブータン産かチベット産かパキスタン産か)、ということだと思います。 インド産や他の近郊地域のヒマラヤ水晶がアルパインベイン系鉱脈なのかどうか、私はあまりインドのヒマラヤ水晶に詳しいわけではございませんのでわかりません。 少なくともアルパインベイン系鉱脈で産出が多い緑泥入り水晶やスケルタル水晶と言った種の水晶はあまり見たことがないようにも思えます。 しかしヒマラヤ山中から採掘されているのであれば、一般的通称としてのヒマラヤ水晶は間違いではありません。 当店はネパールに縁があり、ネパールあってのスパイキーパサルだと考えております。 よって当店で扱うヒマラヤ水晶に限り「ネパールのヒマラヤ山中にあるアルパインベイン系鉱脈から産出する結晶形の明らかな石英(水晶)」ということにさせて頂きます。
【アルパインベインタイプの鉱脈:ヒマラヤ水晶が特別な理由】
ヒマラヤ水晶が他の産地の水晶と一線を画する理由は、ヒマラヤ水晶がアルパインベインタイプの鉱脈にて生成するということだと当店では考えております。 「アルパインベイン」とは何でしょうか。 アルパインベインタイプの鉱脈とは、造山活動や地殻変動によって変成岩に亀裂が走り、その裂目に石英・雲母・電気石などを伴って結晶形の明らかな鉱物を産する鉱脈のことを指します。 もともと岩石の亀裂(ベイン)に鉱物が生成される脈が最初に発見・研究されたのがヨーロッパアルプスですので、Alpine(アルパイン・アルペン)という言葉が使われるようになりましたが、この種のベインはヨーロッパアルプスのみならず、ヒマラヤやウラル、ロシア、マダガスカル、コロンビア等世界各地の山岳地域でも確認されております。 アルパインベイン鉱脈は、様々な偶発的要因が重なって生み出されるものです。 亀裂は比較的高温下において、岩石同士が衝突・重層しているところに発生します。 岩石が絶妙な温度下において変成作用を起こし、破壊されることなく変形してゆきます。 その間に地殻運動などにより、変成岩に大きな衝撃や圧力が加わると、ベイン(亀裂)が口をあけるのです(一瞬にして亀裂が走るのではなく、ゆっくりと広がります) そのベインに水晶が生成することになるのです。 通常の熱水鉱脈(hydrothermal veins)においては、岩石の裂け目に金属・鉱物成分を含んだ熱水(水溶液)が通過すると、温度と圧力が低下して水晶成分の析出が起こって水晶鉱脈を成します。 熱水鉱脈においては、金属・鉱物成分を含んだ熱水が水晶や鉱物の供給源になります。 ところがアルパインタイプ鉱脈においては熱水(それも鉱物成分を含まない)の供給は一度のみであり、より厳密には周囲の岩や或いはベインの延長線上からベインに熱水が染み込みます。 その後に母岩内で炭酸熱水による岩石の溶解が起こり、その後の温度の低下により一度溶解した鉱物が他の鉱物へと再結晶化するのです。 すべての結晶化が母岩の成分のみで構成され、すべての結晶化で起こる事象が母岩の亀裂内のみで起こっているということです(青字の部分はアメリカ鉱物協会のアルパイン鉱脈に関する論文をもとに翻訳中の文章であり、誤訳している可能性があります)。 アルパインベイン鉱脈は、変成作用を伴う衝突帯、つまり海洋プレートと大陸プレートが衝突して隆起した造山帯で多く見られます。 インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突して隆起したヒマラヤ山脈はまさに好例と言えますが、プレートの衝突は、同時に岩石同士の衝突と重層化を生みだし、結果として広範囲に及ぶ変成岩の生成と亀裂(ベイン)の形成を生みだしたのではないかと考えられます。 ※この衝突帯をthe Main Central Thrust of Himalayas(ヒマラヤ中央衝突帯?) と呼びます。 造山活動・地殻変動が非常に盛んであったヒマラヤ造山帯。 有り余る大地のエネルギーこそがヒマラヤ水晶という奇跡の原動力だったのです。 また、ヒマラヤ水晶のみならず、他ページに解説のある多くのヒマラヤ産鉱物や天然石は、ヒマラヤ高地の衝突帯で見られる変成岩中(主に片岩や片麻岩)に産出します。 ※この高地変成岩をネパール地質学庁の資料では、The Higher Himalayan Crystalline Rocksと呼んでおります。 和訳するならば「ヒマラヤ高地結晶質岩」といったところでしょうか。
大いなる地殻活動、隆起した聖なるヒマラヤ、鉱物を生みだす亀裂、それらの複雑な要因が絡み合って生み出されたヒマラヤ水晶やヒマラヤ産の鉱物が特別に思えるのは私だけでしょうか。
【ヒマラヤ水晶の面白さ】
