ヒマラヤ水晶とは何か?

ヒマラヤ水晶とは何か?
いまや天然石水晶パワーストーンを語るにおいて欠かせなくなったヒマラヤ水晶。 実はその歴史は浅く、様々な解説がなされるようになったのは最近の話です。 ヒマラヤ水晶の圧倒的外観の迫力と内部世界の美しさ、ヒマラヤの高地からやってきているという神秘性は他の水晶とは一線を画し、市場でも絶大な存在感があります。 数年前までは非常に手に入れるのが困難だったという希少性やマーケット自体の不透明性、交錯する情報から、「ヒマラヤ水晶を語れる人(業者)は凄い!」という風潮が出来上がりました。それから数年、市場は落ち着きを取り戻し、ヒマラヤ水晶というものは天然石水晶の世界において定着したといえそうです。 当スパイキーパサルは流行以前の2000年からヒマラヤ水晶ペンダントの加工を開始し、微力ながらもヒマラヤ水晶という市場の牽引に貢献できたのではないかと思っております。 そんなスパイキーの解説は現地密着型! 情報は徹底的に現地から、そして長年にわたる知識と経験から執筆しているものです。 また一部専門知識を要する部分には、英字の専門学術文献を参照・和訳している箇所もございます。 独自の解説でもございますので、他者さま他店さまと異なる場合、又は誤りもあるかと思いますが、ご了承下さいませ。
みなさま、今後ともヒマラヤ水晶及びヒマラヤからの天然石とその市場を見守って下さいますよう宜しくお願い致します。 2010年7月スパイキーパサルリニューアル時に記述を更新しました。

【プロローグ:水晶と人々の歴史】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場01水晶は最も古くから人々と関わりあってきた石です。 太古の昔より我々人類は水晶の美しさに惹かれ、内なる神秘性と響き合ってきました。 神話学上の話では、伝説のムー大陸やレムリア大陸の住人も水晶の力を糧として生活していたといわれます。  エジプトやマヤなどの古代文明においても、ラピスラズリやトルコ石などと共に水晶は宝飾品として重宝され、時には神殿を彩る装飾品とされてきました。 また、ネイティブアメリカン(インディアン)の部族でも、遥か昔より、水晶は呪術に欠かせない道具として活躍してきたという話があります。 世界各地の遺跡で水晶にまつわる何らかの出土品があるのは決して偶然ではないのでしょう。我々日本人も水晶との関わりにおいては例外では無く、古来より水晶と共に生活してきました。 人々はその神聖なる石には大地や精霊の力が宿っていると信じました。 今でも水晶を「水精」と書くことがあるのは、その為でしょう。 弥生時代にはすでに水晶の勾玉ネックレスが合ったというのですから驚きです。 奈良時代以降には、水晶の呪術性が語られるようになり、占いや神事、儀式にと活躍していたようです。 かつて水晶の一大産地であった山梨県(甲斐の国)の武将、武田信玄が自国の領土で取れる水晶を愛用していたという逸話も残っています。 我々日本人も水晶のもつ美しさに、そして秘めたる精霊達と触れ合ってきたのです。

【鉱物としての水晶・パワーストーンとしての水晶】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場02古代、水晶は氷が更に凍ってできたものだと信じられていましたが、実際には熱水から生まれます。 地球の奥深く、溶液中から溶け出して分離した二酸化珪素(SiO2)は長い年月をかけてゆっくりと結晶します。 実はこの水晶、鉱物学上は石英(Quartz)と呼び、中でも透明で美しいものを宝石名としての水晶(crystal)と呼んでいます。 したがって水晶は一般的な呼称であり、正式な鉱物名ではありません。 石英は自然に六角柱状の綺麗な結晶を成すことが多いのですが、例外も多く、その姿形は見ているものを飽きさせません。 石英のモース硬度は7であり、硬度10のダイヤモンド、9のコランダム、8のトパーズに次いで硬い石です。 石英(水晶)自体は無色の鉱物ですが、含有された鉄イオンやアルミニウムイオンの反応によって、他の色を示すことがあります。 アメジストスモーキークォーツシトリンローズクォーツなどは水晶とは別のものだと思われがちですが、鉱物的にはすべて同じ「石英」です。遥か昔から内在するパワーを認められている水晶には、パワーストーンとしての意味効果も様々です。 恐らくはパワーストーンとしても最も認知されている石のひとつであり、ヒーリングやワークに使われる石は必ずといってよいほど水晶です。 そんな水晶の石言葉は「完璧・冷静沈着・神秘的」。 水晶はパワーストーンの中でもマルチな役割を果たす石とされ、時には御守に、時にはインスピレーションの助長に、時には能力の開発にと主様の意向に従って力を貸してくれます。 しかし、当スパイキーパサルでは、水晶のパワーに関する記述は極力控えめにしております。 まずは石自体のもつ神秘性や美しさに触れ、それを水晶(石)購入の際の根拠とするべきだと考えます。 あくまでもパワーはその副次的に付帯するものであり、石あってのパワーであるべきであり、パワーあっての石ではないとスパイキーパサルは考えます。 水晶との触れ合いは個対個のものであり、パワーの感じ方や水晶との対話は個人に委ねられるべきだと考えております。

【ヒマラヤ水晶とは何か?】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場03昨今の天然石パワーストーンブームにより、当店が先駆けたヒマラヤ水晶も随分と知られるようになりました。 もはやヒマラヤ水晶は天然石業界において常識的なもの、そして不可欠なものとなりつつあります。 しかし市場が新しく、供給元もしっかりしていないため、様々な混乱が生じているのではないでしょうか。 では最も核心に迫った質問、「ヒマラヤ水晶」とは何でしょうか。 世間では「ニセモノ」のヒマラヤ水晶という言われ方もあるようですが、そもそも何が本物で何が偽物なのでしょう。 定義などは特に存在しませんが、言葉を分解すると、「ヒマラヤ」の「水晶」ということになります。 ヒマラヤ山中から産すれば何でもヒマラヤ水晶ということになりますが、ここで敢えてスパイキーパサルが定義するならば「ヒマラヤ山中にあるアルパインベイン系の鉱床から産出する結晶形の明らかな石英(水晶)」ということになるのではないでしょうか。(※アルパインベインに関しては後述します) しかしこの定義も完全なものではありません。 例えばチベット国境に近いシンドゥパルチョークに産出するローズクォーツ、これはアルパインベイン系鉱脈から産出するのではなくペグマタイト中から産出します。 カンチェンジュンガのアクアマリン鉱山の水晶も明らかにペグマタイト中からの産出であり、アルパインベイン鉱脈からの産出ではありません。 さらに皆様を悩ませるのは、それがネパール産かインド産か(もしくはブータン産かチベット産かパキスタン産か)、ということだと思います。 インド産や他の近郊地域のヒマラヤ水晶がアルパインベイン系鉱脈なのかどうか、私はあまりインドのヒマラヤ水晶に詳しいわけではございませんのでわかりません。 少なくともアルパインベイン系鉱脈で産出が多い緑泥入り水晶やスケルタル水晶と言った種の水晶はあまり見たことがないようにも思えます。 しかしヒマラヤ山中から採掘されているのであれば、一般的通称としてのヒマラヤ水晶は間違いではありません。 当店はネパールに縁があり、ネパールあってのスパイキーパサルだと考えております。 よって当店で扱うヒマラヤ水晶に限り「ネパールのヒマラヤ山中にあるアルパインベイン系鉱脈から産出する結晶形の明らかな石英(水晶)」ということにさせて頂きます。

【アルパインベインタイプの鉱脈:ヒマラヤ水晶が特別な理由】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場04ヒマラヤ水晶が他の産地の水晶と一線を画する理由は、ヒマラヤ水晶アルパインベインタイプ鉱脈にて生成するということだと当店では考えております。 「アルパインベイン」とは何でしょうか。 アルパインベインタイプの鉱脈とは、造山活動や地殻変動によって変成岩に亀裂が走り、その裂目に石英・雲母・電気石などを伴って結晶形の明らかな鉱物を産する鉱脈のことを指します。 もともと岩石の亀裂(ベイン)に鉱物が生成される脈が最初に発見・研究されたのがヨーロッパアルプスですので、Alpine(アルパイン・アルペン)という言葉が使われるようになりましたが、この種のベインはヨーロッパアルプスのみならず、ヒマラヤやウラル、ロシア、マダガスカル、コロンビア等世界各地の山岳地域でも確認されております。  アルパインベイン鉱脈は、様々な偶発的要因が重なって生み出されるものです。 亀裂は比較的高温下において、岩石同士が衝突・重層しているところに発生します。 岩石が絶妙な温度下において変成作用を起こし、破壊されることなく変形してゆきます。 その間に地殻運動などにより、変成岩に大きな衝撃や圧力が加わると、ベイン(亀裂)が口をあけるのです(一瞬にして亀裂が走るのではなく、ゆっくりと広がります) そのベインに水晶が生成することになるのです。 通常の熱水鉱脈(hydrothermal veins)においては、岩石の裂け目に金属・鉱物成分を含んだ熱水(水溶液)が通過すると、温度と圧力が低下して水晶成分の析出が起こって水晶鉱脈を成します。 熱水鉱脈においては、金属・鉱物成分を含んだ熱水が水晶や鉱物の供給源になります。 ところがアルパインタイプ鉱脈においては熱水(それも鉱物成分を含まない)の供給は一度のみであり、より厳密には周囲の岩や或いはベインの延長線上からベインに熱水が染み込みます。 その後に母岩内で炭酸熱水による岩石の溶解が起こり、その後の温度の低下により一度溶解した鉱物が他の鉱物へと再結晶化するのです。 すべての結晶化が母岩の成分のみで構成され、すべての結晶化で起こる事象が母岩の亀裂内のみで起こっているということです(青字の部分はアメリカ鉱物協会のアルパイン鉱脈に関する論文をもとに翻訳中の文章であり、誤訳している可能性があります)。 アルパインベイン鉱脈は、変成作用を伴う衝突帯、つまり海洋プレートと大陸プレートが衝突して隆起した造山帯で多く見られます。 インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突して隆起したヒマラヤ山脈はまさに好例と言えますが、プレートの衝突は、同時に岩石同士の衝突と重層化を生みだし、結果として広範囲に及ぶ変成岩の生成と亀裂(ベイン)の形成を生みだしたのではないかと考えられます。 ※この衝突帯をthe Main Central Thrust of Himalayas(ヒマラヤ中央衝突帯?) と呼びます。 造山活動・地殻変動が非常に盛んであったヒマラヤ造山帯。 有り余る大地のエネルギーこそがヒマラヤ水晶という奇跡の原動力だったのです。 また、ヒマラヤ水晶のみならず、他ページに解説のある多くのヒマラヤ産鉱物や天然石は、ヒマラヤ高地の衝突帯で見られる変成岩中(主に片岩や片麻岩)に産出します。 ※この高地変成岩をネパール地質学庁の資料では、The Higher Himalayan Crystalline Rocksと呼んでおります。 和訳するならば「ヒマラヤ高地結晶質岩」といったところでしょうか。
大いなる地殻活動、隆起した聖なるヒマラヤ、鉱物を生みだす亀裂、それらの複雑な要因が絡み合って生み出されたヒマラヤ水晶やヒマラヤ産の鉱物が特別に思えるのは私だけでしょうか。

【ヒマラヤ水晶の面白さ】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場05では、当店の考えるアルパインベイン系鉱脈に産するヒマラヤ水晶の面白さとは何でしょうか。 このアルパインベインタイプの鉱脈は、ヨーロッパの水晶愛好家の間では、最も美しくユニークな水晶を産出する鉱脈として知られてきました。 このような地殻活動によって生じたアルパインバインに産出する水晶ですが、最も特徴的な産出形状として、鉱物(水晶)が直接母岩から生成します(他方、ペグマタイトでは複数の違った鉱物が母岩から層状・タマネギ状に生成します) 緑泥石を筆頭とした角閃石族が直接水晶に内包され、表情豊かな内部世界を形成する要因もそこにあります。 地殻活動が盛んな地中では、温度変化や圧力の変化が顕著です。 それら外的要因が水晶の成長や生成に大きな影響を及ぼし、セプター水晶スケルトン水晶などユニークな形状を持つ水晶が多いのもアルパインベインで生まれるヒマラヤ水晶の魅力の一つと言えるでしょう。
ヒマラヤ水晶のみならず、アルパインベイン鉱脈全般に言えることですが、基本的にベイン鉱脈は小規模なものが多いです。 つまり、ベインひとつから決して多くの水晶が採れるわけでは無いということであり、同じタイプの水晶が決して多くは採れないということです。 同じ変成岩にある亀裂では、どの亀裂においても似たタイプの水晶が取れますが、それでも同じタイプの水晶が大量に産出するわけではありません。 違うベインから違うタイプの水晶が産出し、また違うベインから違うタイプの水晶が採掘される、という具合にヒマラヤ水晶は無数のバラエティと可能性を見せてくれるのです。 通常はベイン鉱脈が見つかると、その周辺に複数のポケット(ベイン鉱脈の実際に水晶が採れる穴)が見つかるようですが、多いところで15−20のポケットがあり、少ないところでは2,3の場合もあります。 ポケットの大きさはそれぞれで、中には人が入って立ち上がることの出来るほど広いものもあり、中には小さなものもあります。 このアルペンベイン鉱脈は、ダディン地区ガネーシュヒマールラパティプリンといった地域を中心に広く存在しておりますが、周辺もしくはヒマラヤの他の地域でもベイン鉱脈が発見される可能性が大いにあります。 広大なヒマラヤには無限の可能性が、まだ見ぬ水晶たちと共に眠っているのです。 ここで最も興味深いことは、ヒマラヤのアルパインバイン鉱脈及びにそこから産出する水晶に関してはまだまだ研究が進んでおらず、未知の部分が多いということです。 つまりヨーロッパアルプスにおけるアルパインベインの慣例が必ずしもヒマラヤにおいても通用するかどうかわからないということになります。 言い換えれば、ヒマラヤ水晶を手にした一人ひとりが、未開の地への探求者であり研究者になりうるということではないでしょうか。
つまり1)ヒマラヤ水晶それ自体の生命力溢れる美しさ、2)バラエティの豊富さ、3)ヒマラヤから産出するという希少性、そしてこの4)「未開性」こそがスパイキーパサルの考えるヒマラヤ水晶の面白さだと考えております。 今一度お持ちのヒマラヤ水晶に語りかけてみて下さい。 なんだかワクワクしてきませんか?

【ヒマラヤ水晶の採掘と水晶仕入れの裏側】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場06サンスクリット語でヒマ・アラヤ、「雪の在る所」という名の示す通り、半万年雪のような状態であるヒマラヤ山中。 そんなヒマラヤ山中のアルパインベイン系鉱脈に産出するヒマラヤ水晶ですが、ここでの採掘作業は困難を極めます。 自然環境の厳しい山岳地帯ですので、採掘は主に春から秋にかけて行われます(ガネーシュヒマールでも標高の低いラパ等は豪雪地帯ではありません) 削岩機などは一切無いため、人々の手彫りでの仕事となります。 岩盤・変成岩に沿うようにしてベイン(亀裂)鉱脈があり、岩盤によって産出する水晶の形状や内包物が異なります。 つまり同じ岩盤からは似たような水晶が産出し、同じ鉱脈のポケットからは同様の特徴を持つ水晶が産出するということです。 一大産地であるダディン地区のガネーシュヒマールラパ地区では、チベット系民族であるタマン族が採掘に従事している場合がほとんどです。(※ラパについては後述) 彼らは日本人と近い顔をし、小柄ですが屈強な体を持ちます。 彼らはサンスクリット語系であるネパール語のほかにタマン語という独自のチベット語系に属する言語を話します。
水晶の流通経路は様々ですが、一般的にはタマン族の村人たちが水晶を掘って、カトマンズにコネクションのある代表の村人(通常は彼が採掘権を持っています)がそれらをカトマンズに運びます。 彼らは主に業者を回り、自分の水晶を売り込みます(癒着のある業者に優先的に売る場合もあれば、業者のほうから村人に出向くこともあります。 また業者がダディンのほうまで村人との約束を取り付けに行くこともあります。) 最近ではドッコと呼ばれるカゴを背負って自らカトマンズに来る村人も増え、水晶の巡る経路は急速に広がっており、それに伴う弊害もございます。 村人は非常に流動的であり、義理よりも金額で水晶を流すことも多いようです。 また水晶やその他鉱物に関する価格もよくわかっておらず、市場原理にそぐわぬ大金を要求してくることもあります。 残念ながら市場の価格をわからずに大枚をはたいて仕入れを行う外国業者もございます。 すると村人は高値で売れたことに味をしめ、「この前はXXルピーで売れたからねえ」と言って誰にでも高値を吹っ掛けるようになるという悪循環です。 集積している業者にとっては村人との良好な関係作りと価格の不安定が悩みの種となっておりますが、それはスパイキーパサルも同様です。 当スパイキーパサルでは村人からの直接仕入れもあれば、集積業者からの仕入れもあります。 村人仕入の利点は、時期が上手く合えば、手付かずのバスケットから選べるということです。 それに業者のマージンが加わらない為、うまく関係を築いたり、交渉を行うと良い水晶にも関わらずグラム辺りの単価が安く手に入るということです。 村人と直接話が出来ると、かなり具体的な産地の特定や採掘高度、鉱山の様子を聞くことが出来ます。 こういった鉱山の情報は同業者であるネパール人業者には決して話したがりません。 業者が他の村人を雇い、その周辺を調査される可能性がございますので、当然同業者には秘密にしておきたいわけです。 しかし外国人である私には、驚くほどペラペラと産出地域の事や鉱山の事を話してくれます。 これは外国人かつネパール語が堪能という私筆者の最大の利点であります。 しかし村人は非常に流動的ですので、信頼関係の構築が最優先事項と言えます。
業者の利点は、業者がすでにクオリティなどによって緑泥入り、ルチル水晶、水入り、と水晶を分別している点で、選びやすいといえます。 その分クオリティの高い水晶などはグラム単価も高くなりますが、商売というものを理解しておりますので基本的には法外な吹っ掛け行為も行いません。 また、私筆者の個人的な意見ですが、業者は義理や人情をより大切にしてくれます。 良い水晶や珍しい天然石などを特別に取っておいてくれたり、良好な関係を築きやすいのは業者ではないでしょうか。 村人の持っていないマーケット的な情報、そして外国人との付き合いが多くなるため日本を含めた諸外国のヒマラヤ水晶状況なども手に入るということがあります。 欠点として、すでに分別されている水晶の細かな産地の特定等は少し困難になるということです。
このように水晶たちはヒマラヤ山中より採掘に従事する人々の手を介し、様々な経路を経て、海を越え日本の市場にやってきます。 そして遥々やって来た水晶たちを、みなさまがご縁あって見つけてくれるわけですね。

