その他ヒマラヤ産天然石解説
ヒマラヤ周辺が実は豊かな鉱物地帯であるということが知られたのは最近です。 近年のヒマラヤ水晶ブームにより、現地でもヒマラヤ水晶・ヒマラヤ産鉱物関連業界が活気付き、様々な影響を与え合いながら市場は急激に拡大しました。 いまや水晶だけでなく、色々な天然石がヒマラヤからやってきています。 しかしながら鉱山のほとんどが自然環境の厳しい高地であり、採掘は困難を極めます。 たとえ埋蔵量が多くても大規模な採掘は不可能と思われ、世界の鉱物地図を塗り替えるほどの産出量にはならないでしょう。
質・クオリティに至っては世界の他の産地のものよりも低いにもかかわらず、ヒマラヤ産というだけで高額である天然石や鉱物も中にはございます。 遥かヒマラヤ山中からやってきたという事実に想いを馳せ、それら希少な天然石をお楽しみ頂ければ幸いです。 また、解説のネパール・ヒマラヤ部分の記述はすべてスパイキーの長年の現地調査や経験に元基づき、オリジナルで執筆したものです。 下記の専門英字文献を除き、他社様、他個人様サイトは一切参考にしておりません。 情報は流動的ですので、今後の新しい情報により記述は随時更新・変更していく予定です。 記述に誤りがある可能性もございますし、あくまで当店独自の解説ということをご理解下さいませ。
その他ヒマラヤ産天然石の解説
【ヒマラヤ産ローズクォーツ】
可愛らしいバラ色ピンクの水晶はローズクォーツと呼ばれます。 日本名は紅水晶。ほのかなピンク色は少量のチタンによるものと考えられておりますが、他の要因でピンク色になるとも指摘され(スモーキーやアメジストと同じ天然照射によるものという説とインクルージョンによるものという説あり)、実はよくわかっていない水晶の一つです。 常に半透明の塊状でペグマタイト中から産出し、面やポイント結晶も見られません。 ローズクォーツは非常に高温で生成(400-700℃)するため、気体(ガス)から生まれると考えられます。 その為、液体から生成される普通の水晶がポイントを持つのに対し、ローズは面やポイントを持ちません。 ちなみにローズクォーツはピンク水晶(Pink Quartz)と呼ばれる水晶とは全く別のものです。 ヒマラヤ産のローズクォーツも例外ではなく、大抵のものは白濁し、曇りやクラックもがあったりします。 当店では、ほとんどの場合、丸玉ビーズやカボション等にカット加工を施します。 しかし、質が良いとされるマダガスカル産などに比べると、ヒマラヤ産のものは白濁も激しく色も薄い傾向にあるように思えます。 ヒマラヤ産ローズの価値は「それがヒマラヤ産である」ということのみと言えるでしょう。 主な産地はチベット国境近くのシンドゥパルショークのペグマタイト鉱床ですが、他の地区でも産出するという話がございます(スパイキーパサルではシンドゥパルチョーク産以外は取り扱っておりませんが) 2008年ごろまでは比較的手に入りやすかったように思えますが、その後急激に無くなり、産地からの到着も途絶えました。 以来2012年末まで一度も入荷の話がございません。 シンドゥパルチョークでの産出は尽きた、もしくは鉱夫が居なくなったのでは、と考えております。 以降も新たに入荷する可能性は低いといえるでしょう。 |
【アメジスト(マーブルアメジスト)】
紫色の水晶といえばアメジストです。 ギリシャ語の「酒に酔わない=a-methy-stos」という言葉が由縁なのは有名な話ですが、この紫色は結晶構造格子に鉄イオンが入り込み、化学的変化のプロセスを経たものだと考えられます。一様な色のスモーキーとは対照的に、アメジストは色がむらになるケースが一般的です。 ヒマラヤ産のアメジストも例外ではなく、紫の色合いに濃淡があり、白から紫までグラデーションになったり、紫色が筋状になっているものもあります。 アメジスト水晶と差異をつけるために、この種のアメジストをマーブルアメジスト(S造語)と呼んでおります。 マーブルアメジストは綺麗にポイント結晶しているものは稀で、ほとんどの場合崩壊している塊状の結晶で産出します。 その為多くはカット加工に回しますが、丸玉やカボションは神秘的で美しい模様を持つものが仕上がります。 