こだわり天然石解説
ヒマラヤ圏の文化を反映するこだわりの天然石達。
それぞれの物語をスパイキー独自の現地情報を交えながら紹介致します。
【トルコ石(チべタンターコイズ・チベットトルコ石)】
ターコイズは人類との歴史が最も古い石のひとつで、世界四大文明であるエジプト文明、メソポタミア文明、中南米のアステカや中国の殷王朝など、世界各国の古代遺跡でもターコイズをあしらった装飾品が発見されています。 従ってターコイズ採掘の歴史も古く、イランやシナイ半島の鉱山は2000年以上の長きに渡り採掘が続いている場所もあります。
ターコイズと聞くと爽やかなスカイブルーのインディアンジュエリーを思い浮かべる人が多いのではないかと思います。 最も良質とされるスカイブルーのターコイズは、アメリカのアリゾナやネバダ、そしてイランやシナイ半島で採掘がありましたが、現在ではほとんど枯渇状態に陥っております。 この「トルコ石」、実はトルコには産出がありません。 かつてイラン等の中東方面で採れたトルコ石はヨーロッパとアジアの中継地点であるトルコを経由し、遠征中の十字軍によってヨーロッパにもたらされたと言われます。 その為トルコからきた石と認知されるようになりトルコの石、つまりターコイズと呼ばれるようになりました(これには諸説があり、ターコイズがヨーロッパに広まった9世紀ごろは、現イランにある産出の多い鉱脈がトルコ領に属していた為という説もあります)
このターコイズですが、単結晶をなさず(きまった形を持たない隠微晶質といいます)、多くの場合は亀裂や岩石の割れ目などを埋める団塊状で産出します。 化学式は非常に複雑で、水酸化銅アルミニウム燐酸塩CuAl6(PO4)4(OH)8・4H2Oと表されます。 この銅こそが、美しい青色の要因です。 純粋なターコイズほど青色であり、チベットトルコ石のような緑のターコイズは不純物としての鉄の含有によるものです。 不純物が無いものはもちろん良質とされますが、筋状や帯状に広がる黄鉄鉱や褐鉄鉱によって表面に多色性が見られたり、美しい模様が見られるものも好まれます。 褐鉄鉱により蜘蛛の巣のように見える模様は、蜘蛛の巣模様(スパイダーウェブ)と呼ばれ、放射線状に広がる蜘蛛の巣模様は蒐集家に好まれます。 トルコ石は脆い晶質を持つ上に退色を起こす事もありますので、決して強い石とはいえません。 汗や化粧品、強い直射日光には気を付けなければなりませんので直射日光のあたる場所での保管や、汗をかくことが見込まれる際の着用はお控えください。 定期的に柔らかい布などで表面を拭いてあげることが必要です。 また、トルコ石は模倣品の歴史も非常に古く、様々なターコイズ模倣品やエンハンスメント品が出回っております。 油やワックスによる表面のコーティングは可愛いものですが、市場に出回るターコイズの中には練り物(合成品)や、他の石に着色したものが多く存在します。
当店の扱うターコイズは、すべてチベットで愛用されていたアンティークターコイズです(※カボションペンダントに使用しているカボションターコイズはチベット産ですがアンティークではありません) チベットにおいては青色のみならず、深い緑色も好まれる傾向にあります。 チベットでは現ダライラマが輪廻転生でその名を湖面に記したという聖なる湖、ヤムドゥク湖(写真がヤムドゥク湖:筆者撮影)の色をしているとされています。 当店ではそれにちなんで深い緑色のトルコ石を「ヤムドゥクブルー(S造語)」と呼んでいますが、これは当店オリジナルの呼称です。 現地ではトルコ石は戦士を守る護符として、そして財産価値として重宝されてきました。 トルコ石は持ち主に危険が迫ると黒い部分が増えたり、赤茶けた色になって知らせてくれると言われています。 色艶も独特で、古いもの特有のパティーナ(使いこまれたことによって現れる独特の鈍い照り)も見られます。 とにかくひとつひとつが形状も違い、色も違い、表情や模様も違います。 天然らしい表情の豊かさと純朴さ、そして愛情を注がれた事による鈍い照りや独特の摩耗形状などはアンティークのチべタンターコイズならではといえるでしょう。
