水晶用語・色分類編
アイウエオ順ではありません。上の記述と下の記述が連携するように考えて並べております。
【ミルキー(内包物による)】
その名の通り淡い乳白色の水晶。 乳白色であれば「ミルキークォーツ」と呼ばれますので、定義としてはかなり曖昧です。 この乳白色を作り出すのは様々なインクルージョンです。 霧状の靄や液泡がうっすらとミルキーカラーを作り出すこともあれば、ルチルや角閃石などの他の鉱物が溶けるようにして半透明なミルキーカラーを作ることもあります。 他の鉱物によるミルキーの場合は、水晶を太陽にかざすと、繊維質の繊細な内包物が無数に確認できるはずです。 |
【すりガラスミルキー】
敢えて上記内包物タイプのミルキークォーツと分けました。 上記内包物ミルキーと似たような色合いなのですが、こちらはすりガラスのような不透明な表面がミルキーカラーを作り出しております。 内包物による乳白色でなく、表面の不透明・半透明による乳白色です。 表面がすりガラス状になる原因は、先に成長していた水晶の周りに存在していた白い鉱物や泥土が表面に付着したものだと考えられます。 その為、多くのすりガラス状ミルキーは表面だけが半透明で内部は純度の高い透明です。 |
【スモーキークォーツ(煙水晶)】
スモーキークォーツと一言に呼称しても、淡い茶色から黒に近い色のもの、赤味を帯びた茶色から黄色っぽい茶色まで、その色みは様々になります。 日本名では煙水晶と言います。 天然の放射線を浴びることにより、水晶元素のケイ素(S)がアルミニウム(Al)に変換され、その後水晶構造格子の+と−イオンのアンバランスがカラーセンターを生み出すという複雑な化学的プロセスがあります。 天然の放射線がアルミニウムイオンの変換の原因となりますので、水晶が放射線を浴びる環境にあるということがスモーキークォーツを生み出す必須条件となります。 スモーキーカラーへの変容は水晶が放射線を浴びた後、数百万年の単位で50度以下の環境に留まっていなければなりません。 つまりスモーキーカラーに色づくのは水晶が生成してから随分と後になってからなのです。 スモーキーカラーは人工的な放射線照射によっても色づけることができますので、市場に出回るスモーキーは人工的照射である場合も多いです。 残念なことに現在の鑑別技術ではその色が天然ものか人工的な処理なのかを見分ける事はできません。 余談ですが、スモーキークォーツは放射線に晒されたので危険なのか?という質問を良く受けます。 スモーキークォーツ自体は放射線を発しておらず、放射線に晒される環境にあっただけです(花崗岩等は天然の放射性物質を含みます) ですのでスモーキークォーツは危険ではありません。 我々がレントゲンを撮る時に放射線を受けますが、我々がその後放射線を発する訳ではないのと同じ事です。 |
【ライトスモーキー】
同じスモーキークォーツの中でもやや色味が薄いものをライトスモーキー(S造語)と呼んでおります。 ライトスモーキーの中には本当にうっすらとべっ甲飴のように優しい色のものがあり、中には透明と比較するとようやく色づいているのがわかるようなスモーキーもあります。 稀にうっすらスモーキーの色づきと共にミラー水晶級の照りを持つものがあり、そういった水晶は絶品の美しさを持ちます。 ライトスモーキーの多くはダディン地区(ガネーシュヒマール)近郊のゴルカやラスワで産出します。 |
【ダークスモーキー】