かなり昔から時々カトマンズに届くマーブルアメジストですが、供給も不定期で細かなことまではまだわかりません。 ダディン地区のヒンドゥンという場所が産地のようですが、ラパ村の北西方向にあたるようです。 ヒンドゥンではその他スモーキークォーツの産出も聞かれるのですが、2008年頃を境にマーブルアメジストはほとんど無くなってしまいました。 それ以来カトマンズへの到着も入荷もございません。 もともとマーブルアメジストのほとんどが古いもののストックで、近年掘られたものではなく、随分昔に掘られたものだったのではないかという見解に至っております(只今調査中です) その為、今後の入荷もかなり難しいといえるでしょう。 余談ですが、アメジストは紫外線で激しく退色しますので、長時間太陽光にさらすのは厳禁です。 蛍光灯下もNGですので、保管の際は光を避けて暗い場所に置きましょう。 |
【ヒマラヤ産ガーネット(ざくろ石)】
燃える情熱のような赤い色が印象的なこの石は日本名を柘榴石といいます。 実はこのガーネットという名前は鉱物名ではなく、14種類の鉱物グループの総称のことです。 ガーネットといえば赤色を想像する方も多いと思いますが、この14種類の中にはオレンジや褐色、緑色のものも存在します。 ユニークな産出形状をすることが多く、菱形12面体というコロコロとした形がみられることも珍しくありません(写真参照) 一般的にガーネットとして最も出回っているのはアルマンディンという鉱物です。 ネパール・ヒマラヤ産においてはこのアルマンディンとスペサルティンという種類しか確認しておりませんので、この2つを主に解説します(ネパール鉱物地質学庁の2004年の調べによると、ヘソナイトの産出も確認されているそうです) カボションや丸玉ビーズとして登場しているものはアルマンディンガーネットです。 深いワインレッドですが、光に翳すと少しピンク色っぽくも紫っぽくも見えます。 この赤い色は鉄やクロムといった成分によるものとされています。 アルマンディンはダディン地区とサンクワサバ地区、そしてタプレジュン地区の結晶片岩中や片麻岩中で産出します。 最も多く産出するのはサンクワサバですが、当店のビーズ玉やカボションに使用しているような質の良いガーネットはダディン地区ガネーシュヒマール山のルニール鉱山(ルビーで有名な鉱山です)周辺でしか採れません。 ※2010年にボテコシという産地のガーネットを確認しましたが、こちらも内部が透明で非常に綺麗なものでした。 只今調査中です。 また、タプレジュン地区のペグマタイト鉱床では水晶に内包された状態でも産出します。 水晶用語解説内包物編:ガーネット入り水晶もご参照ください。 |
【ヒマラヤ産アクアマリン(緑柱石)】
アクアマリンとは、海のように美しい水色から名づけられた宝石名(通称)であり、鉱物名はベリルといいます。 和名は緑柱石。 色が濃いアクアマリンほど好まれる傾向にあり、最高質のアクアブルーをかつて良質を産出したブラジルの鉱山に因んで「サンタマリア」と呼ぶことがあります。 カット加工され、宝石として市場に出回っているものは熱処理(エンハンスメント)によって色を濃くしているものがほとんどです。 天然のものの多くは内部が白濁していたり、緑色が強いのですが、良質のものは綺麗な6方結晶(6柱状)を成し、透明で美しい水色をしています。 ネパール・ヒマラヤにおいてアクアマリンは比較的産出の多い石であり、ほぼ全域にわたってヒマラヤ高地結晶質岩に属する片岩や片麻岩中のペグマタイト鉱床からの産出が確認されています。 しかし上質なものは稀で、最も質の高いものが産出するのはタプレジュン地区のカンチェンジュンガ山です。 特にパティバラ(3794m)以高の高地(イカブ・サンサブ地域やロダンタール地域)では良質で面白いアクアマリンが産出します。 次いでサンクワサバ地区のヒャクレイ地域やマナン地区のナジェ地域でも質の高いアクアマリンが産出します。 これらの地域からくるアクアマリンは天然結晶でも色が濃いうえに透明度も高いもの、6柱形状もしっかりしたものや、水晶に貫入したアクアマリン、白雲母に埋もれたアクアマリンや、ショールトルマリンと共存するアクアマリンなど、世界でも充分に通用するユニークで面白いアクアマリンが採れます。 