当店で扱うトルコ石はすべて天然アンティーク良質ものです。 多くのものは200−300年前からネックレス等の装飾品として愛用されてきたものです(すべてにビーズ穴が通っているのはその為です) ★4以上のグレードになると、現地での入手も容易ではなく、万が一見つけたとしても、たちまち足元を見られ高額を請求されるでしょう。 トルコ石は通常グラム単位で取引され、色の良さは当然ですが、古いものほど価値があります。 また、大きなものは希少であり、大きなものほどグラム単価が上がる傾向にあります。 最近では巧妙に作られた中国からの偽アンティークも出回っております。 この偽アンティークは驚くほど巧妙で、パティーナの感じまで忠実に再現されているので、本物の中にひとつ程度が混ざってしまっても見分けるのは困難でしょう。 アンティークターコイズの値段は年々着実に上昇している上、絶対数は常に減少していきます。 最近では★5グレードのターコイズもなかなか手に入れられなくなってしまいました。 無くなってしまえば、もう作ることができないのがアンティーク…もし良いものに出会ったら決断してしまうことをお勧めします。
注)チベットのターコイズ鉱山は東部のDerge、及び西部のNagari-Khorsumにあると言われておりますが、実はその存在は確かなものではありません。 ですので、オールドターコイズも下記で解説する山珊瑚同様に交易品ではないかという声もあります。
【チべタンターコイズ(チベットトルコ石)の当店グレード基準】
☆☆☆☆☆(☆5) | 最も古く使い込まれたトルコ石。 中には300年を超えるものもあり。 使いこまれたことによる摩耗が顕著で、表面には独特の鈍い照りがあり、ビーズ穴は通し紐の摩耗により大きく広がっています。 色は非常に濃い緑色、鮮やかな青色、もしくは模様や色合いに独創的な特徴があるもの。 また、大きいことも重要な条件です。 ビーズ単品である場合、グラム辺り\4200~ |
---|---|
☆☆☆☆(☆4) | ☆5グレードに準ずるもの。 非常に古く、使いこまれによる摩耗も顕著で艶やかな照りや激しい摩耗あとがみられます。 独創的な模様や、人を惹きつける色合いなど、色調も通常のものよりもユニークなもの。 ☆5は滅多に無いため、ほぼこれが最高のグレードです。 |
☆☆☆(☆3) | アンティークの古いものであるが、上位2グレードに比べると使いこまれがやや少ない。 これはパティーナの具合や形状を見ることによって判別出来ます。 色は鮮やかなエメラルドグリーンや鮮やかな緑色が多く、表面の模様が面白いものもあり。 ほとんどがこのグレードですが、これもアンティークの良質であり、市場でも多くは見かけないものです。 |
☆☆(☆2) | 新しいものではあるが、色や模様が非常に美しい天然のターコイズ。 すべてのカボションをこのグレードとしておりますが、☆2グレードは悪いわけではありません。 色や模様を見れば、☆4☆5同等に素晴らしいものが多々あります。 古いという評価基準が無いので、このグレードに置いているだけで、非常に価値のあるものです。 |
☆(☆1) | アンティークではなくアンティーク模倣品や着色のターコイズ。 当店では扱いがございません。 |
※黒星マーク(★)は0.5です。 ☆☆☆★は☆3.5グレードとなり、3グレードと4グレードの中間です。
※グレード基準は当店独自のものであり、他者・他店さんとは異なる表記となっております。
【チベタンオールドコーラル(チベット山珊瑚)】
サンゴってあの珊瑚礁のサンゴ?宝石になるの?と思われる方も多いと思いますが、珊瑚は数千年もの昔から宝飾品として人々に愛されてきました。 珊瑚の装飾品は古代エジプトの遺跡からも発見されており、紀元前のヨーロッパ集落遺跡などからも珊瑚の出土品があったそうです。 日本人との歴史も長く、今でも和装には欠かせない装飾品となっております。 珊瑚は成長するにしたがって枝状に生育していくのですが、その成長に起因して縞や木目模様が表面に形成されます。 その為天然の珊瑚は木目のような模様が見られるのが特徴です。 黒やピンク、白の珊瑚などもありますが、最も価値が高いとされるのは赤い珊瑚です。 同じ赤にも色々な赤があり、原色の赤からオレンジ色を帯びた赤、薄ピンク色や薄紅色など豊かな色調を持ちますが、やはり一番良質とされるのは、原色の燃えるような赤色です。