では、当店の考えるアルパインベイン系鉱脈に産するヒマラヤ水晶の面白さとは何でしょうか。 このアルパインベインタイプの鉱脈は、ヨーロッパの水晶愛好家の間では、最も美しくユニークな水晶を産出する鉱脈として知られてきました。 このような地殻活動によって生じたアルパインバインに産出する水晶ですが、最も特徴的な産出形状として、鉱物(水晶)が直接母岩から生成します(他方、ペグマタイトでは複数の違った鉱物が母岩から層状・タマネギ状に生成します) 緑泥石を筆頭とした角閃石族が直接水晶に内包され、表情豊かな内部世界を形成する要因もそこにあります。 地殻活動が盛んな地中では、温度変化や圧力の変化が顕著です。 それら外的要因が水晶の成長や生成に大きな影響を及ぼし、セプター水晶やスケルトン水晶などユニークな形状を持つ水晶が多いのもアルパインベインで生まれるヒマラヤ水晶の魅力の一つと言えるでしょう。
ヒマラヤ水晶のみならず、アルパインベイン鉱脈全般に言えることですが、基本的にベイン鉱脈は小規模なものが多いです。 つまり、ベインひとつから決して多くの水晶が採れるわけでは無いということであり、同じタイプの水晶が決して多くは採れないということです。 同じ変成岩にある亀裂では、どの亀裂においても似たタイプの水晶が取れますが、それでも同じタイプの水晶が大量に産出するわけではありません。 違うベインから違うタイプの水晶が産出し、また違うベインから違うタイプの水晶が採掘される、という具合にヒマラヤ水晶は無数のバラエティと可能性を見せてくれるのです。 通常はベイン鉱脈が見つかると、その周辺に複数のポケット(ベイン鉱脈の実際に水晶が採れる穴)が見つかるようですが、多いところで15−20のポケットがあり、少ないところでは2,3の場合もあります。 ポケットの大きさはそれぞれで、中には人が入って立ち上がることの出来るほど広いものもあり、中には小さなものもあります。 このアルペンベイン鉱脈は、ダディン地区のガネーシュヒマールのラパやティプリンといった地域を中心に広く存在しておりますが、周辺もしくはヒマラヤの他の地域でもベイン鉱脈が発見される可能性が大いにあります。 広大なヒマラヤには無限の可能性が、まだ見ぬ水晶たちと共に眠っているのです。 ここで最も興味深いことは、ヒマラヤのアルパインバイン鉱脈及びにそこから産出する水晶に関してはまだまだ研究が進んでおらず、未知の部分が多いということです。 つまりヨーロッパアルプスにおけるアルパインベインの慣例が必ずしもヒマラヤにおいても通用するかどうかわからないということになります。 言い換えれば、ヒマラヤ水晶を手にした一人ひとりが、未開の地への探求者であり研究者になりうるということではないでしょうか。
つまり1)ヒマラヤ水晶それ自体の生命力溢れる美しさ、2)バラエティの豊富さ、3)ヒマラヤから産出するという希少性、そしてこの4)「未開性」こそがスパイキーパサルの考えるヒマラヤ水晶の面白さだと考えております。 今一度お持ちのヒマラヤ水晶に語りかけてみて下さい。 なんだかワクワクしてきませんか?
【ヒマラヤ水晶の採掘と水晶仕入れの裏側】
サンスクリット語でヒマ・アラヤ、「雪の在る所」という名の示す通り、半万年雪のような状態であるヒマラヤ山中。 そんなヒマラヤ山中のアルパインベイン系鉱脈に産出するヒマラヤ水晶ですが、ここでの採掘作業は困難を極めます。 自然環境の厳しい山岳地帯ですので、採掘は主に春から秋にかけて行われます(ガネーシュヒマールでも標高の低いラパ等は豪雪地帯ではありません) 削岩機などは一切無いため、人々の手彫りでの仕事となります。 岩盤・変成岩に沿うようにしてベイン(亀裂)鉱脈があり、岩盤によって産出する水晶の形状や内包物が異なります。 つまり同じ岩盤からは似たような水晶が産出し、同じ鉱脈のポケットからは同様の特徴を持つ水晶が産出するということです。 一大産地であるダディン地区のガネーシュヒマール・ラパ地区では、チベット系民族であるタマン族が採掘に従事している場合がほとんどです。(※ラパについては後述) 彼らは日本人と近い顔をし、小柄ですが屈強な体を持ちます。 彼らはサンスクリット語系であるネパール語のほかにタマン語という独自のチベット語系に属する言語を話します。
水晶の流通経路は様々ですが、一般的にはタマン族の村人たちが水晶を掘って、カトマンズにコネクションのある代表の村人(通常は彼が採掘権を持っています)がそれらをカトマンズに運びます。 彼らは主に業者を回り、自分の水晶を売り込みます(癒着のある業者に優先的に売る場合もあれば、業者のほうから村人に出向くこともあります。 また業者がダディンのほうまで村人との約束を取り付けに行くこともあります。) 最近ではドッコと呼ばれるカゴを背負って自らカトマンズに来る村人も増え、水晶の巡る経路は急速に広がっており、それに伴う弊害もございます。 村人は非常に流動的であり、義理よりも金額で水晶を流すことも多いようです。 また水晶やその他鉱物に関する価格もよくわかっておらず、市場原理にそぐわぬ大金を要求してくることもあります。 