こんな黒いのみたことがない!というくらい黒い水晶をダークスモーキー(S造語)と呼んでおります。 上記解説の通り、放射線を受けてケイ素(S)がアルミニウム(Al)に換置した水晶が長い年月をかけて50度以下の環境に置かれた為、最大限に黒く色づいたものです。 ※山岳で産出するすスモーキーに関しては標高の高いものほど濃く色づくという研究がございます。 これは標高が高いほど早く地表に近付いたということであり、従ってより早く50度以下に達したからだと考えられております。ダークスモーキーの中には黒すぎて内部が見えないほどのものありますが、色が濃ければ濃いほど崩壊質になり、表面の照艶も鈍くなる傾向があります。 色が濃くて6面すべてが整ったダークスモーキーとなるとかなりのレアものと言えるでしょう。 黒水晶をモリオンと呼ぶことがありますが、モリオンの色づき過程はスモーキークォーツと全く同じものです。 混同されがちですが、モリオンはスモーキーの呼び名の一つに過ぎません。 強いてスモーキーとモリオンに境界線を設けるのであれば「光に翳して透けるか透けないか」といった所でしょうか。 ダークスモーキーをカット加工してカボションや涙型にするとそれはそれは美しいものが出来上がります。 |
【バイオスモーキー(スモーキーファントムクォーツ)】
一般的には色むらが少なく、単色になりがちなスモーキークォーツですがポイント周辺のほうが濃くなる傾向は珍しいことではありません。 また、稀にカラーゾーニング(色の境界線)がファントム形状に確認できるスモーキーも存在します。 これがスモーキーファントムクォーツと呼ばれるものですが、スパイキーではバイオスモーキー(S造語)と呼んでおります。 これは、カラーゾーニングの2色が光の加減により黄色っぽく、紫っぽく、緑っぽく、茶色っぽく…有機的かつ生物的に(まさにバイオ=生物的)千変万化する様に感動して名付けたものです。 バイオスモーキーの原石結晶でダメージの無いものは最大級に稀といえます。 ゴルカ地域で2000年代前半に一度産出があったきりでその後一切新たな産出がございません。 この種のスモーキーもカット加工を施すと驚くほどに神秘的なものができあがります。 |
【ブラッキー水晶】
こちらはスモーキーとは異なる要因で黒っぽく見える水晶です。 ブラッキー水晶(S造語)はスモーキークォーツの様なブラウンではなく、完全に黒(もしくは灰色)です。 ブラッキー水晶は現在調査中で細かなことはよくわかりませんが、黒色は酸化マンガンの付着だと推測されます。 水晶が高温下で先に生成し、ほぼ形作った段階で低温状態に至り、マンガンが生成され、内包・付着したのではないでしょうか。 ヒマラヤ水晶においては比較的稀な水晶でしたが、つい先日(2010年現在)ラパから大量にやってきたのを見ました。その後は数年に至り同じタイプの水晶を見ておりません。 |
【アメジスト(マーブルアメジスト)】
紫色の水晶といえば、アメジストです。 ギリシャ語の「酒に酔わない=a-methy-stos」という言葉が由縁なのは有名な話です。 この紫色は水晶構造格子に鉄イオンが入り込み、上記スモーキークォーツのように放射線を浴びる事により化学的変化を経たものだと考えられます。 一様な色のスモーキーとは対照的に、アメジストは色がむらになるケースが一般的です。 ヒマラヤのアメジストも例外ではなく、紫の色合いに濃淡があり、白から紫までグラデーションになったり、紫色が筋状になっているものもあります。 下記のアメジスト水晶と差異をつけるために、この種のアメジストをマーブルアメジスト(S造語)と呼んでおります。 マーブルアメジストは綺麗にポイント結晶しているものは稀で、ほとんどの場合は塊状で産出します。 その為多くはカット加工に回しますが、丸玉やカボションは神秘的で美しい模様を持つものが仕上がります。 かなり昔から時々カトマンズに届くマーブルアメジストですが、供給も不定期で細かなことまではまだわかりません。 ダディン地区のヒンドゥン地域やダルチュラ地区が産地だったようですが、2000年代後半からは新たな産出やカトマンズへの到着が途絶えてしまい、新たな採掘は聞かれておりません。 余談ですが、アメジストは紫外線で激しく退色しますので、長時間太陽光にさらすのは厳禁です。 白色電球(蛍光灯)も退色の原因となりますから保管・管理には気を付けましょう。 |
【アメジスト水晶】