珊瑚は酸性成分に弱いので、汗を吸収すると退色を起こします。 退色を起こした珊瑚は表面に白い粉が浮き上がったり、色が薄くなります。 しかしまめなお手入れを怠らなければ、退色する事もありません。 スポーツや炊事の際は外していただき、もし汗がついてしまったと感じたら、柔らかい布などで表面を吹いてあげるだけで大丈夫です。 特に長期使用しないときは、綺麗に拭いてから湿気の少ないところに保存してください。 市場に出回る合成サンゴは陶器やプラスチック、着色した骨やゴムなどもございますので注意が必要です。
かつて海の底だったヒマラヤ山中ではその名残として化石化した珊瑚が取れる、そんな伝説も相まって、チベットからの珊瑚は通称「山珊瑚(英語でもTibetan Mountain Coral)」と呼ばれます。 「化石の珊瑚」説は何故か非常に根強く、現地の業者や日本の業者の中にもこれを堂々と謳い文句にしているところもあります。 実際のところ、チベットの山珊瑚は交易品として最も古くは数千年も前に地中海地方からやってきた赤珊瑚なのです。 ローマ帝国時代から数百年に及んで珊瑚の産地である地中海地方からインドに大量に持ち込まれたものがチベットに辿り着いたものです。 特に多くはクシャン朝時代(前1世紀頃)にローマ帝国から当時クシャン朝の領土であったインド北部に交易品としてやってきました。 当時インドの豪族たちは、珊瑚を珍しいものとして挙って買い求めました。 インドとの交易や文化交流が盛んなチベットにも珊瑚が流れ、チベットでも希少品として重宝されるようになったのです。 チベット密教の勃興後、珊瑚は宗教上も重要な位置づけをされるようになり、珊瑚の需要は益々拡大しました。 紀元後100年から700年の間にはシルクロードがヒマラヤ圏にまで拡大し、珊瑚は直接チベットでも交易されるようになりました。 チベットでも赤い珊瑚は非常に人気で、かつては金と同等に取引がされるほどだったそうです。 チベット密教のラマ僧にとっては珊瑚のマラ(お数珠)を持つことはステータスでもありますし、チベット人にとって大きな珊瑚等はその家の権威を示すものでした。 また、珊瑚にも護符の効果があるとされ、魔や悪いもの(病気や怪我も含む)を遠ざけると信じられておりました。
その後の話になりますが、1959年のチベット動乱により、多くのチベット人が国を追われて難民となりました。 チベット人が向かった先、それはネパールのカトマンズだったのです。 その後カトマンズは亡命チベット人の聖地となり、それと共にチベットのビーズ類(トルコ石や珊瑚、琥珀や天珠等)がカトマンズに流出されるようになったのです。 その為カトマンズは「最良チベット系ビーズの宝庫」となったのですが、現在では価値あるもののほとんどが海外蒐集家へ流出しており、宝庫はすっかり廃れてしまいました。 今でもチベット人は珊瑚やトルコ石を財産価値と考えて身に着けていますし、ネパールに住むチベット系山岳民族の間でも未だに人気の高いものです。 現在では多くの赤い珊瑚は台湾や香港からやってきていますが、これらはアンティークではありません。 アンティークコーラルは非常に価値があり、古さと色合い(赤いほど良い)と大きさと形が価値の基準となっています。 特に大きいものは非常に手に入りにくく、一粒辺りが大きなものは数十万円単位で取引されるほどです。 年々価格が上昇しているのは、アンティークターコイズと同様であり、絶対数は減る一方です。
【ターコイズIN珊瑚】