【ヒマラヤ水晶の産地】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場07一大産地であるガネーシュヒマールは現地ではダディンの水晶と呼ばれていました。 また、カンチェンジュンガはタプレジュンと呼ばれていました。 ところが、最近では日本人が「ガネーシュ産か?カンチェン産か?」と聞くようになったのを受け、現地でもガネーシュ産やらカンチェン産と呼ぶようになったように思えます。 一昔前まで産地のことなどほとんど気にしなかったネパール業者も産地を気にするようになり、状況はかなり改善されたのではないかと思います。
さて、このヒマラヤ水晶の産地というのも市場において混乱が生じている事柄のひとつではないでしょうか。 ヒマラヤ水晶では産地の重要性を指摘されますが、実際の現地において、詳細な産地を特定できる水晶は決して多いわけではありません。 前記「経路」での解説の通り、業者ですでに集積されてしまっているものは大まかな把握しか出来ないといえます。 アルパインベイン系水晶において「同じ変成岩中から採れる水晶には類似が多く、同じベイン(亀裂)に並ぶポケットから採れる水晶は同じタイプのもの」という原理を考慮しますと、それぞれの産地(鉱山)に特徴があるのは事実です。 例えば綺麗な緑泥系の水晶の多くはラパ地域の中でもラプチェやクプチェといわれる場所で多く産出します。 このことからラプチェとクプチェは近い地域と考察できますし、ラプチェとクプチェは同じ変成岩を持つということが窺われ、もし産地の特定ができない集積業者で綺麗な緑泥を見つけた場合は、ラプチェもしくはクプチェの周辺から来たと考えることも出来るでしょう。 同様にモザイク構造を表面に持つミラー系の水晶のほとんどはラパ地域のチョンテンカルカもしくはティプリンからやってきます。 もし産地不明の業者で見つけたとしたら、同地域からのものと推測できます。 しかし水晶は何処においても似た形状になる可能性もありますし、例外も数多く存在します。 村人仕入の水晶でない限り、水晶の産地は80%確実であっても100%確実ではないと思います。 また、参入の浅い現地業者は産地を聞かれると適当に答える場合も多いので注意が必要です。 ネパール人は「わからない」というのが嫌いなお国柄ですので、聞かれると間違っていても答えるというのも注意しなければならない点です。 日本の業者やサイトさんを見ていても、私の知る限りでは明らかにその産地でその水晶は採れないな、と思うものもございます。 結局のところ、産地に関する正確さは現地または日本の業者の信頼度に委ねられますし、それでも100%の正確性は無いと考えるのが良いでしょう。 それは当店の水晶にも言えることです。 明確な産地の提示も業者の信頼度のひとつですし、正確な産地がわからない、というのも信頼度のひとつの尺度だと思います。

【スパイキーパサルの産地表記】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場08まず現地の鉱物協会が毎年更新している産地地図がございます。 これは大まかなもので、9の地区(西からダルチュラ、ジャジャコット、マナン、ダディン、ランタン、サンクワサバ、タプレジュン、イラム、パンチャタール)に分類しております。 当店の解説にもよく出てきますので、聞いたことがある地区名もあるかと思います。 中でもヒマラヤ水晶にとって最も重要な地区は、ダディン地区です。 ダディンはネパールの行政区画であり、日本で言えば「県」に近いものになります。 ガネーシュヒマールが鎮座しているのがこの「ダディン県」になるわけです。 日本ではガネーシュヒマール産という名前がよく通っておりますが、ガネーシュヒマールとは山の名前であり、地区(行政区画)の名前ではありません。 また、ガネーシュヒマールというとかなり広範囲を示すこととなり、そもそも連峰であるガネーシュヒマールの山全体がガネーシュヒマールとなります。 ダディン地区(県)の中でも地域によりそれぞれの地域名があります。 地域名は行政区画(市や区と考えればよいでしょうか)の事もあれば、地域住民の呼び名である事もあるようです。 ラパという地域は、ダディン地区ガネーシュヒマールの中でも一番大きな採掘場として知られているようですが、厳密にはラパは地域名や鉱山名ではなく、水晶が産出する地域内にある最も大きな村の名前です。 正式名をラパガウンといいます。 そのラパ村周辺をラパと呼んでおりますが、曖昧にラパというと、かなり広大なエリアを指すことになります。 このラパの中に無数の水晶を産出するベイン鉱脈があります。 例えるならば、ラパというのは東京都です。 しかし東京都といっても広大であり、中央区、練馬区、港区、世田谷区、と更なる行政区画が存在します。 また、東京と言うと、一都五県を含めることもありますが、同様に「ラパ」や「ガネーシュヒマール」という呼び名はかなり曖昧です。 ラパ内にもタティ村、ルプタン村、ティル村、ドゥンガ村、と小さな村が点在します。 各村々には鉱山を掘る村人もおり、彼らしか厳密な鉱山の場所をわからない場合も多いです。 そしてその村々同様に、ラプチェ鉱、ヤルサ鉱、タンタブレ鉱、マンゲル鉱、マグリン鉱、タティガン鉱等の鉱脈(ベイン)が存在します。 特にラパ地域の西側(ガネーシュヒマールの西稜)エリアでは良質の水晶を多く産出します(※これらの鉱山の名前はタマン語である為、ネパール語に慣れている筆者でも発音表記が良くわかりません) ティプリンやレーはラパの隣接地域になり、同様にその地区内に多数の鉱脈が存在します。 ティプリンはヨーロッパの文献に載るほど名の知られている鉱山ですが、同時に地域名でもあります。 Tiplingと書きますがティプリングではなく現地ではティプリンと呼び、グは発音しません。
これだけ横文字が並ぶとまるで呪文のようですが、そのくらい厳密な鉱山や産地というのが複雑であり、曖昧であるということがおわかりいただけたでしょうか。 当スパイキーパサルではラパの地域や村、鉱山も随分と把握できるようになってきており、、ダディン地区の大まかな地図も完成しつつあります。 しかしまだまだ確定要素は少なく調査段階ですので、今回の産地解説はここまでです(2010年7月現在)よりまして、当店の産地表記は、地区名(行政区画)、山名、鉱脈のある地域名(行政区画名の事も呼び名の事もあり)となります。 これは当店が独自に作り出した産地表記の際の細分化の方法です。

  • 1.地区名(行政区画)のみわかる場合
    例)ダディン地区産
  • 2.地区名、そして山がある場合
    例)ダディン地区ガネーシュヒマール山産
  • 3.地区名、山名、地域・鉱山名がわかる場合
    例)ダディン地区ガネーシュヒマール山ラパ地域産
  • 4.地区名、山名、地域名、鉱山名がわかる場合
    例)ダディン地区ガネーシュヒマール山ラパ地域チョンテンカルカ鉱産
    例)タプレジュン地区カンチェンジュンガ山パティバラ地域イカブ鉱産

スパイキーでは業者仕入の水晶もあり、現地の業者によっては産地の特定の難しいものもあると判断しております。 また古い鉱山から産出し、ストック水晶として業者に残されていた水晶などは「旧鉱山」と表記し、細かな事は今となってはわかりようもございません。 その為あいまいな水晶の産地の記述は控えめにしておりますがご了承下さい。 また、それらの産地・地域の特徴や解説はウェブサイトには記載していない部分もございます。
※すべてのヒマラヤ水晶関連の記述について言えることですが、この産地や鉱山の解説も当店が独自にネパールで調査しているものです。 誤っている可能性もございますので、あくまでご参照程度にご覧ください。

【ヒマラヤ水晶のグレードについて】

スパイキーパサルではヒマラヤ水晶に対してグレード評価を行わないことにしました。 これには様々な理由がございます。 まず、グレード自体が非常に曖昧であるという事があげられます。 これはヒマラヤ水晶のみならずすべての天然石に言えることです。 天然石のお店の多くはグレード表記を設けておりますが、グレードとはダイヤモンドのように世界共通の評価基準があるものではございません。 各店の独自基準でAAAAグレードやSAグレードと表記しているだけのものです。 この場合、通常は仕入れ業者の評価をもとに評価をつけます。 当店でも★による10段階評価をしておりますが、独自の判断基準と仕入れ業者の基準に従っているものです。 ※天然石のグレード表記に関しては後日コラムに掲載予定です。
評価に世界基準が無いという曖昧さに加え、ヒマラヤ水晶に関してはさらにグレード評価を難しくする以下の点が挙げられると当店では考えております。

【1.市場が新しい。】

市場が新しく、まだまだわからない部分が多いということです。 誰が何をみて何を評価の基準としているのか、という点に透明性がありません。 例えばラリマーやロードクロサイトなどは認知度も高く、一般的にどのようなものがいわゆる「グレードの高いものか」という共通認識がございます。 しかし世界的にもヒマラヤ水晶の認知や研究は始まったばかりです。 グレードは相対性によるものですので(二つを見比べてどちらが綺麗かということ)、相当量のヒマラヤ水晶を見てこそ生きてくるものです。 10年を経過したスパイキーパサルでもまだまだグレードをつける自信がございません。

【2.ヒマラヤ水晶自体が広大である。】

「ヒマラヤ水晶」と一括りして評価するのはほぼ不可能です。 ヒマラヤ水晶の中には産地が様々ある上に、緑泥石入り、角閃石入り、ミラー水晶、スモーキークォーツ…とそのバラエティも豊富です。 強いてグレードをつけるのならば、それぞれのカテゴリにおいての評価基準を設けるべきでしょう。

【3.同じものが少ないアルパインベインタイプの水晶である。】

前記解説の通り、アルパインベイン産出の水晶は、ひとつの鉱脈やポケットあたりからの産出が少ないという特徴があります。 一時期たくさん来ていたタイプのアクチノ入り水晶があったとします(仮にタイプAとします)。 しかしそのポケットが尽きてしまい、一時期たくさん来ていたタイプAが手に入れにくくなったとします。 希少性=グレードの高いものとするのであれば、相対的に希少性が上がったアクチノ入りタイプAはグレードの高いものとなるべきでしょうか。 また、それとは反対のケースとして新しいポケットが見つかるという事があります。 好例としてはミラー水晶です。 数年前までティプリンのミラー水晶が最強だと思っておりましたが、それ以上のクオリティをもつミラー水晶が新しい採掘場所であるチョンテンカルカ鉱から見つかりました。 もしティプリンのものを★5グレードとしていたならば、最近産出するチョンテンカルカのミラーのグレードはどうしたら良いのでしょう。 これがグレード基準を設ける難しさでもあります。

【4.現地市場が混乱を極めている。】

最大のポイントはここでもあります。 上記解説の通り、今の現地市場は混乱を極めております。 業者からの仕入れ値はひとつの基準となるべきなのですが、彼ら自体が何を持って値をつけているのかわからない状態です。 また、水晶に関して専門的な知識や市場の見識を持っている現地業者が多いとはお世辞にも言い難く、彼らの基準をもとに評価するのは良策とは思えません。 ネパールの経済もどん底状態にある今、市場と業界の成熟にはもう少し時間が掛かるかもしれません。

以上の事からスパイキーパサルではグレード表記をしておりません。 しかしそれは他店さんがグレード表記をしていたとしてもそれを非難しているわけではございません。 どの種の水晶であっても綺麗なものは綺麗ですし、相対的に見て綺麗なもの、珍しいものは質が高い(グレードが高い)とするのは当然のことです。 当店でも綺麗なものや珍しいものを「激レア」やら「お勧め水晶」としているのと同じです。 むしろそのように相対的に水晶を見て、一種の価値基準を築いていくことは積極的に行うべきですし、当店もそのように心がけております。 最終的に切磋琢磨が市場をよくしていくものだと思っております。 偉そうなことを書いて申し訳ありませんでした。

【ヒマラヤ水晶をカット加工する】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場09今でこそ様々にカット加工を施したヒマラヤ水晶丸玉ビーズブレスレットも当然のこととなりましたが、ヒマラヤ水晶を大規模にカット加工できるようになったのはここ数年なのです。 もちろんそれまでも小規模な施設や個人的な機材程度はありましたが、カット工房にインドから技師を呼び、機材を入れたのは2004年頃からだったと記憶しております。 当スパイキーパサル(及び前身のスパイキーネパール)ではいち早くカット加工に取り組み、現地へ多くのデザインを持ち込みました。 涙型や平涙型、勾玉、水晶リングなどは初期にスパイキーが型を持っていったものです。 ゴム紐を通す為のビーズ穴の大きさなどは、よく指導したものですし、当初は工場長自らがカット加工に勤しんでいたのを覚えております。 かつては安定した生産・製造がおこなえるカット工房がカトマンズにひとつだったので、みながそこでカット加工を行いました。 その為、デザインは他現地業者を通じて出回りました。 もちろんオリジナルというほどの形ではないものですが、当店が先駆してきたことを少し知っていただければ幸いです。 現在ではカット工房も2つ3つに増えたようですが、輸出品質として数量の生産・製造を行えるのは未だこの1つの工房のみだと思われます。 しかし新しい機械の導入や技術の向上により、かつてに比べると仕上がりの良さは格段に上がったのではないかと思います。 例えば、表面研磨技術の向上により照りや輝きは一段と強くなったように思えます。 2010年現在では、タンブリングマシンという自動研磨機も入っておりまして、ドリル穴の中まで透明にすることが出来るようになっております。 また、今後は鉱物関連業者の組合指導のもと、カット加工研修なども行われる予定となっており技術者や工房は数年のうちに増えるかもしれません。  コラム「加工工房の規模と釣り合わぬヒマラヤ水晶の数(只今執筆中)」と「カットしたヒマラヤ水晶の判別は可能か?」もご覧ください。

 

【ネパールにおけるヒマラヤ水晶】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場10神秘的イメージの先行するネパール、そして神聖なるイメージのあるヒマラヤ水晶ですが、現地ではどのように扱われているのか?という質問を受けることがあります。 あくまでスパイキーパサルの見解となりますが、現地人とヒマラヤ水晶についてのお話をさせて頂きます。 ネパールでもダイヤモンドやルビー、金といった宝石・貴金属などは女性用アクセサリーとして好まれます。 しかしこれはあくまで現金価値のあるもの、ステータス的な意味合いが強いといえるでしょう。 趣味としてのコレクションでもなければ、パワーストーンとして身につけているわけではありません。 現地の人々にとって石とは、ダイヤモンドやルビー、サファイアでなくてはなりません。
従って水晶に対してもある種の特別な扱い、というものは一般レベルではあまり無いといえそうです。 「パワーがあるんでしょ」という概念はあるようですが、それだからといって身につけたり、ワークを行ったりという事は一般の人々の間においては稀です。 もともとパワーストーンという言葉は和製英語でして、パワーが先行して天然石のマーケットが育っているのは日本にのみ起こっている特殊な状況といえます。 もちろん現地でも水晶ヒーリングや瞑想用として活用している例もございます。 しかしその場合も水晶の形状やパワーによって使い分けることはあまり無く、ひとつ置いておけば(所持しておけば)事足ると考えているようです。 実際、筆者自身も現地で病気になったときに、レイキの先生に水晶を使った治療を受けたことがございますが、その水晶はヒマラヤ水晶ではございませんでした。
むしろ現地の人々にとってのヒマラヤ水晶とは、一昔前のパシュミナ(カシミア)ショールブームのように商売としてとらえられているケースが多いのが現状、というのも知っていただきたい事実です。 現地での参入業者や輸出業者、採掘の村人の人数は劇的に増えました。 もちろんこれに関してはネパール人であれ我々であれ同じですし、儲かる匂いのする事業に参入するのは当然の帰結とえいます。 一大産地であるガネーシュ周辺の村々では昨今のヒマラヤ水晶やヒマラヤ系天然石のブームにより、村人の生活が一変したようです。 「村人はヤギを追うのをやめてスコップを持った」という皮肉が囁かれるほどです。 また度重なる採掘作業により土砂崩れを起こしている地域もあるようで、新たな懸念要素も出てきています。 例えば、かつてのルビーの一大産地、ガネーシュヒマールのルニール鉱山周辺は、遠くから見てもその場所のみが剥げ上がっている状態です。 その水晶により当店も恩恵を受けておりますので、それに関して異議を唱える立場にはございませんが、知ってほしい事実のひとつです。
ヒマラヤ水晶には村人の生活があり、我々業者の思惑もあります。 ヒマラヤ水晶は神秘の中に存在するのではなく、現実の中に存在しているのです。

【今後の動向:現地編】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場113年ほど前の見解で、「今後はガネーシュからの緑泥入り水晶だけでなく、様々な産地から水晶や天然石が出てくるのではないか」と書きましたが、近年で予想通りになったと思います。 ここ数年で鉱山は一気に拡大し、たくさんの水晶や天然石がカトマンズに届くようになりました。 閉鎖されていたり、細々としか採掘が行われていなかった鉱山も再開したり、採掘規模が大きくなったりしているようです。 その為ヒマラヤ水晶ヒマラヤ産天然石の販路は爆発的に広がり、現地のネパール人も日本人もそれに従事する人数が増えました。  また、以前の「今後の動向」において、毛沢東主義者ゲリラの活動が活発化しており、遠方からの運送が困難になりつつあるという記事を書きました。 2010年現在において、毛沢東主義者の武力闘争は終了しており、彼らの政治的活動拠点はすでにカトマンズにあります。 ゲリラ活動はなくなりましたが、掌握している山岳地域では相変わらず天然石運搬に関わる賄賂の横行があるようです。 現地におけるヒマラヤ水晶やその他鉱物の価格は高騰を続けてきましたが、ここ数年が頭打ちではないかとスパイキーは考えております。 すでに充分に高いグラム辺りの単価ですが、市場原理に釣り合わない高騰というのはもう起こらないのではないかと思います。 現地においても村人の急激な増加や供給業者の参入により、水晶の飽和状態は如実になってきており、人気に陰りがみえるようです(日本の市場の場合、陰りではなく、人気の定着と安定といえると思いますが) しかし質の良いものや希少な天然石については、以前以上に手に入りにくくなっております。 メルマガにおいて「ルビーやトルマリンなどの良質はほとんどがストックだ」という話をしましたが、ストックは尽きつつあるということです。 新たに産出したものはより高額になる可能性がございます。 また、水晶においてもその他の鉱物においても、やはり業者は良いものがほしいので、良いものからなくなります。 以前のように一部のものはスパイキーが真っ先に良いものを狙えるという状況ではないかもしれません。
最近一番危惧されることは、物価の高騰による値上がりです。 近年のガソリン価格の上昇は恐ろしいほどであり、発展途上国であるネパールではその影響は多大なものです。 ガソリン価格が上がるとすべての生活物資の価格が上がります。 例えば影響を受けるのは銀細工の地銀価格や金価格、そして加工料などの人件費です。 それらの価格は4-5年前と比べると倍近くにまで跳ね上がっているものもあります。 水晶の価格も、人気による価値以上の値上がりではなく、物価上昇によるものだったら充分にありえるのではないかと思います。プラスの事柄としましては前章で記述の通り、ネパールの鉱物業者組合の活動が活発化し、小さなミネラルショーや展示会を開催したり、若手や技術者育成の為の講義を行うようになりました。 今後はよりプロフェッショナルな人材が増えるのではないでしょうか。
<2010年記述追加>
上記の動向に関しては、この2年間で概ねその通りに近いといえますが、懸念もそのまま現実に近い形になってしまいました。 ネパールでの政治的混乱も収まるどころか、悪化する一方で、それに伴う経済の疲弊が見られます。 慢性的な電不足や水不足に政府も打つ手立てがありません(むしろ勢力闘争に必死で打つ手も考えてないように思えますが) それらの相乗的に重なる問題によってここ数年、ここ数カ月で驚くほどに物価が上昇してしまいました。 例えば3年前にネパールの典型的セット定食が地元民の食堂で約100Rs(130円)程度で食べられたのですが、現在は180Rs(230円)ほどします。 物価の上昇がほぼ2倍だなんて、日本にいては考えられないことなのですが、それが当地では事実起こっていることです。 そしてこれらの物価上昇がすべて水晶の単価や加工料に跳ね返ってきております。 これは人気や需要による値上がりではなく、外的要因による値上がりです。 只今の円高傾向により、上がった仕入れ値でも対応ができますが、円安志向に傾き、さらに水晶の価格や加工料の増加が続けば、当店でもお手上げ状態になるでしょう。 現在のネパールは本当に混迷を極めている状況です。 お陰さまで今後の動向が非常に読みにくいのですが、兎に角もうこれ以上の値上がりがないことを願うことしかできません。
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【今後の動向と価格:日本編】