残念ながら市場の価格をわからずに大枚をはたいて仕入れを行う外国業者もございます。 すると村人は高値で売れたことに味をしめ、「この前はXXルピーで売れたからねえ」と言って誰にでも高値を吹っ掛けるようになるという悪循環です。 集積している業者にとっては村人との良好な関係作りと価格の不安定が悩みの種となっておりますが、それはスパイキーパサルも同様です。 当スパイキーパサルでは村人からの直接仕入れもあれば、集積業者からの仕入れもあります。 村人仕入の利点は、時期が上手く合えば、手付かずのバスケットから選べるということです。 それに業者のマージンが加わらない為、うまく関係を築いたり、交渉を行うと良い水晶にも関わらずグラム辺りの単価が安く手に入るということです。 村人と直接話が出来ると、かなり具体的な産地の特定や採掘高度、鉱山の様子を聞くことが出来ます。 こういった鉱山の情報は同業者であるネパール人業者には決して話したがりません。 業者が他の村人を雇い、その周辺を調査される可能性がございますので、当然同業者には秘密にしておきたいわけです。 しかし外国人である私には、驚くほどペラペラと産出地域の事や鉱山の事を話してくれます。 これは外国人かつネパール語が堪能という私筆者の最大の利点であります。 しかし村人は非常に流動的ですので、信頼関係の構築が最優先事項と言えます。
業者の利点は、業者がすでにクオリティなどによって緑泥入り、ルチル水晶、水入り、と水晶を分別している点で、選びやすいといえます。 その分クオリティの高い水晶などはグラム単価も高くなりますが、商売というものを理解しておりますので基本的には法外な吹っ掛け行為も行いません。 また、私筆者の個人的な意見ですが、業者は義理や人情をより大切にしてくれます。 良い水晶や珍しい天然石などを特別に取っておいてくれたり、良好な関係を築きやすいのは業者ではないでしょうか。 村人の持っていないマーケット的な情報、そして外国人との付き合いが多くなるため日本を含めた諸外国のヒマラヤ水晶状況なども手に入るということがあります。 欠点として、すでに分別されている水晶の細かな産地の特定等は少し困難になるということです。
このように水晶たちはヒマラヤ山中より採掘に従事する人々の手を介し、様々な経路を経て、海を越え日本の市場にやってきます。 そして遥々やって来た水晶たちを、みなさまがご縁あって見つけてくれるわけですね。
【ヒマラヤ水晶の産地】
一大産地であるガネーシュヒマールは現地ではダディンの水晶と呼ばれていました。 また、カンチェンジュンガはタプレジュンと呼ばれていました。 ところが、最近では日本人が「ガネーシュ産か?カンチェン産か?」と聞くようになったのを受け、現地でもガネーシュ産やらカンチェン産と呼ぶようになったように思えます。 一昔前まで産地のことなどほとんど気にしなかったネパール業者も産地を気にするようになり、状況はかなり改善されたのではないかと思います。
さて、このヒマラヤ水晶の産地というのも市場において混乱が生じている事柄のひとつではないでしょうか。 ヒマラヤ水晶では産地の重要性を指摘されますが、実際の現地において、詳細な産地を特定できる水晶は決して多いわけではありません。 前記「経路」での解説の通り、業者ですでに集積されてしまっているものは大まかな把握しか出来ないといえます。 アルパインベイン系水晶において「同じ変成岩中から採れる水晶には類似が多く、同じベイン(亀裂)に並ぶポケットから採れる水晶は同じタイプのもの」という原理を考慮しますと、それぞれの産地(鉱山)に特徴があるのは事実です。 例えば綺麗な緑泥系の水晶の多くはラパ地域の中でもラプチェやクプチェといわれる場所で多く産出します。 このことからラプチェとクプチェは近い地域と考察できますし、ラプチェとクプチェは同じ変成岩を持つということが窺われ、もし産地の特定ができない集積業者で綺麗な緑泥を見つけた場合は、ラプチェもしくはクプチェの周辺から来たと考えることも出来るでしょう。 同様にモザイク構造を表面に持つミラー系の水晶のほとんどはラパ地域のチョンテンカルカもしくはティプリンからやってきます。 もし産地不明の業者で見つけたとしたら、同地域からのものと推測できます。 しかし水晶は何処においても似た形状になる可能性もありますし、例外も数多く存在します。 村人仕入の水晶でない限り、水晶の産地は80%確実であっても100%確実ではないと思います。 また、参入の浅い現地業者は産地を聞かれると適当に答える場合も多いので注意が必要です。 ネパール人は「わからない」というのが嫌いなお国柄ですので、聞かれると間違っていても答えるというのも注意しなければならない点です。 日本の業者やサイトさんを見ていても、私の知る限りでは明らかにその産地でその水晶は採れないな、と思うものもございます。 結局のところ、産地に関する正確さは現地または日本の業者の信頼度に委ねられますし、それでも100%の正確性は無いと考えるのが良いでしょう。 それは当店の水晶にも言えることです。 明確な産地の提示も業者の信頼度のひとつですし、正確な産地がわからない、というのも信頼度のひとつの尺度だと思います。