ターコイズIN珊瑚は、珊瑚の虫食い部分にターコイズがはめ込まれている山珊瑚の当店オリジナル呼称(S造語)です。 こちらは絶対数が圧倒的に少なく、通常の珊瑚とは価値基準もグレード基準も違います。 特に良質なものになると、コレクションすべき希少品と言えるほど希有なものです。 厳密な年代の特定は難しいのですが、多くのターコイズIN珊瑚が作られたのは、150−200年ほど前とされます。 その時期の流行りというのもあったと推測されます。 トルコ石を虫食いのサイズにぴったり合わせるのは相当困難なことと思われますが、非常に精巧に作られており、樹脂などの天然粘着成分ではめ込まれています。 通常の珊瑚同様に大きなもの、色の濃いもの、艶の良いものが良質にされつのに加え、トルコ石の分布やはめ込みの精巧さも価値基準のひとつとなります。 ※交易に関する解説の一部はLouis S. Dubin氏の英字文献The History of Beadsを参照及び和訳させて頂いております。
【チべタンコーラル(チベット山珊瑚)の当店グレード基準】
☆☆☆☆☆(☆5) | 最も古く使い込まれた珊瑚。 年代を定かにすることは不可能ですが、最も古いものは千年を超えるものもあるとされるが、マラとして残っているものの多くは500-300年ほど前に使用されていたものと推測されます。 原色の赤色であり、深みさえもある非常に濃い赤色。 表面にはパティーナが顕著で、鈍い光沢と照りがある。 丸い樽型が理想的であるが、形が整っていて表面に虫食いなどの傷が無いことも重要です。 また大きなものほど希少であるため、☆5は大きなこと(少なくとも10グラム程度)も基準としております。 このグレードは入手超困難かつ、尋常でないお値段になります。 当店では仕入れられないわけでなないので、興味がある方はご連絡ください。 |
---|---|
☆☆☆☆(☆4) | 赤色、または赤に近いオレンジ色。 見た目が美しい色調であれば、必ずしも赤である必要はありません。 使いこまれた珊瑚特有の鈍い照りや光沢、そして摩耗形状を持つもの。 表面には虫食いや傷がなく、柔らかい曲線を持つ整った形が理想的。 |
☆☆☆(☆3) | オレンジ色や美しいサーモンピンク、乳白を帯びた紅色など色が美しいもの。 表面や形状が整っていれば理想的ですが、☆4に比べると表面の虫食いや欠けなどが増える。 表面には艶やかな照りがあり、摩耗あとも見られる。 ☆3グレードの珊瑚でもかなり上質だと言えます。 |
☆☆(☆2) | 上記☆3グレードのものとほとんど変わりませんが、小粒なものになります。 若干パティーナが弱く、虫食いが目立つものもありますが、日本では虫食いを良しとする場合もあります。 |
☆(☆1) | アンティークではなくアンティーク模倣品や着色の珊瑚。 当店では扱いがございません。 |
※黒星マーク(★)は0.5です。 ☆☆☆★は☆3.5グレードとなり、3グレードと4グレードの中間です。
※グレード基準は当店独自のものであり、他者・他店さんとは異なる表記となっております。
【チベット琥珀(オールドアンバー)】
チベットではトルコ石や珊瑚と並んで人気の琥珀。 トルコ石は空と水、風を表し、珊瑚の赤色は火、そして琥珀は大地の象徴とされています。 チベット仏教では世界を構成する要素を地・水・火・風・空の5つとしておりますので、これら3種の神器とも言うべき3つの石は自身と世界の真理を繋ぐものとして重宝されてきました。 また災いから身を守る御守として、または富や地位を顕示する象徴物として今でもチベット人やヒマラヤ山岳民族には欠かせないものとなっております。 さて、その琥珀ですが世界的にも人気があり、宝石としての認知も高い石です。 いえ、厳密には石ではなく、木の樹脂が3000万年以上も掛けて(諸説あり)化石化したものです。 その為、琥珀の中には昆虫や植物が取り込まれる事があります。 これらは何千何万年前に、琥珀の樹脂に粘着性があった頃に取り込まれたものになりますので、研究者にとってはまさに「タイムカプセル」のように重宝されるものです。 もちろん重宝するのは学者や研究者だけでなく、宝石コレクターも虫入り琥珀として蒐集品の対象としております。 しかし面白い事に多くの琥珀は木々の生い茂る山中で見つかるのではなく、海近くの河口周辺や河口近くの地層から発見されます。 ※山の中で見つかる琥珀はピットアンバー(山琥珀と呼ばれます)樹脂を残した木はやがて倒れ、地中に埋もれます。 地質的年月を経て、その地層は造山活動等で崩壊して海に達します。 そして琥珀はそこから洗い出されて漂流し、辿りついた場所で見つかることもあれば、海岸や地層で堆積するのです。 