ヒマラヤ水晶産地採掘現場12日本においては、ヒマラヤ水晶の人気の定着化と安定化が進んでいると思います。 今では拡大した販路によって天然石屋さんやパワーストーン屋さんで普通にヒマラヤ水晶を見かけるようになりましたが、最近ヒマラヤ水晶を知った方は、数年前までいち早いマニアさん達が探し回って手に入れていたという事実を知らないと思います。 今後は水晶といえばヒマラヤ水晶、と認知度は上がっていくと思われます。 現地においては、上記のとおり物価の高騰による値上がりは懸念されますが、日本の市場においては値段はこの程度で納まると思います。 需要>供給だった時代は過ぎ去り、現在の市場は供給>需要だからです。  ヒマラヤ水晶のみならず、天然石・パワーストーンの価格というのは各店に委ねられる部分が大きいので、クオリティはさておき、高いところから安いところもあると思います。 しかし全体的に値上がりすることはないでしょう。 すでにヒマラヤ水晶は、水晶にしては十分すぎるほど高いのではないかと思います。 市場の状況を考えても、我々業者にとっては仕入値が上がっても小売値は上げられないという厳しい状況になるかもしれません。
 当店も昔は安いお店の部類でしたが、気が付けば安いお店様も多くなり、平均より少し高いくらいになったかもしれません。 しかし、クオリティと水晶のユニークさ、セレクションにおいては、我ながら当店のものは素晴らしいと思いますし、お値段の中にはこれら情報や経験、ペンダント作りのこだわりや想いも篭っていると考えて頂ければ幸いです。 お値段は自信と仕事への誇りの対価だと思っております。
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【スパイキーパサルの利点とデメリット】

解説の最後に、当店におけるデメリットを記述させて頂きます。 ヒマラヤ水晶の先駆者であり、ヒマラヤ水晶No1を勝手に謳うスパイキーパサルですが、やはり当店ならではのデメリットもございます。 まず一番初めに再度お断りさせて頂きますが、上記のヒマラヤ水晶に関する記述や、用語解説はすべて私の経験と知識、そして権威ある英字文献を参照しながら執筆したものです。 経験と知識による部分には、調査段階の部分や誤りもあるかもしれません。 最も危険なこととして、私の独断や偏見も入っている可能性があるということをご理解くださいませ。 また、私自身は鉱物学者や地質学者ではございませんので、水晶生成の際の複雑な化学式や地殻運動が水晶に具体的にどのような影響を及ぼしているのかなど、大まかなことはわかっておりますが、厳密かつ学問的な専門分野においてはわからない部分もございます。 その部分に関してはまだまだ勉強中であり、多少解説の粗野な部分はご容赦いただければ幸いです。 しかしこれらのデメリットも、当店ならではの利点が上回り、結果としてデメリット以上のメリットがあると自負しております。 これだけ細かな産地の調査は、長年のネパール業者や村人との付き合いによって得たものです。 そのようにして10年に及び現地に密着して、収集した情報が用語解説などに反映されております。 そして業者との関係性もスパイキーパサルの利点です。 私筆者のヒマラヤ水晶やネパールに対する真摯な態度や情熱は共に歩んできた現地のみんなに必ず響いていると確信しております。 すでに10年、今では生涯を通じての仕事仲間、そして生涯を通じての友人がたくさんいます。 彼らは、私を時に贔屓してくれ、渡ネパールの度に歓迎してくれ、良い水晶や珍しいもの、有益情報は真っ先に回してくれます。 だからこそ、当店には高品質かつバラエティに富んだ水晶とヒマラヤ系鉱物が揃っているのです。このネパールでの現地力こそが、スパイキーパサルを動かす原動力であり、すべてを超えて行けるメリットだと考えております。

【エピローグ:スパイキーパサルとヒマラヤ水晶】

気が付けばもう10年になるでしょう、一日たりともヒマラヤ水晶ペンダントが私の胸元に光っていない日はありません。 人生のいかなる場面においても、嬉しいときも悲しいときも、ヒマラヤ水晶と共にありました。 1999年、最初に偶然ネパールで出会った衝撃から時は流れ、今では私の仕事となり、人生となりました。  好きな事を仕事にしてはいけないといいますが、好きな事を仕事にして、好きなことが益々好きになりました。
私がマヤを感じてならないネパールという国、ネパールの人々。 だからこそ、「ヒマラヤ水晶がそのネパールのヒマラヤ山中で採れるという奇跡」を体現できるのは当店だけだと思っております。 今更ながらに、ヒマラヤ水晶そのものはもちろんですが、ヒマラヤ水晶を取り巻く環境(市場や関連する人々など)すべてをが好きなことに気が付きました。 そして共感して下さるお客様に出会えたことが何よりの財産であり、みなさまにネパールからのヒマラヤ水晶や商品をご紹介できることを非常に嬉しく思います。
スパイキーパサルのヒマラヤ水晶を見て下さい。 こんなに楽しくて質が良いヒマラヤ水晶を見たことがありますか? こんなにこだわった銀加工を見たことがありますか? こんなに生きた情報が詰まった解説を見たことがありますか? 少なくとも私はスパイキーパサルが唯一無二の存在だと思っております。
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます。
感謝の気持ちを込めて、2010年7月サイトリニューアル時に記述更新。

※鉱物のデータは「鉱物と宝石の博学辞典 日本実業出版」「宝石の写真図鑑 日本ヴォーグ社」および「National Audubon Sociey Field Guide to North American Rocks and Minerals Alfred A.Knopf Publisher」 より頂きました。
※パワーストーンの記述一部は、「幸運を呼ぶパワーストーン水晶の神秘 日本文芸社出版」を参照しました。
※アルパインベイン鉱脈に関する専門的記述の一部は、アメリカ鉱物協会所属イアンキャプベル博士の論文、ドイツ人鉱物研究家AC.アクバン氏の記述、The Magic World:Inclusions in Quartz Bode Verlag 出版2003年、ネパール鉱物地質学庁2004年のデータ文献及び資料を参照・和訳しております。

※これらの情報はスパイキーパサルが独自に収集したものであり、すべてスパイキーパサルに帰属します。 情報は財産です。 無断でのご使用はお控えの上、他の業者・個人様が参考として記載する場合はご一報ください。 これらの情報の無断使用を見つけた場合はご連絡下さいますようよろしくお願い致します。
※掲載してある変成岩鉱脈や村の写真等はすべてスパイキーパサルが村人より個人的に受け取ったものです。 複写・流用はおやめ下さい。

水晶用語・外観&形状編

用語解説のはじめに
「十人十色」 
10人寄れば10人それぞれに違った個性(色)がある、という諺です。 これは水晶原石にも当てはまることであり、10の水晶があれば10の表情豊かな個性があります。 水晶一本一本がそれぞれの外的特徴(形状、外観)と内的特徴(内包物、内観)を持ち、各々が多方向に広がる小宇宙を創り出します。 人々は古来から水晶の持つ生き生きとした個性に魅了され、外的特徴や内的特徴を分類化し、それぞれに形状の名前や石の意味、パワーストーンとしての役割を持たせるようになりました。
はじめて石の世界に入る人は、「なんだろう、この言葉は?」と困ってしまうことも多いのではないでしょうか。 一般的水晶用語の解説とともに当スパイキーネパーの独自調査と経験による、当店にしかないヒマラヤ水晶における解説も交えて一覧を作成しました。 
しかし、形状などに関する「定義」というものは存在しません。 こういう形の水晶はこう呼ばれている、という世界共通の大まかな理解があるに過ぎません。 ネット検索をしていると同じ言葉に違う解説を目にすることも多いでしょう。 以下の用語説明もあくまでスパイキーパサルにてヒマラヤ水晶を解説するにあたり、「こういった意味で使用している」というキーワードであり、一般的なものや他のサイト・個人さんの解釈と異なる場合もございますのでご了承ください。  これらの水晶用語はすべてスパイキーパサルがヒマラヤ産で確認したものであり、まだヒマラヤ産で確認していないものは、掲載しておりません。  また、個人的見解で「これはいらないだろう」というものも割愛させて頂いております。
当スパイキーパサルでは長年の経験により、個性豊かなヒマラヤ水晶たちの特徴を大まかに分類してきました。 それら多層に広がるヒマラヤ水晶を形容するにあたり、前身のスパイキーネパールから多くのオリジナル造語を作り出しております。 それらの造語は一般的なものではございませんので、「S造語」という表記をしております。
スパイキーパサルは水晶と個人との関係を大切にします。 もちろん定義や水晶用語など一切知らなくてもひとつの水晶と触れ合い、響きあうことが可能です。 しかしスパイキーの水晶に対する説明を見る際に、これらのキーワードを少しの参考にしていただければ幸いです。

アイウエオ順ではありません。上の記述と下の記述が連携するように考えて並べております。

外観・形状の用語

【シングルポイント】

ヒマラヤ水晶シングルポイント水晶の最も一般的で基本的な形。 ポイントのことをターミネーション(Termination)ともいいます。 シングルポイント・シングルターミネーションの水晶は、6角柱の柱面が錐面へと移行し、錐面が集束してポイント(先端)を形成します。 つまりシングルポイント水晶とは六角柱に六角錐が乗っかっているものです。 ペンダント加工にも最も適しているのでスパイキーパサルで多く使われている水晶です。 

【ダブルポイント】

ヒマラヤ水晶ダブルポイントダブルターミネーションとも言います。 英文解説では、ポイントという言葉よりもターミネーションという言葉のほうが一般的であることも覚えておきましょう。 ダブルポイントの最大の特徴は、名前の通りポイント(水晶の先端部分=錐面)が両側にあるということです。 日本では両剣水晶・両錐とも呼ばれいます。 この水晶は生成の過程の何らかの原因で壁から剥がれ、壁面に対して水平で生成したと考えられます。 両の先端が自由空間で成長するために2つのポイントが生まれます。 2つのポイントは二つの相反する力を示すといわれ、心と体、現実と精神世界など二つのものを繋げる働きが強いとされます。  ペンダント加工の際は、両方のポイントが見えるように、ナーガ仕様か吊り下げタイプの銀加工を施します。

【マルチポイント】

ヒマラヤ水晶マルチポイント片方の端がシングルポイントで他方の端がたくさんの小さなポイントで出来ている水晶。 その様がロケットのように見えることでも有名です。 英名ではExtra terminations(ETs)と呼ばれることもしばしば。 ダブルポイント同様に壁面に対する接地がなく、水溶液の中から単体で産出するタイプの水晶です。 また、シングルポイント側を下に向けてひっくり返すと花束のように見ます。 その為、当店ではフラワークリスタル(S造語)と呼ぶこともあります。 

【群生水晶(クラスター)】

ヒマラヤ水晶群生水晶クラスターまさに文字のごとく、群れを生成している水晶です。 多くの水晶結晶が群生して一つの塊を成しているものをクラスター(群生)水晶と呼びますが、剣山のようにみえます。 水晶、と聞くと占い師の丸い水晶球やこのようなクラスターを浮かべる人も多いのでは? あらゆる方向に向かって無数の結晶が元気良く母岩より突き出しています。 クラスター水晶はペグマタイト鉱床で多く採掘され、ヒマラヤ水晶のクラスターとしてはタプレジュン地区カンチェンジュンガのものが有名です。 イカブ地域やロダンタール地域で多く産出しましたが、2000年代後半から急に採掘が途絶えてしまいました。 浄化作用も強力であるといわれ、ペンダントやブレスレットをクラスターの上に置いて浄化する際にも活躍してくれます。

【ツイン(双子水晶)】

ヒマラヤ水晶ツイン二子水晶2つの結晶が仲良く並んでいる水晶です。 片方が小さくて大きなほうにぴったり寄り添うような水晶は親子水晶と呼び、スパイキーパサルでは小さい方を子結晶と呼ぶ事があります。 ツインにはそれぞれの結晶が違う方向に伸びているもの、同軸方向の双子(平行連晶)、兄弟のようにそっくりなツイン、様々な形状があります。 またトリプルの3つ子や4つくっついているのも珍しくありません。 特にトリプルの水晶は、ヒンドゥ教の法具のひとつである三又の槍、トリシュルに準えて「トリシュル水晶」(S造語)と呼ぶことがあります。 

【タントリックツイン】

水晶のボディに境界線を有さずにポイントが2つ発生しているもの。 ツインと同じなのですが、特別に境界線が無くポイントが上部で2つに別れているものをタントリックツインといいます。 密教や秘儀という意味をもつのが「タントリック」です。 神秘的な力が強い水晶なのかもしれません。 日本ではあまり名が通っておりませんが、海外ではそこそこ人気のある水晶のようです。

【タビー水晶】

ヒマラヤ水晶タビー水晶タビュラー(Tabular)とも呼ばれます。 平らな、平べったい、テーブル状の、という意味あいが示す通り、平べったい平らな水晶を指して使われます。 6柱面のうちの2面が他の4面の2倍以上の面積を持ち、各錐面の集束地点であるポイントが「点」ではなく「線」になることが多いです。  大きな2面は水晶生成時・成長時における硅酸の分配のバランスに不均衡があったためと考えられます。 どっしりと構える水晶は安定感抜群です。

【レザー水晶】

ヒマラヤ水晶レザー水晶レーザー光線のレーザーを想像すれば良いでしょう。 しゅっと細長くスレンダーな水晶で、根元からポイントにかけてゆっくりと細くなっていきます。 その為、錐面とポイントが非常に小さく美しく整っていることが多いのも特徴です。 またこのタイプの中には先端部分を軽く叩き合わせると、ティーンティーンと心地よい高音を発するものがあり、現地ではシンギングクリスタルティンティンと呼ばれることがあります。 ヒマラヤに響き渡る高音は癒しを与えてくれそうなほどに心地良いです。

【セプタ−水晶】

ヒマラヤ水晶セプター水晶この不思議な形! 松茸水晶、王杓水晶という和名がありますが、見て納得ですね。 上部にキャップがくっついたような形状ですが、これは土台となっている水晶がゆっくりと生成・成長している間に、周囲の環境が大きく変化し(水晶周辺での劇的なシリカ→水晶を形成する元素の増加が要因といわれる)、ポイントの生成を一気に促進させたというのが一般的な説です。 ポイント周辺のほうが角が多いため、角の多い部分に電子運動が集中します。 すると結果として、電子運動が活発な部分に原子が集中し、成長に偏りが生まれて後に生成を始めたポイント部分のほうが大きくなります。 2つの生成・成長段階を持つ、面白い形状の水晶です。 後に生成した水晶が根元の水晶を覆い尽くすケースが多いのですが、稀に後期の水晶がちょこんと乗っているだけの可愛らしいものもあります。 珍しい水晶ではありますが、ヒマラヤにおいてはそこそこの産出があります。 ダディン地区ガネーシュヒマール山のラパ地域においては緑泥石混じりのセプター、アメジスト水晶のセプター、非常に透明度の高いセプター等も産出します。 ※セプターの生成には他の説もございます。

【仏塔水晶(インナーセプター)】

ヒマラヤ水晶インナーセプター根元が太く、ポイントに至るにあたり、一定の部分を境に急激に細くなっている水晶のこと。 2つの生成過程を経るセプターとは違いますので、厳密にはセプター水晶ではありませんがセプター水晶とは見た目が反対なので、インナーセプター・リバースセプターと呼ぶこともあります。 その形状が現地ネパールで良く見られる仏教建築のストゥーパ(仏塔)に似ていることから仏塔水晶(S用語)とも呼びます。

【成長干渉水晶(Growth Interference) 】

ヒマラヤ水晶干渉水晶成長干渉水晶というなんとも不思議な名前。 Growth=成長 Interference=干渉という英語をスパイキーが和訳したものです。 しかし意味をわかって頂けると簡単です。 水晶が生成している時期に何らかの外的干渉を受けて(大抵の場合は阻害物は岩壁や他の鉱物となります)溝や中断面が出来ているもの。 この中断面はまるで回転ブレードで切ったかのようにすぱっと切れているものもあります。(ナチュラルカットと呼ばれます) 成長干渉水晶は非常に面白い様々な形や面を作り出してくれます。 時には縦に走る迫力満点の断層を作ったり、またある時はピラミット状の形状を成すこともあります。 これぞ自然の芸術!成長干渉水晶は水晶鑑賞のハイライトの一つでもあります。

【カテドラル水晶】

ヒマラヤ水晶カテドラル形状はまさにゴシック建築のカトリック教会の大聖堂(Cathedralとは教会です)のよう。 中心の水晶の周りに、大きさ、長さ、太さが異なる水晶が周りを取り巻いている状態のものを指します。 すべての取り巻いている水晶は中心の水晶と平行に成長しているため、同じ方向(同軸)に向かってポイントを生やしています。 また、中世のお城のようにもみえることから、Castle(キャッスル)水晶と呼ばれることもありますが、個人的には「バビロン水晶」という呼称が気に入っております。 古代バビロニアの建築を彷彿させるところに由縁があるのでしょう。

【ミラー水晶】

ヒマラヤ水晶ミラー水晶水晶の照り艶・輝き・透明度・光の強さという4つの要素が非常に高いレベルにある水晶をミラー水晶(S造語)と呼んでいます。 ミラー水晶の中にも質がありますが、これはスパイキーの長年の経験で、相対的に判断させて頂いているものです。 最上級のミラー水晶になると、すべてを弾く鏡のごとく輝きます。 比較的高温高圧下でゆっくりと育てられた水晶であることは、表面のモザイク模様からも間違いないようです。 暗闇の中の一寸の光明、まさに光の塊のような水晶なのです。 ヒマラヤ水晶が世界に誇れることを証明してくれる水晶だと言っても過言でないでしょう。 主にガネーシュヒマールのラパ地域とティプリン地域で産出しますが、圧倒的な最高質はラパ地域のチョンテンカルカとマンガルカルカ鉱のものでしょう。 ダイナミックで反射が非常に強いのが特徴です。 対するティプリン産はモザイク構造面が強く繊細に煌きます。 残念ながら最高質のチョンテンカルカ・マンガルカルカ産は2000年代後半には枯渇してしまいました。

【エレスチアル】

ヒマラヤ水晶エレスチアルあまりに有名な形状に対すいる呼称であり、色々な解釈やスピリチュアル的なものが氾濫して、最も定義付けのわかりにくい形状の種類ではないでしょうか。 簡潔に定義するならば、「たくさんの同軸方向を向いた水晶が大きな水晶の上に幾層にも重なりあい、融合してひとつを形成している形状のもの」といったところでしょうか。 その容姿がワニの鱗のように見えるのでジャガレー水晶(ジャガレーとはポルトガル語でワニ)と呼ばれます。 英名でAlligater(アリゲーター)水晶とも呼ばれます。 生成の過程で水晶が重なりあうという状況はセプター水晶に近いものがあります。 いつの頃からなのか下記スケルトン水晶もエレスチアルに含まれるようになりましたが、生成の過程において層状に形成された作られたジャガレータイプとは全く異なるものです。 更に悪い事に、近年は何故か内包物入り水晶の事をエレスチアルと誤称している場合が多々見られます。 エレスチアルとは形状に関する呼称であり、内包物は関係ありません。 また、「水晶最後の姿」という解説を見かけることがありますが、水晶が古くなる(老いる)とこのような形状になるわけではなく、生成段階でこの形になります。