【スパイキーパサルの産地表記】
まず現地の鉱物協会が毎年更新している産地地図がございます。 これは大まかなもので、9の地区(西からダルチュラ、ジャジャコット、マナン、ダディン、ランタン、サンクワサバ、タプレジュン、イラム、パンチャタール)に分類しております。 当店の解説にもよく出てきますので、聞いたことがある地区名もあるかと思います。 中でもヒマラヤ水晶にとって最も重要な地区は、ダディン地区です。 ダディンはネパールの行政区画であり、日本で言えば「県」に近いものになります。 ガネーシュヒマールが鎮座しているのがこの「ダディン県」になるわけです。 日本ではガネーシュヒマール産という名前がよく通っておりますが、ガネーシュヒマールとは山の名前であり、地区(行政区画)の名前ではありません。 また、ガネーシュヒマールというとかなり広範囲を示すこととなり、そもそも連峰であるガネーシュヒマールの山全体がガネーシュヒマールとなります。 ダディン地区(県)の中でも地域によりそれぞれの地域名があります。 地域名は行政区画(市や区と考えればよいでしょうか)の事もあれば、地域住民の呼び名である事もあるようです。 ラパという地域は、ダディン地区ガネーシュヒマールの中でも一番大きな採掘場として知られているようですが、厳密にはラパは地域名や鉱山名ではなく、水晶が産出する地域内にある最も大きな村の名前です。 正式名をラパガウンといいます。 そのラパ村周辺をラパと呼んでおりますが、曖昧にラパというと、かなり広大なエリアを指すことになります。 このラパの中に無数の水晶を産出するベイン鉱脈があります。 例えるならば、ラパというのは東京都です。 しかし東京都といっても広大であり、中央区、練馬区、港区、世田谷区、と更なる行政区画が存在します。 また、東京と言うと、一都五県を含めることもありますが、同様に「ラパ」や「ガネーシュヒマール」という呼び名はかなり曖昧です。 ラパ内にもタティ村、ルプタン村、ティル村、ドゥンガ村、と小さな村が点在します。 各村々には鉱山を掘る村人もおり、彼らしか厳密な鉱山の場所をわからない場合も多いです。 そしてその村々同様に、ラプチェ鉱、ヤルサ鉱、タンタブレ鉱、マンゲル鉱、マグリン鉱、タティガン鉱等の鉱脈(ベイン)が存在します。 特にラパ地域の西側(ガネーシュヒマールの西稜)エリアでは良質の水晶を多く産出します(※これらの鉱山の名前はタマン語である為、ネパール語に慣れている筆者でも発音表記が良くわかりません) ティプリンやレーはラパの隣接地域になり、同様にその地区内に多数の鉱脈が存在します。 ティプリンはヨーロッパの文献に載るほど名の知られている鉱山ですが、同時に地域名でもあります。 Tiplingと書きますがティプリングではなく現地ではティプリンと呼び、グは発音しません。
これだけ横文字が並ぶとまるで呪文のようですが、そのくらい厳密な鉱山や産地というのが複雑であり、曖昧であるということがおわかりいただけたでしょうか。 当スパイキーパサルではラパの地域や村、鉱山も随分と把握できるようになってきており、、ダディン地区の大まかな地図も完成しつつあります。 しかしまだまだ確定要素は少なく調査段階ですので、今回の産地解説はここまでです(2010年7月現在)よりまして、当店の産地表記は、地区名(行政区画)、山名、鉱脈のある地域名(行政区画名の事も呼び名の事もあり)となります。 これは当店が独自に作り出した産地表記の際の細分化の方法です。
- 1.地区名(行政区画)のみわかる場合
例)ダディン地区産 - 2.地区名、そして山がある場合
例)ダディン地区ガネーシュヒマール山産 - 3.地区名、山名、地域・鉱山名がわかる場合
例)ダディン地区ガネーシュヒマール山ラパ地域産 - 4.地区名、山名、地域名、鉱山名がわかる場合
例)ダディン地区ガネーシュヒマール山ラパ地域チョンテンカルカ鉱産
例)タプレジュン地区カンチェンジュンガ山パティバラ地域イカブ鉱産
スパイキーでは業者仕入の水晶もあり、現地の業者によっては産地の特定の難しいものもあると判断しております。 また古い鉱山から産出し、ストック水晶として業者に残されていた水晶などは「旧鉱山」と表記し、細かな事は今となってはわかりようもございません。 その為あいまいな水晶の産地の記述は控えめにしておりますがご了承下さい。 また、それらの産地・地域の特徴や解説はウェブサイトには記載していない部分もございます。