こちらはポイントを有する結晶で、うっすらとアメジストの紫色やライラック色が確認できるものの呼称としております(S造語) 中には「んん、これは違うんじゃない?」というほど色が薄いものもあります。 同じ鉱脈の同じポケットで採掘されるアメジスト水晶でも、色が濃いもの薄いもの、白んでいるもの、透明度の高いものがあり、肉眼で容易に色が確認できるものは多くはありません。 アメジスト水晶には非常にユニークな形状を持つものも多く、セプター形状でキャップ部分のみがアメジスト色のもの、スケルトンの形状を持つもの、水入り、若干の緑泥石の内包があるものなど様々です。 すべてのアメジスト水晶はダディン地区ガネーシュヒマール山のラパ地域からやってきますが、厳密な鉱山の特定には至っておりません(現在調査中)。 アルパインベインタイプの鉱脈では、このようなうっすらタイプのアメジストや、セプター部分のみが薄アメジストのものが産出することが多いという調査結果があり、ヨーロッパアルプス地方の鉱脈でもヒマラヤのものに非常によく似たものの産出が確認されおります。 鉄を取り込むのはかなり低温になってからですから、水晶生成時の水溶液の温度が低かった(又は途中で低くなった)事が推測されます。 かなり面白い水晶のひとつですが、コレクションの際には強い光にお気を付け下さい。 |
【ヒマラヤ産ローズクオーツ(紅水晶)】
可愛らしいバラ色ピンクの水晶はローズクォーツと呼ばれます。 日本名は紅水晶。 ほのかなピンク色は少量のチタンによるものと考えられておりますが、他の要因でピンク色になるとも指摘され(スモーキーやアメジストと同じ照射によるものという説とインクルージョンによるものという説あり)、実はよくわかっていない水晶の一つです。 ほとんどの場合で半透明の塊状で産出し、美しい錐面・柱面が見られません。 ローズクォーツは非常に高温高圧なペグマタイト中で生成(400-700℃)するため、気体(ガス)から生まれると考えられます。 その為、液体から生成される普通の水晶が柱面・錐面を持つのに対し、ローズは面やポイントを持ちません。 ヒマラヤ産のローズクォーツも例外ではなく、大抵のものは半透明・不透明であり塊状で産出します。 その為、多くのローズクォーツは丸玉ビーズやカボション等にカット加工を施されます。 しかし、質が良いとされるマダガスカル産などに比べると、ヒマラヤ産のものは白濁も激しく色も薄い傾向にあるように思えます。 ヒマラヤ産ローズの価値は「それがヒマラヤ産である」ということのみと言えるでしょう。 おもな産地はチベット国境近くのシンドゥパルショーク地区ですが、現在は全く採掘されておらず、新たな産出もございません。 ※スパイキーパサルが調査しました。 ちなみにローズクォーツはピンク水晶(Pink Quartz)と呼ばれる水晶とは全く別のものです。 |
【クローライト水晶】
クローライト(緑泥石)で水晶が覆われ、ガラス質の透明部分を一切持たない水晶をクローライト水晶(S造語)と呼んでおります。 クローライトChloriteとは、和訳すると「緑泥石」です。 ということはクローライト水晶とは「緑泥石入り水晶」ということになりますが、透明感のある水晶に内包物として緑泥石が入っているものと差異を持たせるために、この名前を使用しております。 クローライトも緑泥も同じものなのですが、当店では透明感ある水晶に内包されているものを「緑泥石入り水晶」と呼び、クローライトに覆われ透明感の無いものをクローライト水晶と呼んでおります。 混同しないようにご注意ください。 これらクローライト水晶は、水晶が高温下で生成したのち、低温下で生成する緑泥石が内包・付着して生まれます。 粘土質の緑泥石層が存在するポケットで生まれます。 クローライト水晶が複雑交差するユニークなグリーンスター水晶はダディン地区ガネーシュヒマール山レー地域で産出しますが、クローライト水晶はダディン地区の全域で産出します。 |