【スケルトン水晶(骸骨水晶)】

ヒマラヤ水晶スケルトン骸骨水晶名前は恐ろしいですが!?非常に面白い表情を見せてくれる水晶のひとつです。 スケルタル水晶(Skeletal)とも呼ばれます。 和名は骸骨水晶・骸晶となります。 スケルタル水晶は通常よりも短い期間で生成・成長が完了したものです。 成長の早い角や稜の部分だけが先に成長をする事により、平たい部分が取り残されて表面に激しい凸凹が生まれます。 これが骨格のみを残したような表情を持つ骸晶なのです。 スケルトン水晶は、周辺の泥土や水、ガスなどを内部に取り込むことが多く、変わったインクルージョンが見られがちなのも特徴です。 また、ヒマラヤ水晶の解説で既出の通り、アルパインベインタイプの鉱脈でよく産出する形状の一つです。 ちなみにこの形状をドイツではフェンスタークォーツと呼び、そのフェンスターの英語訳がウインドゥクリスタル、つまり窓水晶です。 ラパの一部地域とティプリンにも産出する地域があるのですが、厳密な鉱山は只今調査中です。 アメジスト水晶(色分類参照)が出る地域でもよく見かけます。

【ドラゴンの鱗】

他の要素に表面を溶かされてしまい、浸食を受けたものだと考えられます(トライゴーニックのようなものでしょうか) しかしトライゴーニックよりもはるかに激しく浸食され、6柱面の無いものが多く、まるで水晶には見えないものも存在します。 表面は照りがありながらもボコボコしている、といった感じです。 英名ではCorroded Quartz(浸食水晶)と呼ばれることが多く、地質の急激な変化によって他の溶液が浸食されることによって起こります。 竜紋のような…ドラゴンの生き生きとした姿が浮かんできたためにドラゴンの鱗(S造語)と名付けました。 ティプリン地区のトライゴーニックやミラー水晶が産出する地域から稀にやってきます。 ※スパイキーパサルが調査したものです。

【キャンドル水晶】

ヒマラヤ水晶キャンドル水晶中央の水晶の柱面からたくさんの子結晶が放射状に生えている状態の形状。 カテドラルと同じに思われがちですが、最大の違いは、子結晶が柱面から個体として生成させれているということです(これをSplit Growthといいます) その為、カテドラルはすべての結晶が中央の水晶と平行に育つのに対し、キャンドルの場合は各々がばらばらの方向を向いています。 確かにろうそくが溶けている様に似ています。 大抵の場合は半透明もしくは不透明なミルキーカラーであり、透明なものは見たことがりません。

【褶曲水晶】

ヒマラヤ水晶褶曲水晶ベンドクリスタル生成の過程において何かしらの要因が加わり、曲がって成長した水晶。 英名ではベンド(Bend)もしくはカーブド(Curved)クォーツと呼ばれます。 褶曲タイプの水晶にはこの言葉の如く、2タイプあるように思えます。 まずは、成長の過程において外的圧力でぐっと曲げられたように見えるものです。 まさに折るという意味もある「ベンド」タイプのものです。 ベンド水晶は良く見ると曲がりが始まっている部分に霧状のもやがみられ、そこから無理に曲げられたかのような印象を受けます。 対してもう一つのカーブドタイプ(写真のもの)は一つの結晶からできたのではないのがわかります。 曲がっている部分をみると、いくつもの小さな結晶が見られ、どちらかというとこの小結晶の向きに沿って自ら曲がっていったかのような印象を受けます。

【トライゴーニック】

ヒマラヤ水晶トライゴーニック水晶の面と面が合わさる「線」一本一本に横に走る条線がスクラッチされており、さらに錐面(ポイントの面)にレコードキーパーとは反対の逆三角形▼が刻まれているもの。 特に横に走るスクラッチは、後から人工的に削ったかのような見事なものです。 このスクラッチは浸食によって起こります。 地殻運動の非常に活発な場所で見られがちな浸食ですが、具体的には温度の急上昇や地中での圧力の急上昇等により、劇薬系の溶液(例えば400度で溶解し、浸食力の強いフッ化水素など)が水晶の溶解を招いて起こります。 不思議で神秘的な雰囲気を持つ水晶ですが、ヒマラヤにおいては主にティプリンにて産出します。 しかしラパの一部地域から来た水晶にもトライゴーニックを確認したことがあります。 ※スパイキーパサルが調査したものです。

【セルフヒールド】

ヒマラヤ水晶セルフヒールド水晶が母岩から離れたとき、隣り合う水晶の片方が取れてしまったとき、またはダメージを受けたとき、剥離部分はダメージとなります。 水晶は自分自身を治癒し、ダメージを受けた面は長い時間をかけてゆっくりと新しい水晶構造を作り出すのです。 新しいダメージは貝殻模様と呼ばれる同心円状の鋭い照りを発しますが、自己再生(治癒)により、新しい水晶構造を創り出した面は、凹凸があり、鈍い照りをしたものになります。 

【イシス・チャネリング・ダウ水晶等のポイント面による名前】

ヒマラヤ水晶イシス水晶錐面(ポイント面)の形により、水晶を分類分けすることもしばしばあります。 古代エジプトの女神の名を冠いたイシスクリスタルは、ポイント面に綺麗で整った5面を持ちます。 同様に整った7面を持つものをチャネリングと呼ぶことがあり、その名の通り未知なるものとのチャンネル(交流)に役立つのだとか。 また、不釣り合いなほど大きな7面を錐面に持つものを、ダウクリスタルと呼びます。 これは生成時の硅酸の分配の不均衡などにより、その面だけゆっくりと成長したためだと考えられます。 英文ではDow Crystalと書かれがちですが、本来はDauphinという言葉に由来があります。
ポイント面に綺麗な5面をもつ水晶をイシス水晶といいます。 エジプトの女大魔法使いであり女神であるイシスの名を頂いたこの水晶は女性的な力をサポートしてくれるものです。 また稀ですが7面ポイントを持つ水晶もあり、チャネリング水晶と呼ばれています。 持つ人の深い深層心理に「チャネリング」してくれる水晶です。  その他にも錐面や柱面と錐面の間に現れる面により、特別な名前や役割を与えられている水晶がございます。

【条線の刻まれた水晶】

ヒマラヤ水晶バーコード水晶バーコードのように横に伸びる線のこと。 この横線は水晶の成長線であり、たとえて言うのであれば樹木の年輪と同じようなものです。 条線水晶、バーコード水晶と呼ぶこともありますが、よくみるとほとんどの天然水晶で肉眼での確認が可能です。 最近では様々な他の条件プラスこの条線が深くくっきりと現れているものをレムリアンシード(レムリア水晶)と呼ぶそうですが…パワーストーン用語として耳にすることが多いのではないでしょうか。 ちなみに深い条線は高温下でゆっくりと育てられた水晶によく表れる特徴だと考えられます。 条線水晶は非常にスマートなものが多く、ポイント面で急激に細くなるため、ポイント面が極小となり6面を持たないことがあります(三角形の3面のみ)。 この特性はMuzo Habit(ムッゾ特性)と呼ばれます。 このタイプ、ガネーシュヒマールのラパでも見かけますね。

【レコードキーパー】

ヒマラヤ水晶レコードキーパー「記憶の貯蔵庫」という名の水晶です。 パワーストーン用語と言えるでしょう。 宇宙と地球、そしてさらに高い次元の叡智と記憶が刻まれていると信じられ、この水晶は与えられたものにそのすべてを授けるとされています。 ポイント面に三角形(ピラミット型▲)が浮き出していたり、刻み込まれているものを総称してレコードキーパーと呼びます。 三角形が刻まれたり、浮きだしたりする要因は様々ですが、実は「条線」同様にほとんどの天然の水晶に刻まれているものです。 ただし、多くの場合肉眼での確認は困難で、光に当てたりルーペで探したりしなければなりません。 また、度々「使っているうちにレコードキーパーが浮き出てきた!」という話を聞きます。 少し神秘的な香りが漂う水晶といえそうですね。

【カンテラ水晶】

ヒマラヤ水晶カンテラ水晶暗い闇夜にともる光、そんな印象を受ける水晶です。 まさにカンテラのようみ見えるのでカンテラ水晶(S造語)と名付けました。通常、緑泥石などの内包物が入る場合、内包物は水晶を作る溶液よりも重いため母岩の下に溜まります。 その緑泥石の層を突き抜けて水晶が生成すると根元周辺に緑泥が溜まりこむ水晶が形成されます。  従って上部に向かって透明になっていくのが一般的なのですが、このカンテラ水晶はポイント周辺に内包物(緑泥石)が溜まりこみ、根元周辺が透明なのです。 あくまで憶測にすぎませんが、地殻活動の活発なヒマラヤですから、生成の最中で溶液内に激しい変化(揺れや成分構成の変化)が起こったために緑泥が巻き上げられる現象が起こったのでしょう。 まだ、厳密な鉱山は特定できておりませんが、ガネーシュヒマールのラパ地区内(おそらくはヤルサと呼ばれる地域周辺)だと推測しております。 この周辺の水晶には、カンテラにならずとも上部に緑泥が散在する素晴らしい水晶が多々存在します。 ※スパイキーパサルが調査したものです。

【グリーンスター水晶】

ヒマラヤ水晶グリーンスター水晶これも初めて目にしたときに感動を覚えた水晶ですが、ネーミングに悩みました。 最初の案は…盆栽水晶です。 これが水晶だといわれても疑って当然でしょう。 針状の細かな結晶が縦横無尽、放射線状に生成する様は芸術的としか言えません。 これらの水晶の多くは接地面がなく、粘土質の緑泥層の中でのみ生まれます。 水晶分子構造の格子のありとあらゆる隙間に緑泥石が入り込み、そして表面にも付着しております。 余談ですが、これらの水晶は粘土質の泥の中に存在するため、周りをすべて塩酸で溶かした後にゆっくりと水をかけながら救出しなければならないという非常に手間のかかる水晶です。 これはダディン地区ガネーシュヒマールのラパ村手前、レーという鉱山でのみ産出します。 ※スパイキーパサルが調査したものです。

【陰陽水晶】

ヒマラヤ水晶陰陽水晶内包物部分(ヒマラヤ水晶の場合主に緑泥石)と透明部分がちょうど半々に分かれている水晶の総称。 内包物のみならず、霧状のもやと透明部分が半々になっているものも陰陽水晶と呼びます。 中国の道教のシンボルである陰陽印(YinYan)に語源がありますが、英文サイトでもYinYan Crystalとしていることがしばしば。 内包物によって作り出された世界を表す用語ということになります。

【外観の補足:水晶を形容するときの言葉】

照り字の如く、表面の艶やかな照りを表現するときに「素晴らしい照り」といった具合に使います。 ヒマラヤ水晶はアルパインベイン鉱脈において比較的高温高圧下でゆっくり育つものが多いのですが、そのような水晶は表面がモザイク構造を持ち、非常に艶やかなのが特徴です。 この類まれなる照りこそがヒマラヤ水晶を他の水晶と一線を画する要素だと思います。
甘み・とろみこれもヒマラヤ水晶の照りと艶を形容するのに適する言葉です。 照りと輝きの強いヒマラヤ水晶は、思わず舐めてみたくなってしまうほどの甘さやとろみを見せることがございます。
シルバー系とゴールド系透明な水晶には2タイプの透明がございます。 片方は上記のような強い照りにより甘みやとろみを伴う軟質な透明です。 それこ水に片栗粉を入れてとろみをつけたような、少しの色み(黄色っぽい?)を感じさせるものをスパイキーパサルではゴールド系(S造語)と呼びます。 ラパ・ティプリンの最強ミラー水晶全般はゴールド系です。 対してもう一方の透明は、非常に硬質で鋭い輝きを持ちます。 こちらはいわゆる透明らしい透明で、ガラスのような無色水晶です。 シルバー系の典型例としては、カンチェンジュンガ産やエベレスト産、ラパのアメジスト水晶鉱山の透明水晶です。
輝き水晶面が光を反射した時の光の強さを輝きと呼んでいます。 面の形や面の大きさ・面の数がイレギュラーであるほど、光を反射する面が多くなり、結果として輝きも強くなります。 例えばダイヤモンドをファセットすると(人工的に面をつける加工の事)きらきらと輝きを放つようになりますが、それは光が各々の面で反射するからです。 同様に天然の水晶でも、面が光を反射するとキラッと輝きを放ちます。
レンズ効果カット加工を施した水晶に付帯して、よく使われるスパイキー造語です。 カボションや涙、雫型など、丸みを帯びた形に加工すると起こる特有の内部現象のことです。 虫眼鏡や魚眼レンズなどを通してものを見ると、ぼわっと浮き出したような屈折した世界が見えますが、同様の光の屈折がカット水晶でも起こります。 原石においては起こり得ない現象ですが、カット加工の最大の魅力のひとつがこのレンズ効果だと思います。

水晶用語・色分類編

アイウエオ順ではありません。上の記述と下の記述が連携するように考えて並べております。

【ミルキー(内包物による)】

ヒマラヤ水晶内包物によるミルキーその名の通り淡い乳白色の水晶。 乳白色であれば「ミルキークォーツ」と呼ばれますので、定義としてはかなり曖昧です。 この乳白色を作り出すのは様々なインクルージョンです。 霧状の靄や液泡がうっすらとミルキーカラーを作り出すこともあれば、ルチルや角閃石などの他の鉱物が溶けるようにして半透明なミルキーカラーを作ることもあります。 他の鉱物によるミルキーの場合は、水晶を太陽にかざすと、繊維質の繊細な内包物が無数に確認できるはずです。

【すりガラスミルキー】

ヒマラヤ水晶すりガラスミルキー敢えて上記内包物タイプのミルキークォーツと分けました。 上記内包物ミルキーと似たような色合いなのですが、こちらはすりガラスのような不透明な表面がミルキーカラーを作り出しております。 内包物による乳白色でなく、表面の不透明・半透明による乳白色です。 表面がすりガラス状になる原因は、先に成長していた水晶の周りに存在していた白い鉱物や泥土が表面に付着したものだと考えられます。 その為、多くのすりガラス状ミルキーは表面だけが半透明で内部は純度の高い透明です。

【スモーキークォーツ(煙水晶)】

ヒマラヤ水晶スモーキークォーツスモーキークォーツと一言に呼称しても、淡い茶色から黒に近い色のもの、赤味を帯びた茶色から黄色っぽい茶色まで、その色みは様々になります。 日本名では煙水晶と言います。 天然の放射線を浴びることにより、水晶元素のケイ素(S)がアルミニウム(Al)に変換され、その後水晶構造格子の+と−イオンのアンバランスがカラーセンターを生み出すという複雑な化学的プロセスがあります。 天然の放射線がアルミニウムイオンの変換の原因となりますので、水晶が放射線を浴びる環境にあるということがスモーキークォーツを生み出す必須条件となります。 スモーキーカラーへの変容は水晶が放射線を浴びた後、数百万年の単位で50度以下の環境に留まっていなければなりません。 つまりスモーキーカラーに色づくのは水晶が生成してから随分と後になってからなのです。 スモーキーカラーは人工的な放射線照射によっても色づけることができますので、市場に出回るスモーキーは人工的照射である場合も多いです。 残念なことに現在の鑑別技術ではその色が天然ものか人工的な処理なのかを見分ける事はできません。 
余談ですが、スモーキークォーツは放射線に晒されたので危険なのか?という質問を良く受けます。 スモーキークォーツ自体は放射線を発しておらず、放射線に晒される環境にあっただけです(花崗岩等は天然の放射性物質を含みます) ですのでスモーキークォーツは危険ではありません。 我々がレントゲンを撮る時に放射線を受けますが、我々がその後放射線を発する訳ではないのと同じ事です。

【ライトスモーキー】

ヒマラヤ水晶ライトスモーキー同じスモーキークォーツの中でもやや色味が薄いものをライトスモーキー(S造語)と呼んでおります。 ライトスモーキーの中には本当にうっすらとべっ甲飴のように優しい色のものがあり、中には透明と比較するとようやく色づいているのがわかるようなスモーキーもあります。 稀にうっすらスモーキーの色づきと共にミラー水晶級の照りを持つものがあり、そういった水晶は絶品の美しさを持ちます。 ライトスモーキーの多くはダディン地区(ガネーシュヒマール)近郊のゴルカラスワで産出します。
 

【ダークスモーキー】

ヒマラヤ水晶ダークスモーキーこんな黒いのみたことがない!というくらい黒い水晶をダークスモーキー(S造語)と呼んでおります。 上記解説の通り、放射線を受けてケイ素(S)がアルミニウム(Al)に換置した水晶が長い年月をかけて50度以下の環境に置かれた為、最大限に黒く色づいたものです。 ※山岳で産出するすスモーキーに関しては標高の高いものほど濃く色づくという研究がございます。 これは標高が高いほど早く地表に近付いたということであり、従ってより早く50度以下に達したからだと考えられております。ダークスモーキーの中には黒すぎて内部が見えないほどのものありますが、色が濃ければ濃いほど崩壊質になり、表面の照艶も鈍くなる傾向があります。 色が濃くて6面すべてが整ったダークスモーキーとなるとかなりのレアものと言えるでしょう。 黒水晶をモリオンと呼ぶことがありますが、モリオンの色づき過程はスモーキークォーツと全く同じものです。 混同されがちですが、モリオンはスモーキーの呼び名の一つに過ぎません。 強いてスモーキーとモリオンに境界線を設けるのであれば「光に翳して透けるか透けないか」といった所でしょうか。 ダークスモーキーをカット加工してカボションや涙型にするとそれはそれは美しいものが出来上がります。

【バイオスモーキー(スモーキーファントムクォーツ)】

ヒマラヤ水晶バイオスモーキー(スモーキーファントム)一般的には色むらが少なく、単色になりがちなスモーキークォーツですがポイント周辺のほうが濃くなる傾向は珍しいことではありません。 また、稀にカラーゾーニング(色の境界線)がファントム形状に確認できるスモーキーも存在します。 これがスモーキーファントムクォーツと呼ばれるものですが、スパイキーではバイオスモーキー(S造語)と呼んでおります。 これは、カラーゾーニングの2色が光の加減により黄色っぽく、紫っぽく、緑っぽく、茶色っぽく…有機的かつ生物的に(まさにバイオ=生物的)千変万化する様に感動して名付けたものです。 バイオスモーキーの原石結晶でダメージの無いものは最大級に稀といえます。 ゴルカ地域で2000年代前半に一度産出があったきりでその後一切新たな産出がございません。 この種のスモーキーもカット加工を施すと驚くほどに神秘的なものができあがります。