※すべてのヒマラヤ水晶関連の記述について言えることですが、この産地や鉱山の解説も当店が独自にネパールで調査しているものです。 誤っている可能性もございますので、あくまでご参照程度にご覧ください。
【ヒマラヤ水晶のグレードについて】
スパイキーパサルではヒマラヤ水晶に対してグレード評価を行わないことにしました。 これには様々な理由がございます。 まず、グレード自体が非常に曖昧であるという事があげられます。 これはヒマラヤ水晶のみならずすべての天然石に言えることです。 天然石のお店の多くはグレード表記を設けておりますが、グレードとはダイヤモンドのように世界共通の評価基準があるものではございません。 各店の独自基準でAAAAグレードやSAグレードと表記しているだけのものです。 この場合、通常は仕入れ業者の評価をもとに評価をつけます。 当店でも★による10段階評価をしておりますが、独自の判断基準と仕入れ業者の基準に従っているものです。 ※天然石のグレード表記に関しては後日コラムに掲載予定です。
評価に世界基準が無いという曖昧さに加え、ヒマラヤ水晶に関してはさらにグレード評価を難しくする以下の点が挙げられると当店では考えております。
【1.市場が新しい。】
市場が新しく、まだまだわからない部分が多いということです。 誰が何をみて何を評価の基準としているのか、という点に透明性がありません。 例えばラリマーやロードクロサイトなどは認知度も高く、一般的にどのようなものがいわゆる「グレードの高いものか」という共通認識がございます。 しかし世界的にもヒマラヤ水晶の認知や研究は始まったばかりです。 グレードは相対性によるものですので(二つを見比べてどちらが綺麗かということ)、相当量のヒマラヤ水晶を見てこそ生きてくるものです。 10年を経過したスパイキーパサルでもまだまだグレードをつける自信がございません。
【2.ヒマラヤ水晶自体が広大である。】
「ヒマラヤ水晶」と一括りして評価するのはほぼ不可能です。 ヒマラヤ水晶の中には産地が様々ある上に、緑泥石入り、角閃石入り、ミラー水晶、スモーキークォーツ…とそのバラエティも豊富です。 強いてグレードをつけるのならば、それぞれのカテゴリにおいての評価基準を設けるべきでしょう。
【3.同じものが少ないアルパインベインタイプの水晶である。】
前記解説の通り、アルパインベイン産出の水晶は、ひとつの鉱脈やポケットあたりからの産出が少ないという特徴があります。 一時期たくさん来ていたタイプのアクチノ入り水晶があったとします(仮にタイプAとします)。 しかしそのポケットが尽きてしまい、一時期たくさん来ていたタイプAが手に入れにくくなったとします。 希少性=グレードの高いものとするのであれば、相対的に希少性が上がったアクチノ入りタイプAはグレードの高いものとなるべきでしょうか。 また、それとは反対のケースとして新しいポケットが見つかるという事があります。 好例としてはミラー水晶です。 数年前までティプリンのミラー水晶が最強だと思っておりましたが、それ以上のクオリティをもつミラー水晶が新しい採掘場所であるチョンテンカルカ鉱から見つかりました。 もしティプリンのものを★5グレードとしていたならば、最近産出するチョンテンカルカのミラーのグレードはどうしたら良いのでしょう。 これがグレード基準を設ける難しさでもあります。
【4.現地市場が混乱を極めている。】
最大のポイントはここでもあります。 上記解説の通り、今の現地市場は混乱を極めております。 業者からの仕入れ値はひとつの基準となるべきなのですが、彼ら自体が何を持って値をつけているのかわからない状態です。 また、水晶に関して専門的な知識や市場の見識を持っている現地業者が多いとはお世辞にも言い難く、彼らの基準をもとに評価するのは良策とは思えません。 ネパールの経済もどん底状態にある今、市場と業界の成熟にはもう少し時間が掛かるかもしれません。
以上の事からスパイキーパサルではグレード表記をしておりません。 しかしそれは他店さんがグレード表記をしていたとしてもそれを非難しているわけではございません。 どの種の水晶であっても綺麗なものは綺麗ですし、相対的に見て綺麗なもの、珍しいものは質が高い(グレードが高い)とするのは当然のことです。 当店でも綺麗なものや珍しいものを「激レア」やら「お勧め水晶」としているのと同じです。 むしろそのように相対的に水晶を見て、一種の価値基準を築いていくことは積極的に行うべきですし、当店もそのように心がけております。 最終的に切磋琢磨が市場をよくしていくものだと思っております。 偉そうなことを書いて申し訳ありませんでした。
【ヒマラヤ水晶をカット加工する】