またあるものはそのまま海底に堆積し、やがては地殻活動で隆起した地層から見つかるのです。 まさに学生時代に習った地球の地殻活動が琥珀にも反映されているわけです。 チベットの琥珀の話に戻りますが、この琥珀もTibetan Mountain Amber(チベット山琥珀)などと呼ばれ、「チベット産」であるかのような表記があることがあります。 山珊瑚の誤った解説然り、これらの琥珀はチベットの山中で採掘されたものではなく、ほとんどがバルト海沿岸地域やミャンマーからやってきた交易品なのです。 今でもバルト海沿岸は琥珀の一大産地として世界的に有名ですが、ここの琥珀は上記の解説のようなシーアンバー(Sea Amber)です。 残念ながら山で採掘されるピットアンバーでもございません。
前記の通り、琥珀もターコイズや珊瑚同様にチベットでは多大な人気を誇ります。 早くは紀元前2世紀のローマ時代にはシルクロード交易を通じて琥珀がチベットに入ってきたという記録があるようですが、最も交易が栄えたのはシルクロードがヒマラヤ地域にまで達した4世紀頃だと言われます。 一般的にアクセサリーとして琥珀が普及するのはそれ以降の事となります。 8世紀にチベットが仏教化されてから、仏教的要素を取り込むようにしてトルコ石や珊瑚と共に琥珀も浸透していったのでしょう。 当店の扱う琥珀は、「チベットで愛用されていた古い琥珀」になります。 最も古くは1000年を越す琥珀もあるかもしれませんが、厳密な年代を特定することは困難を極めます。 多くのものが500年から200年程度と推測できますが、正確にはわかりませんのでご了承下さい。 チベットやヒマラヤ山岳民族での人気を尻目に日本ではトルコ石や珊瑚に比べて今一つ認知が足りません。 現地においては3種の神器中最も手に入れ難いと言っても過言ではないでしょう。 グラム辺りの単価も非常に高額となります。 只今市場に出回っているものの8割方はチベットで使われていたアンティークではなく、新しいものとなります。新しいものを古加工してそれらしくしているものもありますが、コーパルや加工品が流通しているのも事実です。 見分けるポイントとしては、ターコイズや珊瑚同様に古いもの特有の鈍い照りや摩耗痕になりますが、最も大切なのはやはり「信用」による取引です。
【チベット琥珀(オールドアンバー)のグレード表記】
チベット琥珀に関しては当店ではグレード表記を設けておりません。 その理由として質の良悪の差が少ない為、グレード優劣が付けにくいという事と流通量が少ない為、比較の基準を見いだせないという事です。 しかし一般的に良い古琥珀として、パティーナ(鈍い照り)が見られると共に形が滑らかである事、摩耗痕がある事、色が鮮やか(またはユニーク)である事等が挙げられます。 もちろん透明感・透過性のあるアンバーは非常に高額となりますが、市場に現存するオールドアンバーにそのような超高質ものは存在し難いとみております。 往々にして透明度の無いイエローからオレンジ色に掛かる色のものとなります。 また、チベットオールドアンバーにおいて虫入りも今までの所確認しておりません。 各々の質の違いを見るときは、値段をグラム数で割ってグラム辺りの単価で判断して下さい。 |
【ラピスラズリ(瑠璃石)】
水晶と並ぶほど有名で人気のラピスラズリ。 遥か昔より人々を魅了し、装飾品として愛されてきたこの青い石ですが、最も古くは紀元前4世紀のシュメール文明であるウル遺跡ですでに交易品として採掘していたのがわかっています。 古代エジプトやメソポタミア、古代ローマでも装飾品として愛用され、人々を彩ってきました。 実はこのラピスラズリとう名前は通称にすぎず、「ラピスラズリ」という単体の鉱物組織は存在しません。 「方ソーダ石グループの鉱物を主成分とする岩石で、複数の鉱物の混合物(青金石・方ソーダ石・藍方石・黝方石・方解石・黄鉄鉱等)」をラピスラズリと呼びます。 つまりラピスラズリは鉱物の名前ではなく、複数の鉱物の混合体である岩石に付けられた宝石名なのです。 ラピスラズリの主成分である青金石は岩石ではなく鉱物です。 ややこしいですね。