【ブラッキー水晶】

ヒマラヤ水晶ブラッキー水晶こちらはスモーキーとは異なる要因で黒っぽく見える水晶です。 ブラッキー水晶(S造語)はスモーキークォーツの様なブラウンではなく、完全に黒(もしくは灰色)です。 ブラッキー水晶は現在調査中で細かなことはよくわかりませんが、黒色は酸化マンガンの付着だと推測されます。 水晶が高温下で先に生成し、ほぼ形作った段階で低温状態に至り、マンガンが生成され、内包・付着したのではないでしょうか。 ヒマラヤ水晶においては比較的稀な水晶でしたが、つい先日(2010年現在)ラパから大量にやってきたのを見ました。その後は数年に至り同じタイプの水晶を見ておりません。

【アメジスト(マーブルアメジスト)】

ヒマラヤ水晶マーブルアメジスト紫色の水晶といえば、アメジストです。 ギリシャ語の「酒に酔わない=a-methy-stos」という言葉が由縁なのは有名な話です。 この紫色は水晶構造格子に鉄イオンが入り込み、上記スモーキークォーツのように放射線を浴びる事により化学的変化を経たものだと考えられます。 一様な色のスモーキーとは対照的に、アメジストは色がむらになるケースが一般的です。 ヒマラヤのアメジストも例外ではなく、紫の色合いに濃淡があり、白から紫までグラデーションになったり、紫色が筋状になっているものもあります。 下記のアメジスト水晶と差異をつけるために、この種のアメジストをマーブルアメジスト(S造語)と呼んでおります。 マーブルアメジストは綺麗にポイント結晶しているものは稀で、ほとんどの場合は塊状で産出します。 その為多くはカット加工に回しますが、丸玉やカボションは神秘的で美しい模様を持つものが仕上がります。 かなり昔から時々カトマンズに届くマーブルアメジストですが、供給も不定期で細かなことまではまだわかりません。 ダディン地区のヒンドゥン地域やダルチュラ地区が産地だったようですが、2000年代後半からは新たな産出やカトマンズへの到着が途絶えてしまい、新たな採掘は聞かれておりません。 
余談ですが、アメジストは紫外線で激しく退色しますので、長時間太陽光にさらすのは厳禁です。 白色電球(蛍光灯)も退色の原因となりますから保管・管理には気を付けましょう。

【アメジスト水晶】

ヒマラヤ水晶アメジスト水晶こちらはポイントを有する結晶で、うっすらとアメジストの紫色やライラック色が確認できるものの呼称としております(S造語) 中には「んん、これは違うんじゃない?」というほど色が薄いものもあります。 同じ鉱脈の同じポケットで採掘されるアメジスト水晶でも、色が濃いもの薄いもの、白んでいるもの、透明度の高いものがあり、肉眼で容易に色が確認できるものは多くはありません。 アメジスト水晶には非常にユニークな形状を持つものも多く、セプター形状でキャップ部分のみがアメジスト色のもの、スケルトンの形状を持つもの、水入り、若干の緑泥石の内包があるものなど様々です。 すべてのアメジスト水晶はダディン地区ガネーシュヒマール山のラパ地域からやってきますが、厳密な鉱山の特定には至っておりません(現在調査中)。 アルパインベインタイプの鉱脈では、このようなうっすらタイプのアメジストや、セプター部分のみが薄アメジストのものが産出することが多いという調査結果があり、ヨーロッパアルプス地方の鉱脈でもヒマラヤのものに非常によく似たものの産出が確認されおります。 鉄を取り込むのはかなり低温になってからですから、水晶生成時の水溶液の温度が低かった(又は途中で低くなった)事が推測されます。 かなり面白い水晶のひとつですが、コレクションの際には強い光にお気を付け下さい。

【ヒマラヤ産ローズクオーツ(紅水晶)】

ヒマラヤ水晶ローズクォーツ可愛らしいバラ色ピンクの水晶はローズクォーツと呼ばれます。 日本名は紅水晶。 ほのかなピンク色は少量のチタンによるものと考えられておりますが、他の要因でピンク色になるとも指摘され(スモーキーやアメジストと同じ照射によるものという説とインクルージョンによるものという説あり)、実はよくわかっていない水晶の一つです。 ほとんどの場合で半透明の塊状で産出し、美しい錐面・柱面が見られません。 ローズクォーツは非常に高温高圧なペグマタイト中で生成(400-700℃)するため、気体(ガス)から生まれると考えられます。 その為、液体から生成される普通の水晶が柱面・錐面を持つのに対し、ローズは面やポイントを持ちません。 ヒマラヤ産ローズクォーツも例外ではなく、大抵のものは半透明・不透明であり塊状で産出します。 その為、多くのローズクォーツは丸玉ビーズやカボション等にカット加工を施されます。 しかし、質が良いとされるマダガスカル産などに比べると、ヒマラヤ産のものは白濁も激しく色も薄い傾向にあるように思えます。 ヒマラヤ産ローズの価値は「それがヒマラヤ産である」ということのみと言えるでしょう。 おもな産地はチベット国境近くのシンドゥパルショーク地区ですが、現在は全く採掘されておらず、新たな産出もございません。 ※スパイキーパサルが調査しました。 ちなみにローズクォーツはピンク水晶(Pink Quartz)と呼ばれる水晶とは全く別のものです。

【クローライト水晶】

ヒマラヤ水晶クローライト水晶クローライト(緑泥石)で水晶が覆われ、ガラス質の透明部分を一切持たない水晶をクローライト水晶(S造語)と呼んでおります。 クローライトChloriteとは、和訳すると「緑泥石」です。 ということはクローライト水晶とは「緑泥石入り水晶」ということになりますが、透明感のある水晶に内包物として緑泥石が入っているものと差異を持たせるために、この名前を使用しております。 クローライトも緑泥も同じものなのですが、当店では透明感ある水晶に内包されているものを「緑泥石入り水晶」と呼び、クローライトに覆われ透明感の無いものをクローライト水晶と呼んでおります。 混同しないようにご注意ください。 これらクローライト水晶は、水晶が高温下で生成したのち、低温下で生成する緑泥石が内包・付着して生まれます。 粘土質の緑泥石層が存在するポケットで生まれます。 クローライト水晶が複雑交差するユニークなグリーンスター水晶はダディン地区ガネーシュヒマール山レー地域で産出しますが、クローライト水晶はダディン地区の全域で産出します。

水晶用語・内包物編

アイウエオ順ではありません。上の記述と下の記述が連携するように考えて並べております。

【インクルージョン(内包物)】

ヒマラヤ水晶内包物インクルージョン字のごとく、水晶の中に入っているその他の鉱物のこと(鉱物に限らず虹や液泡なども内包物と呼ぶことがある)。 水晶は鉱物豊富な環境で育つため、他の鉱物を内部に取り込む事が非常に多いといえます。 内包物は大きく分けて 1.内包物が先に育ち、その鉱物の特徴を持ったまま、水晶に内包されるパターン(初生インクルージョン) 2.内包物と水晶が同時に育ち、内包された鉱物がその鉱物の特性を持たないパターン(同生インクルージョン) 3.成長後の環境変化~温度や圧力の変化等~により、内部に生じたパターンがあります。 多くの内包物水晶を見ているうちに、どのパターンなのかある程度推測できるようになります。 インクルージョンは鉄系鉱物(ヘマタイトなど)、チタン系鉱物(ルチルなど)角閃石系鉱物(緑閃石など)、雲母(バイオタイトなど)、時にはガーネットやフローライトなど、実に様々です。 その内包形状も色も多くのバラエティがあり、見た目だけでは鉱物学者や鑑別師さえも内包物を同定できないことも多々ございます。 水晶内部で千変万化の風景画を見せてくれるインクルージョンは水晶鑑賞の最大のハイライトと言えるでしょう。

【緑泥石入り水晶】

ヒマラヤ水晶内緑泥石入り最も「ヒマラヤ水晶」らしいと思われる内包物です。 最近では様々な色・形状・内包物を持つ水晶がヒマラヤ山中から見つかっておりますが、かつてはこの緑泥入り水晶がヒマラヤ水晶の代表格でした。 この緑泥石は厳密には12に分別される緑泥石族(chlorite group)の事を指し、アルパインベインタイプの鉱脈の変成岩中で多くみられる鉱物です。 ヨーロッパアルプスでもヒマラヤ水晶にそっくりな緑泥石入り水晶が多く産出します。 水晶と同時に育ち、内包された緑泥石はまるで苔のようにも見えますので苔入り水晶とも呼ばれます。 「この緑色の物質は苔(又は藻)であり、遥か昔にヒマラヤが海であった証拠である」と噂されるほどその形状は苔や藻のようです。 良くも悪くも和名が「緑」泥石なのですが、クローライトグループが必ずしも緑というわけではありません。 緑泥石入り水晶はダディン地区ガネーシュヒマールラパ地域全域で産出しますが、特に良質なものはラプチェ鉱山やクプチェ鉱山などで採掘されるようです。 現在ではタンタブレ鉱山やタティガン鉱山、マンゲルマグリン鉱山でも良質な緑泥が産出します。 ※スパイキーパサルが調査しました、まだ調査中でもあります。

【アクチノライト水晶】

ヒマラヤ水晶緑閃石アクチノライトこの内包物もヒマラヤ水晶において多くみられる内包物の一つです。 まだヒマラヤ水晶が多く研究されていなかった当初、当店でも緑ルチルと呼んでおりましたが、混乱を避けるため、名前をアクチノライト(緑閃石)入り水晶と統一します。 このアクチノライト(actinolite)は和名を緑閃石といい、角閃石族(Amphibole)に属します。 鉱物的にもルチル(金紅石)とは全くもって別のものです。 太い細い、濃い薄い…と様々な表情を見せてくれるアクチノライトですが、基本的には緑色の針金形状または繊毛状です。 アルパインベインで良くみられる内包物ですので、ヨーロッパアルプスでも同様のアクチノライト入りが産出します。 ガネーシュヒマール全域でみられる水晶ですが、良質なものはタンタブレやタティガンと呼ばれるラパの高地(ガネーシュヒマールの西稜)ではないかとスパイキーは推測しております(現在調査中)

【ガーデン水晶】

ヒマラヤ水晶ガーデンクォーツガーデン水晶」という呼び名も定義が曖昧な呼称のうちの一つです。 内包物などによりまるで水晶の内部に「庭園」が見えるような、そんな水晶の総称です。 緑色の山岳風景や、小さな湖畔の情景などを見せてくれる緑泥石入り水晶や、仙人が棲んでいそうな竹林風景や神秘的な奥深い森を見せてくれるアクチノライト水晶は、ガーデン水晶の典型といってよいでしょう。

【針金形状内包物入り水晶】

ヒマラヤ水晶ルチル水晶ルチル水晶という混乱を招いた針金形状内包物。 当店でも昔はルチル水晶やルチル形状をした内包物と呼んでおりましたので、混乱を招いた要因かと思います。 申し訳ございませんでした。 先駆者であるが故の間違いにてご容赦ください。 ヒマラヤ産においてルチルのような形状をした内包物の多くは、ルチル(金鉱石)ではなく、角閃石族に属する鉱物が針金形状・繊毛形状になったものです。 あくまでも個人的な見解ですが、鉄系鉱物の針金形状内包物(ゲーサイト等)やチタン鉱物の針金形状内包物(ルチル等)と角閃石族の針金形状内包物の違いは、その「質感」によってある程度見分けることができます。 前者2種は無機質的で、鋭く硬質な輝きを持つのに対し、後者の角閃石系は有機質的で柔らかく軟質な輝きを持ちます。 前者はより金属質的で後者は植物質、あるいは動物の毛のように見えます。 ルチルは強い光に当てて拡大鏡で観察しても色が単色で金属光沢を放ちますが、角閃石は強い光をあてて拡大鏡で観察すると色にかなりの斑が見られます。 ヒマラヤ水晶の中では内包物として多く確認されるものですが、角閃石族の何にあたるかは破壊してXRD検査にでもかけない限りはわかりません。 角閃石族は非常に千差万別で面白い世界を創り出してくれます。
 

【アミアント(ビソライト)入り水晶】

ヒマラヤ水晶アミアント上記の角閃石族針金形状内包物入り水晶の中の呼称のひとつ。 実は角閃石は「石綿」なのです。 石綿!? そうです、これが工業利用されるとあの断熱材として話題となったアスベストなのです。 針金形状というよりも、繊毛状・綿毛状と表現するのが近いといえます。 ドイツの鉱物専門書や英文著書・サイトを見ると、amiant(もしくは英名ビソライト)と一括されていることが多く、やはり白から灰色(銀色)の非常に繊細で綿状の内包物のことを指して呼んでいる事が多いです。 アミアントもアルパインベインの変成岩中に産出することが多く、緑泥石や緑閃石と一緒に内包されることも稀ではありません。 非常に繊細で有機質なアミアントは優しさと力強さを兼ね備えるペガサスの毛並みを連想させます。 その為、スパイキーでは天馬または天馬水晶(S造語)と呼ぶことがあります。

【角閃石入り水晶と無色緑閃石入り水晶】

ヒマラヤ水晶透角閃石・トレモライト上記アクチノライト水晶と天馬水晶(アミアント入り)の中間に位置する内包物として敢えて分化しております。 ダディン地区ガネーシュヒマールのラパ地域のタンボール?(正式な名前不明)鉱山に非常に良質かつ興味深い針金形状内包物入り水晶を産出する鉱山があります。 その鉱山から来る水晶に入っている内包物は、かなり太い針金形状で、ときにススキ色からファイバーのような半透明のものもあります。 更にはアクチノライトの緑色とススキ色、透明色がひとつの針に同時に見られることもあり、まさにアクチノライトの緑色が色抜きされたかのようなのです。 同じ角閃石族ではありますが、繊毛状アミアントとは明らかに形状や色に違いがあります。 ドイツの鉱物専門書でColorless Actinolite、つまり無色緑閃石という言葉を見つけました(ヒマラヤ水晶に対しての解説ではありませんでしたが) まさにこの内包物を形容するのにぴったりの呼称だと思い、スパイキーでは無色緑閃石(S造語)と呼ぶことにしております。 無色の角閃石はTremolite(トレモライト透閃石)とも呼ばれます。 スパイキーパサルの呼び名分類では、「アミアント・ビソライト=細い、角閃石・カラーレスアクチノライト=太い」と考えて下さい。
 

【エンジェルヘアー・ビーナスヘアー】

ヒマラヤ水晶エンジェルヘアーエンジェルヘアービーナスヘアーという呼称は、一般的には繊細な金ルチルと銀ルチルが混合しているものを指すようです。 しかし角閃石族の針金形状・繊毛形状内包物にも非常に繊細で、まさに天使の髪の毛か、はたまたビーナスの髪の毛を連想させるほど妖艶で美しいものがございます。 もともとはルチルの美しさを表現するための呼称なのかもしれませんが、スパイキーパサルでは角閃石族の美しい毛状繊細内包物にも呼称として使っております。

【ヘマタイト内包(貫入)水晶】

ヒマラヤ水晶ヘマタイト和名赤鉄鉱のとおり、鉄(Fe)を主成分とする酸化鉄系鉱物です。 板状または層状で結晶しますが、水晶愛好家にとっては水晶に付着・内包する姿が最もなじみ深いかもしれません。 ヘマタイトの酸化状態により、水晶を綺麗な赤色やオレンジ色に染め上げることもありますが、通常は少し赤褐色を帯びた金属光沢のある黒色です。 水晶内部に点状に美しく散在したもの、大きな一枚の板状ヘマタイトがガツンと貫入してるもの、水晶表面に大量に付着しているもの等、その内包・付着形状は様々です。 ヘマタイトの付着や内包はヒマラヤ全域で確認できますが、素晴らしい貫入や内包・付着が見られるものの多くはガネーシュヒマール山のラパ地域とティプリン地域からきます。 特にティプリンのものにはヘマタイトによるファントム等の驚くほど美しいものが存在します。

【トルマリン入り水晶】

ヒマラヤ水晶トルマリン入り水晶トルマリン(和名電気石)が水晶に付着・貫入・内包されるケースも珍しいことではありません。 多くの場合は、ショールと呼ばれる不透明な黒色のトルマリンですが、非常に稀にピンク色のトルマリンやバイカラートルマリンが内包されることもあるようです(ヒマラヤにおいては確認しておりません)  ブルールチルという誤称で通っているインディゴライトクォーツもルチルでは無くブルーの色をしたトルマリンです(ヒマラヤでは産出しませんが) ガネーシュヒマール山のラパの地域においては、針金形状のトルマリンが内包される水晶が産出し、タプレジュン地区カンチェンジュンガ山のロダンタールやイカブ地域においては、主に水晶に付着している形状で産出します(※スパイキーパサルが調査しました) 水晶がトルマリンを内包する状況は、主にペグマタイト中で起こりますが、例外として細身の針金形状のトルマリンの内包がアルペンベインタイプの鉱脈でも見つかることがわかっています。 以上から推測すると、ガネーシュのトルマリン入りはアルパインベインタイプの鉱脈から、カンチェンのトルマリン付着はペグマタイト中から採掘されたということが分かります。 

【モスコバイト(白雲母)入り水晶】

ヒマラヤ水晶白雲母・モスコバイトヒマラヤ水晶に内包・貫入・付着する鉱物の一つで、モスコバイト(Moscovite)と呼ばれることもしばしば。 自形結晶すると、ひらひらとした8面体鱗状・葉片状を成します。 へき開が一方向に完全であるため、層状になった雲母は手で一枚一枚剥がせるという変わった特性を持ちます。 そう、学生のころ理科の実験で使った雲母はまさにこの雲母なのです。 白雲母は熱や電気を伝えにくい鉱物ですので、絶縁体として使われます。 水晶よりも先に白雲母が生成して、水晶に取り込まれた場合(もしくは付着した場合)、8面体鱗状の形をそのまま残して内包・付着します。
 

【つらら入り水晶】

ヒマラヤ水晶つらら入り水晶の面から内側に向かってしゅっと白いツララ状の内包物が見られるもの。 まさに冬場の軒先を思わせるツララの形状ですので、つらら入り水晶(S造語)と名付けました。 つららはポイント付近に生えることも多く、面と面に反射して沢山の幻影つららが見えるものもあります。 このつららの正体は、上記マイカ(モスコバイト)だと思われます。 上記の白雲母が、水晶と同時に生成しながら内部に取り込まれてゆくと(同生インクルージョン)この様な形状になると思われます。 白雲母のインクルージョン形状はつらら状のみに留まらず、チョークのように特大なものが内包されることがあれば、放射線状に内包されることもあり、雲状にもくもくと内包されることもございます。 

【バイオタイト(黒雲母)入り水晶】

ヒマラヤ水晶バイオタイト褐色のセロファンのような形状を持つ不思議な内包物ですが、これも雲母の一種で黒雲母(バイオタイトまたはビオタイト)と呼ばれます。 ※厳密には黒雲母とは厳密な種ではなく、鉄雲母と金雲母の中間種であり、鉄(Fe)とマグネシウム(Mg)を含んでおります。 上記白雲母と同様に8面体鱗状・葉片状に結晶しますが、大きな違いは鉄分を多く含んでいるため黒色であるということです。 水晶と同時に生成しながら同生インクルージョンとして内包されると、美しいセロファンのような形状となります。 見様によってはワカメのような姿ですが、非常に美しく神秘的な内包物の一つだと言えるでしょう。 水晶よりも先に生成し、初生インクルージョンとして取り込まれると(または付着すると)、黒色で8面体鱗状の姿で内包・付着します。 透明度高いの水晶に内包されている事が多く、最近ではガネーシュヒマール山ティプリン地域で多く産出しております。 タプレジュン地区カンチェンジュンガ山の一部地域からの産出も聞いたことがありますが、定かではありません。 ※只今スパイキーが調査中です。