今でこそ様々にカット加工を施したヒマラヤ水晶や丸玉ビーズのブレスレットも当然のこととなりましたが、ヒマラヤ水晶を大規模にカット加工できるようになったのはここ数年なのです。 もちろんそれまでも小規模な施設や個人的な機材程度はありましたが、カット工房にインドから技師を呼び、機材を入れたのは2004年頃からだったと記憶しております。 当スパイキーパサル(及び前身のスパイキーネパール)ではいち早くカット加工に取り組み、現地へ多くのデザインを持ち込みました。 涙型や平涙型、勾玉、水晶リングなどは初期にスパイキーが型を持っていったものです。 ゴム紐を通す為のビーズ穴の大きさなどは、よく指導したものですし、当初は工場長自らがカット加工に勤しんでいたのを覚えております。 かつては安定した生産・製造がおこなえるカット工房がカトマンズにひとつだったので、みながそこでカット加工を行いました。 その為、デザインは他現地業者を通じて出回りました。 もちろんオリジナルというほどの形ではないものですが、当店が先駆してきたことを少し知っていただければ幸いです。 現在ではカット工房も2つ3つに増えたようですが、輸出品質として数量の生産・製造を行えるのは未だこの1つの工房のみだと思われます。 しかし新しい機械の導入や技術の向上により、かつてに比べると仕上がりの良さは格段に上がったのではないかと思います。 例えば、表面研磨技術の向上により照りや輝きは一段と強くなったように思えます。 2010年現在では、タンブリングマシンという自動研磨機も入っておりまして、ドリル穴の中まで透明にすることが出来るようになっております。 また、今後は鉱物関連業者の組合指導のもと、カット加工研修なども行われる予定となっており技術者や工房は数年のうちに増えるかもしれません。 コラム「加工工房の規模と釣り合わぬヒマラヤ水晶の数(只今執筆中)」と「カットしたヒマラヤ水晶の判別は可能か?」もご覧ください。
【ネパールにおけるヒマラヤ水晶】
神秘的イメージの先行するネパール、そして神聖なるイメージのあるヒマラヤ水晶ですが、現地ではどのように扱われているのか?という質問を受けることがあります。 あくまでスパイキーパサルの見解となりますが、現地人とヒマラヤ水晶についてのお話をさせて頂きます。 ネパールでもダイヤモンドやルビー、金といった宝石・貴金属などは女性用アクセサリーとして好まれます。 しかしこれはあくまで現金価値のあるもの、ステータス的な意味合いが強いといえるでしょう。 趣味としてのコレクションでもなければ、パワーストーンとして身につけているわけではありません。 現地の人々にとって石とは、ダイヤモンドやルビー、サファイアでなくてはなりません。
従って水晶に対してもある種の特別な扱い、というものは一般レベルではあまり無いといえそうです。 「パワーがあるんでしょ」という概念はあるようですが、それだからといって身につけたり、ワークを行ったりという事は一般の人々の間においては稀です。 もともとパワーストーンという言葉は和製英語でして、パワーが先行して天然石のマーケットが育っているのは日本にのみ起こっている特殊な状況といえます。 もちろん現地でも水晶ヒーリングや瞑想用として活用している例もございます。 しかしその場合も水晶の形状やパワーによって使い分けることはあまり無く、ひとつ置いておけば(所持しておけば)事足ると考えているようです。 実際、筆者自身も現地で病気になったときに、レイキの先生に水晶を使った治療を受けたことがございますが、その水晶はヒマラヤ水晶ではございませんでした。
むしろ現地の人々にとってのヒマラヤ水晶とは、一昔前のパシュミナ(カシミア)ショールブームのように商売としてとらえられているケースが多いのが現状、というのも知っていただきたい事実です。 現地での参入業者や輸出業者、採掘の村人の人数は劇的に増えました。 もちろんこれに関してはネパール人であれ我々であれ同じですし、儲かる匂いのする事業に参入するのは当然の帰結とえいます。 一大産地であるガネーシュ周辺の村々では昨今のヒマラヤ水晶やヒマラヤ系天然石のブームにより、村人の生活が一変したようです。 「村人はヤギを追うのをやめてスコップを持った」という皮肉が囁かれるほどです。 また度重なる採掘作業により土砂崩れを起こしている地域もあるようで、新たな懸念要素も出てきています。 例えば、かつてのルビーの一大産地、ガネーシュヒマールのルニール鉱山周辺は、遠くから見てもその場所のみが剥げ上がっている状態です。 その水晶により当店も恩恵を受けておりますので、それに関して異議を唱える立場にはございませんが、知ってほしい事実のひとつです。
ヒマラヤ水晶には村人の生活があり、我々業者の思惑もあります。 ヒマラヤ水晶は神秘の中に存在するのではなく、現実の中に存在しているのです。
【今後の動向:現地編】