しかしカンチェンジュンガのアクアマリンは採掘が困難な高地からの産出ということもあり、非常に高額で取引されるのが現状です。 現地ではカンチェンジュンガのアクアの特徴として、結晶内に十字に交差する霧状のもやがあるといわれておりますが(写真参照:十字というよりもXXXのような感じ→当店ではカンチェンクロスと呼んでいます)これが果たして本当にカンチェンジュンガのアクアだけに現れる特徴なのかは、わかりません。 その他の地区や地域でも産出がありますが、その他の地域のアクアマリンはほとんどが白んでいたり、結晶が崩壊しているものです。 また、最近パキスタンからアクアマリンが入ってきており、「ヒマラヤ産」として売られているという情報が入っております(未確認)ので注意が必要です。 |
【ヒマラヤ産アクアマリンキャッツアイ】
アクアマリンの中には光を反射することによって猫目石のように一本線がはいるものがあります。 これをアクアマリンキャッツアイと呼びますが、希少性も高いく、レアな石といえるでしょう。 キャッツアイ効果は不透明な繊維状組織の内包(または鉱物の結晶状態が繊維状組織そのもの) によって、繊維状組織が光の反射をおこすことによって現れます。 内包された繊維状組織がシャトーヤンシー効果を生むので、 透明であれば、キャッツは薄く、キャッツが濃ければ透明度は無い、というのが一般的です。 アクアマリンのあるところにアクアマリンキャッツが出る可能性があるので、ネパール・ヒマラヤにおけるアクアマリンキャッツアイの主たる産地もタプレジュン地区やサンクワサバ地区となります。 大きなものや色が非常に美しいものも稀に出てきますので、ネパールのアクアキャッツを侮ってはいけませんね。 |
【ヒマラヤ産ゴシュナイト&ヘリオドール(その他のベリル・緑柱石)】
アクアマリンと同じベリルでも色によって宝石名が変ります。 黄色や金色のベリルをヘリオド−ル(Heliodor)と呼び、ギリシャ語の太陽への捧げものという意味を持ちます。 この黄色は鉄分による色合いだと考えられています。 ヘリオドールはペグマタイト鉱床にアクアマリンと共に産出します。 ゴシュナイト(ゴシャナイト)は無色透明のベリルに与えられた宝石名です。 通常は他の色が混ざったり不純物が混ざることが多いため、純粋な無色透明のゴシュナイトは希少価値が高いといえます。 ネパール・ヒマラヤ産において確認されているアクアマリン以外のベリル鉱物はヘリオドールとゴシュナイトのみです。 これらの希少なベリル鉱物は、宝石質アクアマリンやトルマリンの産出が見込まれるサンクワサバ地区やタプレジュン地区、ジャジャコット地区のペグマタイトを調査採掘中に、偶発的かつ単発的に産出するケースがほとんどのようです。 現在に至るまで、規模が大きく商業としての価値があるアクアマリン以外のベリル鉱床は見つかっておりません。 よってこれらのヒマラヤ産希少ベリルは非常に珍しいといえます。 左写真はスパイキーパサルの私物ゴシュナイトですが、この大きさのゴシュナイトを手に入れることはほぼ不可能です。 ※ゴシュナイトはアクアマリンの内部にごく稀に生成される透明部分を削りだして作られることもあります。 この場合は、アクアマリン色から透明になってくグラデーションを帯びている事もあり、世にも美しいゴシュナイトが出来上がることがあります。 |
【ヒマラヤ産カイヤナイト(藍晶石)】
和名藍晶石という名のとおりインディゴブルー(藍色)の鉱物で、片岩や片麻岩といった変成岩中に産出します。 カイヤナイトは、方向によって硬度が異なるという少し変わった鉱物ですが、原石を見たときに平べったい面が高度7の面、デコボコの面が高度5の面です。 繊維状組織で崩壊質、不透明なことが多く、ほとんどの原石は加工に適しませんが、良質なものは透明感があり、カット加工を施すと鮮やかな藍色のグラデーションを示します。 ネパール・ヒマラヤ産において、カイアナイトは産出が多い鉱物の一つといえるでしょう。 ネパール全域においてヒマラヤ高地結晶質岩の変成岩中に産出があるようですが、埋蔵量が豊富なのはジャジャコット地区とサンクワサバ地区の片岩中です。 特にサンクワサバ地区から来るカイアナイトは稀に質の非常に良いものがあり、カボションカットやファセットカットを施すと、驚くほどに美しい宝石へと生まれ変わります。 中にはサファイアのように濃いブルーを見せるものや、天然の縦縞模様が綺麗なグラデーションを作るものなどがあります。 これらヒマラヤの良質カイアナイトは世界に誇れるカイアナイトだと言えるでしょう。 全体的な埋蔵量は多いとはいえ、宝石質カイヤナイトはなかなかの希少品です。 もともとカイアナイトに対して「綺麗な石」という概念を持っている方は少ないと思いますが、ヒマラヤ産のカイアナイトはその概念を見事に覆してくれるはずです。 |