【プロゴバイト(金雲母)入り水晶】

ヒマラヤ水晶プロゴバイト雲母グループの一種で、字の如く金色の雲母。 金色はマグネシウムの含有によるものです。 雲母としての特徴は他の雲母と同様で、8面体鱗状・葉片状に結晶します。 こちらも水晶に生成されると絶品の美しさを発揮します。 黄金に輝くその様は、地球の神秘、いや宇宙の神秘を目の当たりにしているようです。 その様子からビックバン水晶(S造語)、またはフェニックスの羽(S造語)と呼ぶこともあります。 ヒマラヤ水晶の中でも最も美しく珍しいものと考えております。 ごく稀にガネーシュヒマール山のチョンテンカルカ地域の最高質ミラーの中にプロゴバイト(もしくはバイオタイト)が内包されているものがありますが、これは文句なく最高質のヒマラヤ水晶といえるでしょう。 ※スパイキーパサルが調査しました。

【ガーネット入り水晶】

ヒマラヤ水晶ガーネット入り水晶ガーネットも非常に稀なタイプの内包物です。 ガーネットは通常、岩石内で単体として結晶するため、水溶液中で結晶する水晶に内包されることはほとんどありません。 しかし例外として、高温下のペグマタイト内では水溶液中でもガーネットが生成するため、このように水晶に取り込まれることがあります。 単体結晶のガーネットはダディン地区、サンクワサバ地区、イラム地区でも確認されておりますが(詳しくは他のヒマラヤ系鉱物解説参照)、ガーネットインクルージョンのある水晶は、タプレジュン地区カンチェンジュンガのペグマタイト鉱床(イカブサンサブ地域でアクアマリンやショールトルマリンなどと一緒に産出します)からしか確認されておりません。(※スパイキーが調査した情報です。) 内包されるガーネットはスペサルティンタイプではないかと思われますが、現在調査中です。 大概の場合、ガーネットを内包する水晶の表面はすりガラス状の半透明で、水晶内部が綺麗に見えません(ごく稀に表面が透明なものも産出します) しかし内部は透明なので、ガーネット部分をカボションカットなどにして抜き出すと、とても素晴らしいものが出来上がります。

【チタナイト付着】

ヒマラヤ水晶チタナイトチタン系(Ti)鉱物であり、水晶に付着します。 宝石名としての呼称である「スフェーン」と呼ばれる事もしばしば。 和名を楔石(くさびいし)といいます。 黒砂糖のようなブラウンシュガー色もしくは緑を帯びた黄色で、粒々と細かで尖った結晶なのが特徴です。 多色性が強く黄緑色~褐色ですが、ヒマラヤの多くのものは褐色が強いように思えます。 水晶の表面に付着していることが多く、強く触れると剥離してしまうこともあるで注意が必要です。 自形を保ったまま水晶内部に内包されることもあるようですが、ヒマラヤ産水晶におて確認したチタナイトはほとんどが表面に付着したものです(スパイキーパサルが調査しました) 

【水入り水晶】

ヒマラヤ水晶水入り水晶その名の示す通り、液体を含んだ水晶。 しかし実際にはほとんどの水晶に液体インクルージョンは含まれており、それがあまりに微細であるため肉眼で確認ができないだけなのです。 ここでの水入り水晶とは「水晶に内包された液体が気泡(バブル)が動くことにより、肉眼で確認できる水晶」ということにするのが良いでしょう。 バブルが大きければ大きいほど良しとされ、バブルの動きが良ければよいほど価値も上がる傾向にあります。 肉眼での可視・不可視を問わず、水晶に液体が内包される事は多々あるのですが、稀に石油が内包されることもあり、エンハロイドクォーツなどと呼ばれて貴重なコレクターアイテムとなります(※ヒマラヤにおいては産出がございません) また、高圧下の水晶生成過程においては、通常は気体である二酸化炭素やメタンなども液体として内包されることがあります。 非常に速い成長を見せるスケルタル水晶(骸晶)は水を取り込むことが多く、スケルタル水晶の内部を良く観察すれば、動くバブルが肉眼でも見つけられるかもしれません。 ガネーシュヒマール山・ラパ地域のスケルトン水晶及びアメジスト水晶を産出する鉱山の水晶には水入りが非常に多く見られます。 スパイキーパサルの見解ですが、ヒマラヤには水入り水晶が多くあります。 珍しいと思われがちですが、決して珍しいわけではありません。 しかし何故か現地でも「水入り水晶は高く売れる」という概念が定着しており、村人も業者も必死で内包されている水を探しては高値を付けます。 従ってヒマラヤの水入り水晶は高いです。

【山入り水晶(ファントムクォーツ)】

ヒマラヤ水晶山入りファントムクォーツ水晶内部に錐面の5角形の上辺2辺と平行した山なりの層が見られるもの。 ちょうど山状になるので、和名山入り水晶といいますが、ファントムクォーツという名前のほうが通っているかも知れません。 ファントムとはフランス語でゴーストの意味です。 まるでオバケのようにうっすらと浮かび上がっている様から名付けられたのでしょう。 このファントムを作り出す原因は、水晶の成長過程において一時的に他の鉱物(典型的例はクローライト)が水晶に降り注ぐことにあります。 それが水晶にとっては成長を阻害するものとなり、一時的に成長が中断します。 しかし鉱物の降り注ぎが一時的であるために成長がすぐ再開されます。 すると一時中断した部分に内包物を置き去ることになり、ポイントに平行した「山」が生まれるのです。 これが繰り返されると、層状に連なるファントムとなります。 また、カラーゾーニング(色の境界線)による山もファントムクォーツと考えられます。 上記色による分類に既出のスモーキーファントムクォーツ(バイオスモーキー)が、カラーゾーニングによるファントムの好例といえるでしょう。 また、アメジストファントムも同様のカラーゾーニングによるファントムです。 尚、クローライトタイプのファントム水晶はガネーシュヒマールのラパ地域(恐らくは古い鉱山になります)と最近の新産地であるダウラギリにおいて確認されております。 しかしラパ地域のファントムは濃厚な緑泥石が力強い山を作るのに対し、ダウラギリのファントムはきめの細かいモスグリーンの緑泥がうっすらと層をなす形状のファントムという違いがございます。 ※スパイキーが調査しました。

【水晶貫入水晶】

ヒマラヤ水晶貫入水晶なんと驚き!水晶の中に水晶が入ってしまうタイプです。 水晶の中に水晶、ということで水晶IN水晶(S造語)と呼ぶこともございます。 完全な状態の水晶入り水晶に至っては、内包されている水晶にも見事な6柱面とポイントを持ちます。 水晶の核が近い場所で発生し、同時に成長を開始すると重なり合い、時には片方の内部に入り込む事がございます。 他方の水晶が小さければ、大きな水晶に取り込まれる事になるでしょう。 ガネーシュヒマール山域の緑泥石入り水晶の中に、稀に水晶IN水晶を見つけることがありますが、最近あまり見かけることがないのは何故なのでしょうか(2010年現在)

【砂岩片や泥土の小さな内包物や付着物】

ヒマラヤ水晶内その他細かな内包物造山活動や地殻運動が盛んな地域では、揺れや隆起などによりポケット内(水晶が生成している鉱床穴)の小さな長石片や微細な砂岩・泥土、雲母の燐片などが岩壁から剥がれ落ち、成長過程の水晶に影響を与えることがあります。 これらの微細な片は成長干渉を起こしたり、ファントム層を作り出したりもするのですが、水晶内部に取り込まれて内包物となったり、水晶表面に付着することがあります。 こと造山活動の盛んだったヒマラヤですので、ヒマラヤ水晶に多くの微細でユニーク、そして不明な?内包物が多いのは当然のことと言えますね。 そういった極小の内包物や特定のできない不明の内包物や付着鉱物が見受けられる場合、「黒色の点状内包物」や「黄色い泥状付着物」といった解説を行います。 まだまだ研究が進んでいないヒマラヤ水晶には正体不明の内包物や付着鉱物が

【霧状のもや】

ヒマラヤ水晶霧状のもや内部の液泡やクラック等が棚引く白い「もや」のように見えます。 液泡は内包物ですが、クラックは正確には内包物とは呼べないのかもしれません。 この「もや」が多いと曇りがちな半透明となります。 水晶生成時の外的環境や内的環境が影響を与えますので、もやの要因は多岐にわたります。 透明度が高い水晶ほど、良質だと考えられるのは仕方のないことではありますが、この「もや」は絶妙な量やバランスにより銀河のような小宇宙や天の川を見せてくれます。 スパイキーパサルの解説では基本的に「霧状のもや」という言い方をしております。

【虹入り水晶】

ヒマラヤ水晶虹入りこれも正確には他の鉱物が混入しているわけではありませんので、他の鉱物が内包されている「内包物入り」とは少し異なります。 水晶の内部に見えるの主たる原因は、クラック(内部亀裂層)によるものです。 内部のクラック層が光の屈折を生み、光の反射角度によって虹のプリズムが輝く水晶を虹入り水晶と呼びます。水晶にとって他の鉱物の内包は、大きな衝撃でもあります。 その為、上記に解説してきた針金形状内包物やヘマタイト等の内包物の周辺にはクラックが生じることが多く、結果とし内包物入り水晶には虹が見えやすいという傾向があります。 大きなプリズムを持つもの、小さなプリズムがたくさん見えるもの、扇状のプリズムなど、虹の見え方にも様々ですが、スパイキーパサルでは虹の大きさや輝きの強さにより1光、3光、5光、7光と呼ぶことがございます。

銀細工の解説

スパイキーパサルのヒマラヤ水晶ペンダント
身につけられる喜びと身につけなくてもよいという美学

1999年にペンダント作りを開始してからの想い、「アクセサリーとして身につけることの出来るヒマラヤ水晶を」
ヒマラヤ水晶ペンダントへの強いこだわりは当スパイキーパサルの揺らがない指針なのです。
当店の誇りである原石ペンダントは、ヒマラヤ水晶の原石を生かして加工しております。
サイズの大きなものや形に安定感の無いもの等、実用的にはペンダントとして着けにくいかもしれません。
それでも良いのです。
ヒマラヤ水晶のペンダントとして蒐集・コレクションして頂きたいのです。
ペンダントの形であることが、スパイキーパサルにとっての美学なのです。

スパイキーパサルでは、現地で一本一本水晶を選びます。 数ある水晶の中から厳選するのは大変なのですが、選んでいる最中からすでに各々の水晶にどのような銀加工を施すかというイメージが湧いているほど、当店にとって水晶とペンダント作りは切り離すことが出来ないのです。
厳選された水晶たちを今度は銀加工の工房に持って行くのですが、それぞれの工房や職人には得意不得意がありますので、各々の工房に最も得意とするデザインで注文を出します。 工房へはほとんど毎日通い、銀細工の過程を見守ります。 厳選された水晶一つ一つに技術と愛情をこめてペンダントが出来上がる、この作業をヒマラヤ水晶が世に知られる以前からスパイキーパサルでは続けてまいりました。 最近は似たようなものを見かけることも多くなりました。 しかし経験と想いの詰まったスパイキーのヒマラヤ水晶ペンダントは、「粋」の良さが違うんです!
スパイキーパサルのヒマラヤ水晶ペンダントには様々なデザインがあります。 下記銀細工解説にてそれぞれのデザインや意味を知っていただければ幸いです。

ペンダントの銀細工解説

【フィルグリ(ノーマルデザイン)】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工01
前身であるスパイキーネパールからのお客様には一番見慣れているデザインでしょう。 最もオーソドックスで、最も数の多いデザインです。 線細工の事を英語でfiligree(フィルグリー)というので、デザイン名としております。 線の細いワイヤーで様々な模様やデザインを創り出して銀キャップの土台に溶接した後に、いぶし銀加工(硫黄を使って酸化させる)を行います。 いぶし銀の具合、水晶へのフィット感、水晶に対する銀キャップの大きさのバランス等を考慮して作られます。 シンプルで水晶を邪魔せず、しかしアクセサリーとしても見栄えがするものは、なかなかのセンスと技術が必要です。 原石ペンダントはもちろんのこと、カボションの側面などに使われているのもこのフィルグリデザインです。 尚、カボションを作る際は、いぶし銀加工を行わないこともございます。 その場合は白銀フィルグリと表記しております。

【ナーガデザイン】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工02 ナーガとはヒンドゥー教の様々な神話でも登場するヘビ神のことです。 不死と生命力を司る神様ですが、現在のインド・ネパールでは水辺を守る神様でもあります。 シバ神とも密接な関係にあり、その攻撃力と毒は畏怖の対象にもなります。 また、シンボル学では蛇はカリスマ性と魅力の象徴だとか。 6-7年前に初めて登場してからたちまちの人気デザインとなりましたが、ナーガデザインにはスパイキーのこだわりがたくさん詰まっております。 まずはナーガ作りが一番上手な工房でナーガのみを作ります(一番大切なのは、ナーガの顔!当店のナーガの生気溢れる顔をご覧ください) その後ナーガを水晶に巻くのが上手い職人に持って行って水晶に巻きつけるのです。 この巻き方は、当店直属の銀細工にしかできません。 彼の巻き方は芸術そのものです。 ナーガの巻き方にはその他色々な秘密が詰まっているのですが、ここで企業秘密を書くのは控えておきます。 ナーガデザインの真骨頂はもちろん原石ペンダントです。 最もナーガが活躍するのはダブルポイント水晶です。 ナーガデザインの場合、両方のポイントを壊さずにペンダント加工が可能です。 弱点としてナーガの周辺に接着剤が残ってしまうということがありますが、極力必要のない接着剤は取り除くようにしております。

【バジュラトップ】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工03
ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工04
日本語では金剛杵、またチベットではドルジェと呼ばれている密教の仏具ですが、もともとはヒンドゥ今日の神様であるインドラの武器です。 弘法大師空海が手に持っているのもこの金剛杵です。 同じ密教文化を持つ我々には少し馴染みがあるかもしれませんね。 このバジュラはダイヤモンドのように固いとされ、すべての悪行とカルマ(業)を打ち砕くといわれます。 銀トップでは形がディフォルメされて可愛らしいのですが、力の象徴なのです。 スパイキーパサルのバジュラトップには丸いタイプと三角のタイプがあります。 これも手で作っているために、稀に少し曲がっているものなどもありますが、ご愛嬌ということでご了承ください。 まさにヒマラヤ水晶と現地文化が融合した瞬間!完成したのは2003年でした。 主にフィルグリキャップのトップやカットされた雫型のトップに付けております。

【アンティークデザイン】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工05このアンティーク調の仕上がりがヒマラヤ水晶とも非常に相性が良いデザイン。 しかしこれを作れる細工師が不在となってしまった為、2003年ごろから作れなくなってしまったデザインです。 このデザインの凹凸部分及びにその上にデザインを乗せる細工は、特殊な技術を要する上に時間のかかる作業で、なかなか上手に作れる細工師がおりませんでした。 ようやく2010年に納得のいく工房と技術の高い細工師が見つかったことにより復活を遂げました。 かつてのものより更にパワーアップしております。 技術料が若干高いのですが、それに見合う素晴らしい仕事だと思います。 今後も少しずつ増やす予定のデザインですが、主な用途は原石ペンダントです。

【カーロジャリデザイン】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工14 2011年から登場の新デザイン。 これはジャリ(透かし彫り)を応用したものです。 まずは手で一枚目のプレートに透かし彫りを施し、透かし彫りが出来たプレートを透かし彫りの無いプレートと貼り合わせて完成します。 手先の器用さとセンスを問われるかなり高度なデザイン。 仕上がりは唐草模様(アラベスク)のようで非常に格好良いです。  主にヒマラヤ水晶原石ペンダントに使われるデザインですが、今後の主力と考えているデザインです。

【シルバーx銅デザイン】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工062005年から時々作っているデザイン。 銀細工に銅を融合させたもの。 銅は赤みがある金属のため、シルバーとの2色性が生まれることにより非常にお洒落に見えます。 しかし銅は酸化すると黒っぽくなるという最大の弱点があります。 原石ペンダントにはあまり使わないデザインですが、カボションの側面や、フィルグリワイヤーの一部に銅を使ったりします。

【フラットドラゴン・フラットバジュラ】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工07人気のデザインであり、水晶との相性も抜群です。 フラットドラゴンをキャップに施すと、水晶の貫録と威風堂々感が増すように思えます。 平べったい龍(フラットドラゴン)の細工を、土台の水晶キャップに溶接して仕上がるデザインですので、手間と時間がかかります。 もちろんこのフラットドラゴンもカービング(手彫り)で作っているものですので、龍の細工がが上手な工房で別注して、キャップを作る細工師の工房へ持っていきます。 同様の方法にて平べったい金剛杵(フラットバジュラ)というデザインもございます。 これらフラットドラゴンとフラットバジュラデザインは、細工に負けない大きな水晶や質の良い水晶原石ペンダントにのみ施します。 銀細工料も値段に反映されるため、このペンダントはどれも少し高めになります。

【吊り下げタイプ】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工08ダブルポイント水晶や根元周辺に内包物や見所があり、その部分をキャップで隠したくないときに用いられるデザイン。 昔から稀に作っていたデザインですが、チェーンを使う為に強度に若干の不安が残ります。 しかし近年ではチェーンを太いものに変えたり、接合部分を強化するなどして、かなり強度が改善されております。 鉢巻状の銀プレートを作ってから上記のフラットドラゴンやフラットバジュラを溶接します。 その後、側面からチェーン溶接して吊り下げ式が完成します。 キャップのように水晶を切る必要がないので、原石好きには嬉しいですね。 また、デザインとしてもスタイリッシュで非常に格好良いのです。 しかし身に付けていると水晶が揺れやすいので、何処かにぶつけてしまわぬようご注意ください。

【ダブルナーガデザイン】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工09これも登場で衝撃を与えたデザインでしたが、初登場は2007年でした。 ナーガを2匹水晶に巻きつけるデザインですが、当然のことながらシングルのナーガ以上の技術とセンスを要します。 ダブルナーガも当店直属の細工師のみが上手に巻けるものですが、彼のダブルナーガのデザインを見ると、並はずれたセンスを感じることができるはずです。 ナーガを巻くことに関しては、彼の右に出るものはいないでしょう。 リクエストが多いので、最近は多少数量を増やしておりますが、まずはダブルナーガに負けないほどのレア&存在感のある水晶でなければなりません。 レアな水晶は少ないからこそレアなのであって、それに伴いダブルナーガの制作も決して多くはありません。 シングルのナーガ同様に接着剤が残ったり、身につけるときの安定感に欠けたりという弱点がございますが、ナーガ好きならばひとつは手にしたいデザインです。

【ドラゴントップ】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工10インパクト超特大の秘蔵キャップです。 龍は古来よりパワーの象徴です。 ドラゴン=パワーという考えは古代中国よりチベットを経てネパールに渡ってきたものでしょう。 龍は仏教画(タンカ)の中にも描かれる事がありますし、神仏が龍の上に鎮座することがあるほどです。 天上界にまで昇ることが出来るドラゴンは、象徴学上では上昇志向のシンボルです。 そんなドラゴンが水晶を守るデザインがドラゴントップです。 実はこれ、古い銀屋で見つけたドラゴンの指輪を銀のキャップに巻きつけるようにして加工しているものです。 この指輪は2006年にキャスティング(型)の作り直しに成功しましたので、型押しにより作っているものです。 主に大きくて質の良い原石水晶や丸玉に使われます。 ドラゴンの指輪のみで7-8000円するものです。 その値段が上乗せされてドラゴントップペンダントの価格に反映されていると思って下さい。 迫力・存在感最大級のドラゴントップは太めのシルバーチェーンと合わせるのがお勧めです。