3年ほど前の見解で、「今後はガネーシュからの緑泥入り水晶だけでなく、様々な産地から水晶や天然石が出てくるのではないか」と書きましたが、近年で予想通りになったと思います。 ここ数年で鉱山は一気に拡大し、たくさんの水晶や天然石がカトマンズに届くようになりました。 閉鎖されていたり、細々としか採掘が行われていなかった鉱山も再開したり、採掘規模が大きくなったりしているようです。 その為ヒマラヤ水晶やヒマラヤ産の天然石の販路は爆発的に広がり、現地のネパール人も日本人もそれに従事する人数が増えました。 また、以前の「今後の動向」において、毛沢東主義者ゲリラの活動が活発化しており、遠方からの運送が困難になりつつあるという記事を書きました。 2010年現在において、毛沢東主義者の武力闘争は終了しており、彼らの政治的活動拠点はすでにカトマンズにあります。 ゲリラ活動はなくなりましたが、掌握している山岳地域では相変わらず天然石運搬に関わる賄賂の横行があるようです。 現地におけるヒマラヤ水晶やその他鉱物の価格は高騰を続けてきましたが、ここ数年が頭打ちではないかとスパイキーは考えております。 すでに充分に高いグラム辺りの単価ですが、市場原理に釣り合わない高騰というのはもう起こらないのではないかと思います。 現地においても村人の急激な増加や供給業者の参入により、水晶の飽和状態は如実になってきており、人気に陰りがみえるようです(日本の市場の場合、陰りではなく、人気の定着と安定といえると思いますが) しかし質の良いものや希少な天然石については、以前以上に手に入りにくくなっております。 メルマガにおいて「ルビーやトルマリンなどの良質はほとんどがストックだ」という話をしましたが、ストックは尽きつつあるということです。 新たに産出したものはより高額になる可能性がございます。 また、水晶においてもその他の鉱物においても、やはり業者は良いものがほしいので、良いものからなくなります。 以前のように一部のものはスパイキーが真っ先に良いものを狙えるという状況ではないかもしれません。
最近一番危惧されることは、物価の高騰による値上がりです。 近年のガソリン価格の上昇は恐ろしいほどであり、発展途上国であるネパールではその影響は多大なものです。 ガソリン価格が上がるとすべての生活物資の価格が上がります。 例えば影響を受けるのは銀細工の地銀価格や金価格、そして加工料などの人件費です。 それらの価格は4-5年前と比べると倍近くにまで跳ね上がっているものもあります。 水晶の価格も、人気による価値以上の値上がりではなく、物価上昇によるものだったら充分にありえるのではないかと思います。プラスの事柄としましては前章で記述の通り、ネパールの鉱物業者組合の活動が活発化し、小さなミネラルショーや展示会を開催したり、若手や技術者育成の為の講義を行うようになりました。 今後はよりプロフェッショナルな人材が増えるのではないでしょうか。
<2010年記述追加>
上記の動向に関しては、この2年間で概ねその通りに近いといえますが、懸念もそのまま現実に近い形になってしまいました。 ネパールでの政治的混乱も収まるどころか、悪化する一方で、それに伴う経済の疲弊が見られます。 慢性的な電不足や水不足に政府も打つ手立てがありません(むしろ勢力闘争に必死で打つ手も考えてないように思えますが) それらの相乗的に重なる問題によってここ数年、ここ数カ月で驚くほどに物価が上昇してしまいました。 例えば3年前にネパールの典型的セット定食が地元民の食堂で約100Rs(130円)程度で食べられたのですが、現在は180Rs(230円)ほどします。 物価の上昇がほぼ2倍だなんて、日本にいては考えられないことなのですが、それが当地では事実起こっていることです。 そしてこれらの物価上昇がすべて水晶の単価や加工料に跳ね返ってきております。 これは人気や需要による値上がりではなく、外的要因による値上がりです。 只今の円高傾向により、上がった仕入れ値でも対応ができますが、円安志向に傾き、さらに水晶の価格や加工料の増加が続けば、当店でもお手上げ状態になるでしょう。 現在のネパールは本当に混迷を極めている状況です。 お陰さまで今後の動向が非常に読みにくいのですが、兎に角もうこれ以上の値上がりがないことを願うことしかできません。
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【今後の動向と価格:日本編】
日本においては、ヒマラヤ水晶の人気の定着化と安定化が進んでいると思います。 今では拡大した販路によって天然石屋さんやパワーストーン屋さんで普通にヒマラヤ水晶を見かけるようになりましたが、最近ヒマラヤ水晶を知った方は、数年前までいち早いマニアさん達が探し回って手に入れていたという事実を知らないと思います。 今後は水晶といえばヒマラヤ水晶、と認知度は上がっていくと思われます。 現地においては、上記のとおり物価の高騰による値上がりは懸念されますが、日本の市場においては値段はこの程度で納まると思います。 需要>供給だった時代は過ぎ去り、現在の市場は供給>需要だからです。 ヒマラヤ水晶のみならず、天然石・パワーストーンの価格というのは各店に委ねられる部分が大きいので、クオリティはさておき、高いところから安いところもあると思います。 しかし全体的に値上がりすることはないでしょう。 すでにヒマラヤ水晶は、水晶にしては十分すぎるほど高いのではないかと思います。 市場の状況を考えても、我々業者にとっては仕入値が上がっても小売値は上げられないという厳しい状況になるかもしれません。