ラピスラズリはスカルン(結晶質石灰岩)中に産出し、世界に出回るほとんどのラピスはアフガニスタンで採掘されているものです。 驚くべきことにバダクシャン(Badakhshan)地区のラピス鉱床は6000年もの長きに渡りラピスラズリを産出しています。 ごく少量がアメリカ、シベリアやミャンマーでも確認されておりますが、最高質のラピスラズリは依然としてアフガニスタン産といえます。 古くから採掘が確認されているチリ・Ovalle地域のラピスが唯一、アフガンラピスと競合しうるクオリティを持つと言われていますが、産出量はアフガニスタンには及びません。 最高質のラピスは深みのある神秘的な藍色に少量の黄鉄鉱と方解石が星屑のような情景を創り出しているものです(しかし方解石が強すぎて白い亀裂が見られるのは好まれません)。 それはまるで宇宙に浮かぶ天の川のようでもあります。
近年になって産出が減少しているという噂を聞きますが、情報の真相は定かではありません。 市場にはパウダーで作った練り物も多く、鮮やかすぎるブルーや不自然な金粉は練り物の場合が多いといえます。 ラピスラズリは硬度5.5ですので、決して強い石ではありません。 固い金属などと触れ合っているとスクラッチ傷ができますのでご注意ください。 また、酸性成分にも弱いので、汗や化粧品などはなるべく避け、ついてしまった時は柔らかい布で拭いてあげるようにしましょう。
現地ネパールやヒマラヤ文化圏でもラピスラズリの装飾品は見られますが、ターコイズや珊瑚ほど需要が強いわけではありません。 アンティークなラピスほど価値がある、という話もあまり聞きません。 また、カトマンズにおいては良質アフガニスタン産ラピスラズリが減少傾向にあり、入手困難になっています。 これはアフガニスタン商人がラピスラズリを持ってこなくなったことによるものですが(2008年以来)、天然石の市場がバンコクや香港に移りつつある為です。 かわってジャイプールで削ったラピスラズリが多く流入してくるようになり、こちらは廉価なのですが若干色みが着色のように思えますので現在調査中です(当サイトでは取り扱っておりません) 余談ですが、ヨーロッパルネッサンスの絵画の美しい青色はラピスラズリを削って溶かした岩絵の具によるものなのです。 同様にネパール・チベットでもタンカと呼ばれる仏画に使用している青色はラピスラズリによるものです。
【アフガニスタン産ラピスラズリの当店グレード基準】
☆☆☆☆☆(☆5) | 最高質のアフガニスタン産ラピスラズリ。 神秘的な深い藍色は少し紫色を帯びています。 程よく黄鉄鉱による星屑模様が見られ、うっすらと方解石による天の川が見られる。 但し方解石が多すぎて断層や白みが強いのは良くありません。 本当に☆5と呼べる最高ラピスは実は滅多にありません。 最高によく見えるものも☆4グレードがほとんどで、未だ☆5グレードのラピスラズリはオンラインショップに掲載したことがありません。 |
---|---|
☆☆☆☆(☆4) | ☆5に準ずるグレード。 神秘的な深い藍色は紫を帯びているような宇宙色です。 黄鉄鉱が綺麗に散りばめられ、 夜空に浮かぶ星屑の情景を創り出します。 方解石の白色も程よく見られます。 手に入るラピスではこのグレードがほぼ最高となります。 当店では宇宙ラピスと呼ぶこともあります。 |
☆☆☆(☆3) | ☆4に一歩至らないグレードのラピスですが、これでも十分すぎるほど質のよいラピスです。 上位2グレードと比べると若干青みが強かったり(藍よりも青を好む方もいます)、黄鉄鉱の星屑が少なかったり、表面の艶やかさが少し薄かったりという理由で☆3としております。 |
☆☆(☆2) | 随分と色が青に近くなり、藍や紫色は感じられない。 黄鉄鉱もほとんど見られず、方解石部分が多いこともあり。 スパイキーパサルでは取り扱いがございません。 |
☆(☆1) | 練りものや着色玉など。 スパイキーパサルでは取り扱いがありません。 |
※黒星マーク(★)は0.5です。 ☆☆☆★は☆3.5グレードとなり、3グレードと4グレードの中間です。
※グレード基準は当店独自のものであり、他者・他店さんとは異なる表記となっております。