【10年記念特別デザイン イヴモデル】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工16 2010年にスパイキーパサル10周年記念として12本のみ販売した限定デザイン。これは1999年に初めて作ったヒマラヤ水晶ペンダントを復刻したものです。現在はこのデザインは使用しておりませんが、「スパイキーパサル(旧名スパイキーネパール)の名も無かった頃の始まりのペンダントです。 つまりはすべてのはじまり、イヴモデルなのです。 今後の再販予定は今のところございません。

【ジャリ(透かし彫り)】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工11こちらはネパール銀細工の伝統技術の一つで、当店でも多用しているデザインです。 ネパール語で透かし彫りのことをジャリと呼びますので、当店でもそのままジャリと呼んでおります。 このジャリデザインは非常に技術を要するものです。 まずは紙にペンでデザインを描きます。 その後、紙に描いたデザインをシルバーに写し、鉄やすりのようなもので地道に削って透かしを作り出します。 全部手作業なのが本当に驚きですが、ジャリは細工師の技術が如実に表れます。 ジャリを行う細工師はネパールにたくさんおりますが、とにかく細工の繊細さを比べれば一目瞭然でしょう。 当店の細工師はもともと最も繊細さを要求する金の彫金を行う細工師です。 10年間で色々なジャリ細工師に依頼しましたが、現在依頼している細工師が現役最高峰の腕前だと考えております。 技術料の分だけ高くなりますが、当店自信の細工のひとつです。

【ストーンセット】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工12側面にも石が入っているお洒落デザイン。 現状での主な用途はラピスラズリのカボションとターコイズのカボションのみですが、銀細工の側面にも同様の石が入っております。 これはパウダーを溶かして入れ込んだのではなく、この大きさに天然のラピスラズリやターコイズをカットしてセッティングしたものです。 良く見るとモザイク模様のように何個にもブロックが分かれているのがわかると思います。 横から見たときの意外性やお洒落性は抜群です。

【クラウントップ】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工132008年から登場のデザインです。 シンプルながらもちょいお洒落、普段着けでも邪魔にならないデザインとして考案しました。 カボションの台座からちょこっと乗っかったデザインが王冠(クラウン)のようなのでクラウントップと呼んでおります。 主な用途は小さなカボションや小さなスクエアカットです。 どんな石にでも相性く、どんな石と合わせても可愛らしく見せてくれます。 女性向けのデザインとなっております。

【丸玉三日月デザイン】

ヒマラヤ水晶ペンダント銀細工15 2011年登場の新デザイン。 主に丸玉ビーズをペンダントに加工する為のデザインです。 三日月のようなシェイプから三日月デザインと名付けました。 通し穴部分にシルバーの芯を通しておりますので、玉の落下の心配もなく玉はくるくると回転します。 最も好きな表情の部分を前に出して着用しましょう。 ビーズ玉ひとつが立派なペンダントに早変わり。 三日月部分とバチカン部分にも簡単なフィルグリデザインが施されています。 主な用途は丸玉やビーズ穴の通っているものとなります。

ヒマラヤ水晶ペンダントの制作工程

スパイキーパサルのヒマラヤ水晶ペンダントができるまで
すべてが技術の高い職人の手作りというこだわり。

ヒマラヤ水晶原石ペンダント作りは容易ではありません。 ネパールという異国の地で思い通りの仕事をすることは容易ではありません。 これはスパイキーパサルの10年以上に及ぶペンダント作りの集大成です。 真っ先にヒマラヤ水晶をペンダントにしたという自負のある当店の経験が詰まっております。 是非とも当店のペンダントの違いを確かめて下さい。

このコーナーではそんなこだわりヒマラヤ水晶ペンダントの制作工程の一部をご紹介いたします。 2010年に大復活を遂げたアンティークデザインによる銀加工の制作工程をご覧ください。 良いペンダントを仕上げるためのちょっとした秘密がたくさんございますので、一部は非公開ですが、ご贔屓下さる皆様方には知って頂きたいと思い、工程のほとんどを公開する事に致しました。
※ご一緒に銀細工の解説もご覧下さい。 他のデザインもすべて職人の手工芸です。

ヒマラヤ水晶原石ペンダントができるまで(アンティークデザイン編)

【銀を溶かして板状にする】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程01制作するペンダントのおおよその数によって地銀を工房長が銀卸から仕入れます。最近は銀価格の高騰もあり、混ぜ物銀や純度の薄い銀が多く出回っておりますので注意が必要です。購入した銀を超高温で溶かします。 どんどん空気を入れて熱するので非常に熱くなります。溶解した銀を型に入れて冷やすと、長細い板状になります。

【銀板をペンダント用に平たくする】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程02 今度はその板状の銀を何度も圧力機に通し、ペンダントのキャップになるべく薄く滑めされてゆきます。ここまでが下準備、いよいよペンダント作りに取りかかります。尚、原石のキャップに被さる部分はグラインディング機で平らにしております。

【原石にあわせて横面を作る】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程03 充分に平たくなった銀をヒマラヤ水晶原石の形に合わせて曲げてゆきます。天然のものですので、面の大きさもバラバラ…しかし面にぴったり合うように作らなければ上手く仕上がりません。何度も曲げながら微調整を繰り返します。ここで重要なのは水晶の「顔」が正面を向くようにデザインする事です。

【キャップの上部をロウ付けする】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程04水晶面とぴったり合ったら枠組みは完成。次にキャップの上部を接合すべくロウ付けします。余った部分は切り取ってデザイン部分に利用します。

【模様(デザイン)付け】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程05そして模様付けを行います。 ワイヤーを四角くしたり曲げたり丸めたりして、デザインを創り出します。特にアンティークデザインの場合は、次の工程でパウダーを塗し付けるので厚めにワイヤーを作らなければなりません。配置良く、バランスよくデザイン付けを行いますが、ここが細工師のセンスの問われるところです。その後、チェーンを通すバチカン部分をロウ付けします。

【シルバーパウダーを塗す】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程06ワイヤーで模様を溶接した後は、アンティークデザインの特徴的な部分の演出です。予めシルバーを鉄やすりで削って細かなシルバーパウダーを作っておきます。そのパウダーをフラックス(接着液)のついている各面に塗し付けます。

【表面を滑らかにする】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程07パウダーを全体的に塗し終わったら、やすりで表面を綺麗になめしてゆきます。細かな鉄やすりでなめし終わったのがこれ、完成まではあと一息です。

【いぶし銀加工を施す】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程08次にいぶし銀加工を行います。硫黄を薄めた薬剤を湿布することにより、酸化を促して黒くします。これがアンティークデザインの骨董的雰囲気を出すのですが、当店の多くのペンダントデザインにはいぶし銀加工が施されております。このいぶし銀加工が格好良いです。

【研磨する】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程09硫黄薬剤を湿布して黒くなった銀キャップの表面を研磨します。表面を研磨することにより、凸部分はシルバーに磨かれ、凹部分の酸化黒色は残ります。

【キャップの完成】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程10そして出来上がったのがこれ。アンティークデザインはパウダー部分も含めるとかなりの厚みがあります。銀も多く使用するので、原石銀キャップの中では最もコストの掛かるデザインなのです。

【水晶原石と接着する】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程11これを原石にセッティングして完成です! ちなみにキャップの最上部にまで原石が到達しているわけではありません。 石を大きく見せる為、大体キャップの半ば程度までです。 その空洞部分はどうなっているのかと言うと、石の大きさ・形によってそのまま空洞であったり、エヌセルと呼ばれる粘土状の接着剤で埋めていたり、大きなものになると真鍮台座等で囲って固定させております。 もちろんこのエヌセルや真鍮台で重くなった部分は計上されておりません。このようにして銀を重く見せかけて水増し請求するところがございますので注意が必要です。

【皆様の下へ旅立つのを待ちます】

ヒマラヤ水晶ペンダント制作工程12この工程すべてを私自身が監督し、細工師と共に時間をかけてヒマラヤ水晶ペンダントが仕上がります。 その後は梱包され、輸出手続きを済ませ、遥々海を越えて日本へ到着します。 そして皆様の胸で輝く日を待っているのです。 ペンダント制作の裏側を知り、より愛着が湧いて頂けたようならば幸いです。  
ヒマラヤ水晶のペンダントならばスパイキーパサル!といって頂けるその日まで…ペンダント作りは続きます。

スパイキーだけの裏話!? ヒマラヤ水晶コラム集

現地密着型!スパイキーだけの裏話
最近流行のヒマラヤ水晶。 ではヒマラヤ水晶のどこまでをご存知ですか? ここでは12年のキャリアだからこそ知るヒマラヤ水晶の裏話や面白話をご紹介いたします。

【 コラム01 】カットされたヒマラヤ水晶の判別は可能か?

質の良いヒマラヤ水晶ブレスレットが出来るまで02 最近では実店舗のほうに「ヒマラヤ水晶を買った」といってブレスレット等を持ってきて「本物」かどうか、ということを尋ねられることがございますので、こんなお話をご紹介させて頂きます。
透明のヒマラヤ水晶に関してですが、既存のものをヒマラヤンかどうか見分けるのは至難の技といえます。 ヒマラヤ水晶は加工しても独特の軟質な照りが残ります。 表面がテカテカなのではなく内部からの美しさが光ります。 また、ヒマラヤ水晶特有ですが、透明なのに黄色みやピンクみを帯びたほんのり有色に見えるのも特徴です(この特徴は主にガネーシュ産の高温下でゆっくり生成した水晶に現れます) しかし水晶原石自体が違えば、仕上がりも雰囲気も変わってきます。 この「色み」もヒマラヤ水晶判別の心強い手立てというわけではありません。 また、カット工房ではひとつひとつ手で削っている為、大きさや形状も各々若干違います。 ビーズ珠などは、よくみるとサイズもばらばら、形も厳密には○で無かったりします。 ドリル穴周辺に至っては、経験の浅い技師が貫通作業を行うと、剥離だらけであったりします。 ひどい時は30%程度が商材にならない場合もございます(これは我々にはかなり手痛いのですが…) 良くも悪くも、サイズのばらつきやドリル穴周辺の剥離などは、ネパールの技師たちの経験不足を物語っておりますので、少しの判断材料の足しにはなるでしょう。 また、下記で記述するタンブル機によってビーズの通し穴まで研磨されている丸玉は、タンブルにかける際に入れる黄色い研磨剤と鉄分がビーズ穴に残る事がございます。 この工房のものは黄色い研磨剤が残っている事が多く、「黄色い研磨剤」はひとつの有力な判断材料となるとスパイキーでは考えております。

質の良いヒマラヤ水晶ブレスレットが出来るまで03 上記の通り「照りや色み」「削り方」「黄色い研磨剤の残り」などでヒマラヤンと判別できるものもありますが、削る原石によってまちまちですので一概には言えません。 ある程度の判断はつきますが、100%確実な事は言えないというのが実情です。
現地でも自称ヒマラヤ水晶の透明玉が出回っておりますが、その他に自称ヒマラヤ産ローズクォーツスモーキークォーツアメジストのカット加工品(丸玉やカボション、ガネーシュ像等)を確認しております。 緑泥玉や角閃石玉、ドラバイトなどはヒマラヤ水晶の特徴が如実に表れやすいのでいわゆる「自称」や紛い物は少ないといえるでしょう(余談ですが緑泥玉を初めて現地で削ったのも当店です。 最初は業者にもカット工房にも緑泥入りなんて綺麗に出来るわけがない、と反対されたのを覚えております) 現地の市場で容易に手に入るような既存の丸玉等はヒマラヤ水晶とは少し考え難いです。 なぜならば市場に流れるほどネパール産のヒマラヤ水晶のカット加工の生産規模は大きくなく、注文数だけ注文者に流れる仕組みとなっているからです。 他の業者さんにせよ、信頼のおけるところはすべて現地で「買付け」ているのではなく、現地で注文を行っております。
現状で言えることは、信頼の繋がりにしか真雁の拠り所が無いという事です。 皆様の判断で信頼のおける業者を見つけて頂きたく思い、当店もその選択のひとつとなるようならば幸いです。

【 コラム02 】加工工房の規模と釣り合わぬヒマラヤ水晶の絶対数

ヒマラヤ水晶をカットする01 上記「カットされたヒマラヤ水晶の判別は可能か?」に関連して現地密着型のこんなお話を執筆しました。 最近オリジナルブレスレットの制作やパワーストーンブレスレットの流行りで、どこでも見かけるようになった「ヒマラヤ水晶」の丸玉ビーズですが、どうしても腑に落ちない数字がございます。 現地の工房の規模と出回っているヒマラヤ水晶の数が全く釣り合わないのです。 最初に結論から言いますと、現在工房がフル稼働したとしてドリル穴まで研磨されている最高質の丸玉を作った場合、一か月に仕上がる数は2キロ程度です。 8.5mm玉が0.8グラムから1.0グラムですので、数にすると8.5mm玉で2000玉ということになります。 ブレスレット一本を作るのに20玉から25玉を必要とした場合、2000玉で出来るブレスレットの数は100個に満たない事になります。 では日本中に出回るヒマラヤ水晶は何なのでしょうか。
現地に商業規模として運営できるカット工房が出来たのは2003年2004年頃だったと記憶しております。 最初は工場長も含めて3,4人規模だったのが、今では若い技師達9人が従事しております。 それ以前は個人ベースで小規模な機材を持ってファセットカットや丸玉加工、そして彫刻を行っておりました。 そんなカット工房も今では3つ4つに増えたと聞きますが、実際に大規模に稼働して丸玉ビーズを大量に作れるのは当初からの1つの工房のみです(私の知らぬ間に増えていたら申し訳ございません)。 この工房では近年タンブリング機材を入れましたので、丸玉のドリル穴まで研磨することが可能になっております。 タンブル機でドリル穴まで研磨する場合は3つの工程が必要となります。 1つの工程につき、約3日から4日間タンブル機を回したまま放置しなければなりません。 当然のことながらタンブル機に入れることのできる量にも限りがありますので、ドリル穴を研磨したタイプの丸玉を作るには膨大な時間と電気が必要となります。

ヒマラヤ水晶をカットする02 追い打ちをかけるようにカトマンズは深刻な電気不足です。 水力発電が主な電力元であるネパールでは乾季となる冬場は都市機能が麻痺するほどの停電となります。 1月2月頃の停電は一日当たり16時間、11月12月3月4月5月頃でも8時間から12時間の停電となります。 この間はタンブル機もフル稼働できませんので、月あたり1キロに満たない数量の生産となります。 また、冬季には発電機で電力を補わなければならなくなり、余分に動力料を払っているのはご存知でしょうか。 まるで飛行機の燃油代のようですが…これがカトマンズにおけるカット工房の現状です。
この工房は日本のみならず世界的なヒマラヤ水晶のブームもあり、只今(2010年現在)大変混みあっております。 混雑も考慮の上で、タンブリング機にかけた丸玉が月あたり1000~2000個程度しか出来ないのだとしたら、只今世の中に溢れている「ヒマラヤ水晶」の丸玉及びにブレスレットはどこからやってきてるのでしょうか(インド産は除く)。 例えば当店は古くからの仲でもありますので、かなり優遇してもらっておりますが、一か月に200玉程度が仕上がるか仕上がらないかです。 これが絶対数が釣り合わない謎です。

ヒマラヤ水晶をカットする03 【 最高質の丸玉とは? 】
ここで余談になりますが、質のよい透明ヒマラヤ水晶の丸玉ビーズとはどのようなものでしょう? 敢えて当店のものが最高の質であると仮定するのであれば、それは1)透明度が高く霧や気泡、内部クラックが極端に少ない、2)とろみのある照り艶がある、3)表面研磨による輝きの強さ、4)そしてドリル穴の研磨という4点でしょう。 最高質の丸玉は、セカンドクオリティの犠牲(!?)の上に成り立っております。 左の写真が最高質からはじかれたセカンドの玉たちなのです。 これだけ多くの玉たちが最高質から外れて廉価で売りに出されます。 これらセカンドは1)内部に靄やクラックが見られる、2)照りが弱い、3)緑色の研磨剤が多く残っている、4)ドリル穴が研磨されていない等の点が挙げられます。 セカンドクオリティは最高質の月あたりの生産量(1000~2000玉)の中には入っておりません。 ドリル穴研磨もありませんので、仕上がりはドリル穴研磨のものと比べると半分以下の日数で終わります。 お手元のヒマラヤ水晶、本当に最高の質ですか?