当店も昔は安いお店の部類でしたが、気が付けば安いお店様も多くなり、平均より少し高いくらいになったかもしれません。 しかし、クオリティと水晶のユニークさ、セレクションにおいては、我ながら当店のものは素晴らしいと思いますし、お値段の中にはこれら情報や経験、ペンダント作りのこだわりや想いも篭っていると考えて頂ければ幸いです。 お値段は自信と仕事への誇りの対価だと思っております。
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【スパイキーパサルの利点とデメリット】
解説の最後に、当店におけるデメリットを記述させて頂きます。 ヒマラヤ水晶の先駆者であり、ヒマラヤ水晶No1を勝手に謳うスパイキーパサルですが、やはり当店ならではのデメリットもございます。 まず一番初めに再度お断りさせて頂きますが、上記のヒマラヤ水晶に関する記述や、用語解説はすべて私の経験と知識、そして権威ある英字文献を参照しながら執筆したものです。 経験と知識による部分には、調査段階の部分や誤りもあるかもしれません。 最も危険なこととして、私の独断や偏見も入っている可能性があるということをご理解くださいませ。 また、私自身は鉱物学者や地質学者ではございませんので、水晶生成の際の複雑な化学式や地殻運動が水晶に具体的にどのような影響を及ぼしているのかなど、大まかなことはわかっておりますが、厳密かつ学問的な専門分野においてはわからない部分もございます。 その部分に関してはまだまだ勉強中であり、多少解説の粗野な部分はご容赦いただければ幸いです。 しかしこれらのデメリットも、当店ならではの利点が上回り、結果としてデメリット以上のメリットがあると自負しております。 これだけ細かな産地の調査は、長年のネパール業者や村人との付き合いによって得たものです。 そのようにして10年に及び現地に密着して、収集した情報が用語解説などに反映されております。 そして業者との関係性もスパイキーパサルの利点です。 私筆者のヒマラヤ水晶やネパールに対する真摯な態度や情熱は共に歩んできた現地のみんなに必ず響いていると確信しております。 すでに10年、今では生涯を通じての仕事仲間、そして生涯を通じての友人がたくさんいます。 彼らは、私を時に贔屓してくれ、渡ネパールの度に歓迎してくれ、良い水晶や珍しいもの、有益情報は真っ先に回してくれます。 だからこそ、当店には高品質かつバラエティに富んだ水晶とヒマラヤ系鉱物が揃っているのです。このネパールでの現地力こそが、スパイキーパサルを動かす原動力であり、すべてを超えて行けるメリットだと考えております。
【エピローグ:スパイキーパサルとヒマラヤ水晶】
気が付けばもう10年になるでしょう、一日たりともヒマラヤ水晶のペンダントが私の胸元に光っていない日はありません。 人生のいかなる場面においても、嬉しいときも悲しいときも、ヒマラヤ水晶と共にありました。 1999年、最初に偶然ネパールで出会った衝撃から時は流れ、今では私の仕事となり、人生となりました。 好きな事を仕事にしてはいけないといいますが、好きな事を仕事にして、好きなことが益々好きになりました。
私がマヤを感じてならないネパールという国、ネパールの人々。 だからこそ、「ヒマラヤ水晶がそのネパールのヒマラヤ山中で採れるという奇跡」を体現できるのは当店だけだと思っております。 今更ながらに、ヒマラヤ水晶そのものはもちろんですが、ヒマラヤ水晶を取り巻く環境(市場や関連する人々など)すべてをが好きなことに気が付きました。 そして共感して下さるお客様に出会えたことが何よりの財産であり、みなさまにネパールからのヒマラヤ水晶や商品をご紹介できることを非常に嬉しく思います。
スパイキーパサルのヒマラヤ水晶を見て下さい。 こんなに楽しくて質が良いヒマラヤ水晶を見たことがありますか? こんなにこだわった銀加工を見たことがありますか? こんなに生きた情報が詰まった解説を見たことがありますか? 少なくとも私はスパイキーパサルが唯一無二の存在だと思っております。
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます。
感謝の気持ちを込めて、2010年7月サイトリニューアル時に記述更新。