【 コラム03 】インド産だらけ?彫刻系のヒマラヤ水晶

上記2つのコラムでカット加工された「ヒマラヤ水晶」の「本物」がいかに数少ないかをお分かり頂けたと思います。 では、もっと数が少なく、本来では売られる事が難しいはずの彫刻系ヒマラヤ水晶に関するお話を一つ致します。 まずは前提として、「インドのヒマラヤから来たヒマラヤ水晶は、ヒマラヤ水晶か」という議論は置いておくことにしましょう。 ここで解説しております彫刻系インドの水晶とは、「インドからすでに既製品として来た水晶」という意味であり、インドのヒマラヤ産なのかそうでないのかはわかりません。 それらインドからやってくる水晶既製品とは主に水晶バジュラやガネーシュ像、ブッタヘッド、クリスタルシンギングボールや大きな丸玉など、比較的大きなものとカービング(彫刻)を施したものの事です。 これらは現地マーケットで公然と「ヒマラヤ水晶」として売られておりますが(もしくはネパールで売られている為、ヒマラヤ水晶だと思いこまれているものです)、私の個人的な私見ではそれらの9割以上がネパールのヒマラヤで採掘され、カトマンズで彫刻されたものではありません。 これらの彫刻水晶の多くは、照りや輝きが弱く、白んでいる水晶が多いうえ、やはりグラム辺りの単価もかなり安いといえます。 また、それらの彫刻は廉価なわりに優れており、良くも悪くもネパールの多くの職人を凌ぐ技術の高さを持っている職人たちに彫刻されたのがわかります。 ※マルカバスターやオムの文字が刻まれたもの、簡単なフラワーカービング(蓮などの花の形をしたもの)、単純なモチーフを描いたものや、簡単なカービングを施したものなどはネパールの工房でも制作しているのを多く確認しておりますが、それらも基本的には受注生産であり、現地市場の店頭にはあまり並びません。

彫刻系ヒマラヤ水晶01 ヒマラヤ水晶ガネーシュ(ガネーシャ)を例にとってみましょう。 まず、ネパールのカット彫刻師はまだ技術が高くないため、ガネーシュ自体がお世辞にも上手とは言い難いのです。 そのクオリティに見合わず高額な技術料を要求してきますので、結果として、あまり上手でないガネーシュでもかなり高額となります。 ネパール産ヒマラヤ水晶でネパールの工房で加工した場合、15グラムと仮定して当店が出す場合になんと3万円を越えてしまいます。 お写真がそれとなりますが、どうでしょう。 まるで良く見るガネーシュとは違いますね(インド版自称ヒマラヤ水晶ガネーシュの写真も数日のうちに追加します) そして上記コラムでも登場した、カトマンズっで唯一商業規模でできるカット工房では、現在ガネーシュをはじめとする手の込んだ彫刻品は稀の受注を除き、ほとんど作っておりません。 それは何故でしょう。 工場長曰く、「結局加工賃が高くなりすぎで売れやしないから辞めた。」とのことなのです。 水晶のバジュラやブッタ像等も然りです。 高額で業者が買い取ったとしても、結果として小売りベースで売れる事がないので、受注も無くなったと考えても良いでしょう。 写真にあるバジュラ(一番右)、これはガネーシュヒマールのヒマラヤ水晶をこの工房で加工したものです。 これを万が一、当店が引き取り、最終的に皆様にお譲りするならば、そのお値段は1万5千円前後になります。 左のバジュラがインドで加工と彫刻をされたバジュラです。 こちらは5−6千円で出せるはずです。 

彫刻系ヒマラヤ水晶02 では、何故ネパールの工賃はそんなに高いのでしょうか。 ヒマラヤ水晶が高値なのは、産出量による希少性等は当然ですが、村人のいわゆる人件費(採掘した対価として彼らが提示する額)が多くを占めているのはあまり知られておりません。 ネパールは世界最貧国のひとつとされ、工賃や人件費が安いと思われがちですが、これが大きな間違いです。 もともと国際競争とは無縁であり、「少しでも安く」という企業努力は皆無といって過言でないお国ですので、工賃や人件費等は自国の基準のみとなります。 物価にもひどい歪みのある国ですから、ある部分では物価は非常に高いと言え、ある部分では物価は非常に安いと言えます。 例えば、カトマンズでは一回の食事で200円程度で定食が食べられると聞いたら、「なんて物価の安い国だ!」と思われるかもしれませんね。 これが違うのです。 現在カトマンズの人々の足となっている100-150cc程度のバイクですが、これは日本円に換算すると15-25万円程度で売られております。 200円で食事ができる国にしては非常に高額なものといえますので物価は高いも考えられますね。 それでも多くの人々がバイクに乗っているのですから、更なる物価の歪みが見えてきます。 この辺りは複雑な国情等も関わってきますから、詳しく書くときりが無くなりますのでまたの機会に…。
話を戻しますが、彫刻を現地工房で施したとして、「高いよ!この程度のものでその値段がしたら、売れやしないよ」とい言っても、競争市場が成立していないので、「しょうがないじゃん、この値段になってしまったのだから」で終わりなのです。 それに比べると世界基準でマーケットを開いているインドは技術も高くて豊富な人材を誇り、競争力をつけているわけですから、廉価でも比較的質の良い水晶彫刻品が出来るのは当然かな、と思います。
しかしここでネパールも負けっぱなしというわけにはいきませんので、ひとつ余談を。 一部の彫刻に長けたカット彫刻師が作る彫刻水晶は、今度は逆にインドのものよりも素晴らしい彫刻であるということです。 これらの彫刻師は仏師や銀細工師と同じ職人が切磋琢磨する地域の人々であることがほとんどです(ちなみに水晶のカット工房にいる職人達の多くは、職業職人ではなく、経営者・工場長のつてで連れてこられた親戚・血縁関係にある人であったり、同族の子であることがほとんどです) 私は彼らの作った迫力と繊細さを兼ね備えた水晶製の仏像も見た事がございますし、石や珊瑚などに仏像や彫刻を施させるととんでもなく精巧なものを作ります。 無論それらは本職の職人たちがつくるものですので、時間も非常に掛かり、市場にもなかなか出るものではありません。 当然お値段の方も飛んでもないですけどね。

【 コラム04 】カット加工による損失とは?

ヒマラヤ水晶カットの損失01 2010年9月仕入れ後の新着祭では ヒマラヤ産サファイアアクアマリンの天珠型カットが大いに話題を呼びました。上記コラムにも記載の通り、カトマンズに天然石カット用の機材を運び込み、本格的なカット工房が出来たのはここ6-7年前の話になります。 それまでは現地の天然石や水晶の先駆者的な業者が数人、自宅に趣味程度に簡易なカット機材を導入し、インドの技術者を雇っていたり、インドの工房で加工を行う程度でした。(例えばその当初のものがゴシュナイトやトルマリン、ルビーサファイアのファセットカット等になります)
ヒマラヤ水晶原石原石ペンダントを売るだけでは限界がございますので、今やスパイキーをはじめヒマラヤ水晶業界においてもカット加工というのは重要性が増すばかりとなっております。
しかしお世辞にもカトマンズの工房のカット技術が向上しているとは言えず、それに輪をかけるように人材の流出(海外への出稼ぎ)が続いております。折角少しは技術が上がったカットのお兄ちゃん達が今回カトマンズに来てみればいないわけです。 「○○(名前)はどこいった?××(名前)はどこ行った?」とオーナーに聞くと「出稼ぎに出ていっちまったよ。」という毎度の答えが返ってくるのです。 技術の無い技師が削るヒマラヤ水晶丸玉なんかは酷いものです。 形はひん曲がっており、ドリル穴はセンターにありません。 挙句の果てにはドリル穴周辺が剥離だらけです。 時には20%程度の玉が使い物にならずに損失となるのです。 今や必須のカット加工は心配の種でもあるのです。 ですので現地滞在中は毎日工房に顔を出して監修するのです。

ヒマラヤ水晶カットの損失02 カット加工を施すと原石の70%が損失になる、とご存知でしょうか。 例えば左上写真の特大サファイア天珠型、これは26グラムの大きな原石から仕上がったのが9グラムです。 最高最強の青いアクアマリンは 82グラムの原石から4つの天珠型、合計26グラムが削れました。 どうでしょう、まさに約30%が商品、70%が損失です。 原石がいびつな形であったりクラックが多くなると、損失は更に大きくなります。 中央写真の原石はバイオタイト入りの原石となりますが、 62グラムの原石からカボションとしてとりだせたのは5つ、合計15グラム分でした。 このケースでは約25%が商品、75%が損失という事になります。 削る形状により損失は変わってきますが、丸い形状(カボション、丸玉、天珠etc.)は大まかにこんなものです。
ヒマラヤ水晶丸玉を作る場合、原石を平たい板状にスライスカットします。 それらにマーカーで8mm、10mm等の正方形を方眼紙状に線引きします。 つまり四角いサイコロをいくつも作るのです。さらにサイコロの角を取り、また角を取りで丸くしてゆきます。そして最終的に回転ブレードで研磨、さらに細かく研磨してゆきます。
角を取った際の「かど」部分はかどが大きければ小さい丸玉や小さいカボション、もしくはさざれとして使うことができます。 しかし研磨されて粉となりゆくものは損失以外の何物でもありません。

ヒマラヤ水晶カットによる損失03 ということで大まかに言うとカットして原石の1/3になるわけですから、カットしたものは原石の3倍以上の売値となる事になります。 例えば100グラムの原石が1000円であった場合、その原石をカットすると約33グラム、それでカット加工費等を加味すると 33グラムのものを1000円以上で売らばければならない計算になります。 あくまでもこれは大げさかつ単純計算であり、現実の大概のケースはこうではありません。まずカットに回す原石はほとんどの場合、ダメージのあるものです。 つまり原石としての価値に乏しく、原石を扱う業者や村人にとっては安くしても売ってしまいたいものなのです。 アクアマリンもそうです。 ダメージがあればいくら色が綺麗でも原石としての価値は著しく下がります。 そのようなものが「ダメージ無し原石」より安いグラム単価で計算され、それがカットされゆくのです。
ということで一概にカットをすると原石の3倍の値段がつく、というわけではないのですが、 カットをすることにより大きな損失が生じ、それら損失も売値の中に入っている ということを念頭に置いて石コレクションをすると良いかと思います。意外と知らない裏側の世界。でもそれを知ると美しい丸玉が大きな犠牲のもとに作られているとわかり更に愛着が湧くのかもしれません。
※上記写真はガーネットの原石を涙型に加工研磨しているところです。

【 コラム05 】ヒマラヤ水晶の「本物」と「偽物」って何だ?~ガラスと合成品と天然水晶の判別~

とにかく「このヒマラヤ水晶は本物ですか?」という質問が多い。 ウェブサイトを訪れるお客様がどのような検索ワードによって辿りついたか、という事はアクセス解析によって確認する事が出来るのですが、「ヒマラヤ水晶 本物」「ヒマラヤ水晶 偽物」という検索によって当サイトに辿りついて下さった方は多いかと思います。 当然の事ではありますが、それほどまでにヒマラヤ水晶が「本物」なのか「偽物」なのか、というのは重要な関心事なのです。 では何が本物で何が偽物だか、よく考えてみればそこから疑問が生じると思いませんか? 水晶の偽物とは何でしょう。 ヒマラヤ水晶の偽物とは何でしょう。 上記コラムやヒマラヤ水晶の解説においても真雁の記載をしておりますが、ここでさらに詳しくわかりやすくまとめてみました。 下記から続く2つのコラムをご覧になってお手元のヒマラヤ水晶がどの「本物」なのか、どの「偽物」なのか確認してみて下さい。

水晶とガラスと合成水晶の違い011)まずはそれがまずはそれが水晶(石英)かそうでないか ~水晶とガラスの違い~
ヒマラヤ水晶云々の前に、まずはそれが水晶かガラスであるか、はたまた樹脂製品やプラスチック製品かどうか、と言う事で水晶が「本物」か「まがい物」かが決まります。 ここでは敢えてプラスチックや樹脂製品へ時間を割くのはやめておきました。 恐らくそれは悩むまでも無く、少しの経験で判断が出来るかと思います。 また、天然の美しい6角柱状の結晶を持つ水晶も判別がつきやすいといえるので、ここでは除外しましょう。 特に水晶の真雁において皆様を悩ませるのがカット加工品。それが「ガラス玉」なのか「水晶玉」なのか、ではないでしょうか。 「この水晶は偽物でした」「偽物を掴まされた」という場合、往々にしてガラス玉の事を指しているかと思います。 ではどうしてそれがガラス玉だとわかりましたか? わかっていたならば騙されませんよね。 実は「ガラス」にも複数ございまして、一般的に「ガラス」という時のガラスはソーダ石灰ガラスといわれるものです。 廉価であると共に、加工性に富み、多用途に使われています。 このガラスは化合物であり、我らが水晶の成分と同じ二酸化ケイ素が約7割、その他に炭酸ナトリウムや炭酸カリウム、炭酸カルシウム、更に数パーセントの酸化マグネシウムや酸化アルミニウムを含みます。 モース硬度も4.5-6となり、衝撃に対して割れやすいのです。 つまりこれは水晶とは似ても似つかぬガラスであり、雁物として販売するには少々お粗末といえるでしょう(丸く削ると緑色を帯びて見えるものも多いです、ラムネの中のガラス玉を思い出して下さい) この「ガラス」を水晶として売り付けられる可能性は低いです。
水晶のまがい物となるべく、厄介なのがガラスの中でも「石英ガラス」です。 ええ、名前に石英が入っているではないですか。 ガラスと水晶の違いを検索していれば「ガラスと石英(水晶)は同じものなのです」なんて解説も見かけますが、水晶に非常に近いガラスは石英ガラスのみです。 このガラス、100%二酸化ケイ素で出来ております。 つまり成分としては天然の水晶(石英)と全く同じわけです。 どのようにして作られたかというと天然の石英や珪砂(石英の粒や屑)を軟化点である1650度の高温に熱して融解し、再度凝固させたものなのです。 石英からできた石英、つまり石英ではないですか。 これが最も「天然水晶(石英)」の偽物となりうる、「石英ガラス」です。

水晶とガラスと合成水晶の違い02ではこの石英ガラスと天然石英、違いは何処になるのでしょうか。 二者の決定的な違い、それは「結晶しているか結晶していないか」という事になります。 左記の解説図をご覧ください。 この図が結晶しているかしていないかの違いになります。 片方(左側)が美しく規則性ある分子配列なのに対し、他方(右側)は分子が無秩序に結合しているのがわかります(※こちらはウィキペディアに記載されていた図を加工して使用させて頂きました。 図が小さくて見難いかもしれませんが申し訳ございません) SiとOに法則性があり規則的な配列をしているのが鉱物である石英、即ち「結晶」であり、不規則な分子配列を持つものが非晶質のガラスなのです。 しかしこれはあくまで分子レベルの話であり、肉眼でこの分子構造が確認できるわけではありません。 
そこで皆様が最も気になる事、判別は可能か?ということですね。 結論から申し上げますと、可能です。 一番信頼できる方法は鑑別所に持っていく事です。 非破壊による分光器および回折X線像検査で100%の確率で水晶(天然石英)かガラスかの判別が可能です。 しかしガラス玉と水晶玉の判別は素人レベルでも行えます。 「ガラス玉と水晶の違い」とでも検索してみて下さい。 髪の毛を使った屈折率(複屈折と単屈折)による判別方法から(皆様が最も知りたいビーズ程度の大きさの物では不可能ですが)、写真屋さんで手に入る偏光版を使った看破方法などが様々なページに記載されていると思います。 
ガラスは「一定の化学組織・秩序配列を有した結晶体である鉱物」ではありません。 ガラス玉は確かに水晶の「偽物」といえるでしょう。

水晶とガラスと合成水晶の違い042)人工的に生成される天然のような水晶~オートクレーブ水晶~
ガラスは水晶の偽物、という記述に関しては異論が無いと思いますが、実はさらに厄介な「ニセモノ」があるのです。 次に紹介する「偽物」は驚くなかれ、自然で起こりうる現象や環境を人工的に創り出して生成した水晶なのです。 水熱法と呼ばれる合成方法は1890年代にイタリアで開発されました(ちなみに現在、人工合成水晶生産に置いて最も優れた技術と生産力を持っているのは我らが国、日本です) 水晶は今や観賞品やアクセサリーの枠を飛び越えて、工業用品や精密機械品に利用されているので、現在では合成水晶は大量生産されているのです。
さて、この人工合成ですが、非常に高温・高圧に保つことのできる鋼鉄製のオートクレーブ(圧力釜のようなもの)内部で水溶液中に結晶を成長させて生成します。 これは地殻内部で鉱物が析出するメカニズムと類似するものであり、非常に精巧な「人工結晶」を作る事ができるわけです。 結晶、つまり上記に登場したガラスではなく「結晶」なのです。 釜の規模や生成する水晶の大きさにもよりますが、人工水晶の生成には数十日から数百日と言われます。 自然界においては数千・数万という単位で成長するわけですから随分と早い成長といえるでしょう。 オートクレーブの原理は比較的単純なものです。 高温高圧に設定された釜の下部で石英の屑が溶液中に溶け始めます。 溶液が低温の上部に達して、上部に取り付けられたタネ板(小さな水晶の結晶)の上で珪酸が析出して結晶化を始め、下からの珪酸の供給が続く限り成長を続けるのです。 ※詳しくは他の専門書等をご覧ください。

水晶とガラスと合成水晶の違い03 では最大の関心事に話を移しましょう。 オートクレーブ水晶は偽物なのか? もはや驚く事ではないかもしれませんが、人工水晶は自然界で生成する状況を疑似して作る為、鑑別に出しても比較すべき値はすべて天然の物と同数値になります。 つまり比重も硬度も屈折率も同じ、X線検査も要を足しません。 だからといって同じものではない。 できれば天然が欲しいと思うのは当然ですよね。 ラベルに「人工」「天然」と書いてあれば問題ないのですが、中には人工を天然として売りたい悪質な業者もあるわけで…。
では人工生成の水晶の看破は不可能なのか? その質問を私が普段からお世話になっている鑑別所の鑑別師さんにも伺って参りました。 まず、肉眼での比較は可能か。 水晶がオートクレーブから出たての物は容易に判別が付きます。 人工の水晶はほとんどが工業用途であり、用途に応じた形で生成され、カットされます。 天然の美しい6角の結晶ではありませんので見た目で判断が付くでしょう。
しかしそのような人工物を「天然」として売る事はほとんどなく、最も気になるのは丸玉やビーズという事になります。 削られたものの肉眼での判断は非常に困難と言わざるをえません。 あくまで判断材料の一部ではありますが、人工の水晶は綺麗すぎる。 鑑別師の方が大きくて美しすぎる水晶は基本的に疑った方が良い、というほどなのです。 天然の水晶はいくら綺麗に見えても内部に微細な霧や靄、インクルージョン、クラックなどが見られます。 肉眼で確認できない場合、拡大鏡で見れば多くの場合、それら小さな天然の要素を発見する事ができるでしょう(※対して人工の水晶はパン屑状のインクルージョンが見られる事がございます) また、人工の水晶タネ板を使う為、タネ板が残ります。 タネ板が見えれば人工水晶ですが、タネ板をわざわざ残して削る事はありませんので、この判別方法は現実的ではありません。 人工の水晶はほとんどの場合、右巻きを使う事が多く、左巻きであれば天然の可能性が高くなります。 しかしこれも素人鑑別では判断は非常に難しいでしょう。 また鑑別師の話によりますと、ペンライトで光を通すと、縦に光の筋が伸びる現象が起こるとの事ですが、特徴的な光の動きを捉えるには経験を要しますし、それだけでの判断とは行かないようです。 
以前はこのように看破も難しかったようですが、最近ではフーリエ変換赤外分光光度計によって人工石か否かの判別を行えるようになったそうです。 これによって赤外光の波長の分布をしらべれば、天然と人工では波長の分布に異なりがみられるのだそうです。 どうしても心配な場合はフーリエ変換赤外分光光度計のある鑑別所に依頼するしかありません。
ということで先の質問、「オートクレーブ水晶は偽物なのか?」に立ち返りますが、端的に言うなれば「偽物」なのです。 鑑別上の鉱物名では「天然クォーツ」と「合成クォーツ」に分けられます(※AGL基準の場合は、鉱物名:合成石、宝石名:水晶となります) 例えば、ダイヤモンド。 「合成ダイヤモンド」であれば、著しく価値は落ちますし、「なんだ、偽物か」となりますね。 人造物はイミテーション(模造品)に分類されるのです。 宝石・天然石に置いてはそれが自然の産物である、ということは非常に重要な事なのです。
水晶の偽物とは何か?というのを長々と記載しましたが、わかりやすく説明できましたでしょうか。 次項コラムでいよいよヒマラヤ水晶の偽物とは何か?に迫ります(次項コラムは2012年11月末頃掲載予定)

合成水晶に関する記述はGIA JAPAN発行の書籍、日独宝石研究所の書籍、及び掘秀道氏の書籍を一部参考にさせて頂きました。 また、鑑別・看破に関する記述は日頃よりお世話になっている鑑別所の鑑別士さんのお話からお借りしております。

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実店舗は芸能人や著名人も多く住む東京都世田谷区の閑静な通りです。
新宿より小田急線各駅停車にて約15分。 豪徳寺駅南口より徒歩5分です。

不特定多数のお客様より、ひとりひとりのお客様を大切に!パサルはそんなコンセプトの上に成り立っております。
お客様が時を忘れて水晶やモノ達と触れ合えるような居心地の良い空間となるよう心がけております。

スパイキーパサル Spikypasal
東京都世田谷区豪徳寺1丁目6-3 スバルハイツ店舗A号室
【TEL】
営業時間:12時~19時 定休日:毎週水曜、第一第三日曜日
※※※不定休もございますので、ご来店前には必ず店舗ページにて店舗カレンダーをご確認ください※※※

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