【ヒマラヤ産ハンベルジャイト(ハンベルグ石)】
ハンベルガイト、ハンバーガイト等呼び名は様々ですが、スウェーデン鉱物学者・アクセルハンベルグに因んで名づけられました。 日本名はハンベルグ石。 原石は半透明で白濁しており、伸長方向に条線が入っています。 宝石質とされる透明部分を持つものはごく稀で、非常に脆い性質をもちますので、カットには適しません。 しかしコレクターの間では人気が高く、蒐集品のひとつです。 ネパール・ヒマラヤ産においては、マナン地区とサンクワサバ地区で産出が確認されています。 原石は見かけますが宝石質でファセットしてあるものは稀で、かなりの高額で取引されます。 かつては宝石質の良質もありましたが、産出が減っている為、現在市場に流れているものはストックからの放出が多いようです。 |
【ヒマラヤ産ショールトルマリン・黒いトルマリン(電気石)】
トルマリンの中でも不透明で黒いトルマリンをショールと呼びます(※これは鉱物としての名前ではなく、宝石名としての通称です) 熱すると電気を帯びる為、日本名を電気石といいます。 黒色の原因は鉄分であり、縦方向に条線をもつ柱状で産出する場合が多い。 透明度が無く、黒色ということから、カット加工を施しても宝石としての価値はあまりありません。 タプレジュン地区のカンチェンジュンガ山・ペグマタイト鉱床が広がるイカブ地区やロダンタール地区がショールの良質を産するとして有名です。 この地区のショールは照りが強く、形状もしっかりとしているものが多く、水晶と共生しているものや、長石母岩がついているもの、ガーネットやアクアマリンを伴ったものなど、非常に面白いものが見つかっています。 しかしかつては多く採れたショールも減少傾向にあり、今後は少なくなると思われる石のひとつです。 |
【ヒマラヤ産ドラバイト・ブラウントルマリン(苔土電気石)】
トルマリンの中でもブラウンのものをドラバイトと呼びます。 マグネシウムの含有が褐色を作り出すとされており、角度によって深いブラウンからオレンジ、イエローのようにも見えます。 ネパール・ヒマラヤ産においては、ジャジャコット地区に産出し、産出量は多いといえます。 ティカチョールといわれる地域のようですが、詳しいことは現在調査中。 ジャジャコット地区のドラバイトは2-3cmの結晶がコロコロと産出するような産状で、表面には艶が無く、ひび割れていることが多いため、原石としての魅力には若干乏しいといえます。 スパイキーでもほとんどを丸玉ビーズやカボションカット加工しています。 カットを施すと、イエローからブラウンまでの多色性を示し、魅力的な宝石に様変わりします。 稀にアンバー(琥珀)のような神秘的山吹色のものがありますが、これは非常に魅力的と言えます。 ドラバイトの産出はその他タプレジュン地区とイラム地区にもあるようですが、詳細は不明。 |
【ヒマラヤ産カナリア・イエロートルマリン(電気石)】
黄色い鳥、カナリアに因んでイエロートルマリンをカナリアと呼ぶことがあります。 これも鉱物名ではなく、宝石としての通称です。 イエロートルマリンはほとんどがマナン地区のナジェ地域からやってきます。 良質のイエロートルマリンはまさにカナリアのような鮮やかな色を発し、カボションカットやファセットカットとして市場に出回っています。 原石は崩壊質でしっかりした結晶を持つことが少ない為、もっぱらカット加工されます。 また、マナンのトルマリンは多色性を示しているものもあり、イエローとブラウンの2色トルマリンや、ピンクとイエローが混ざったトルマリンなど、美しく魅力的なトルマリンが存在します。 同じように多色性を示すイエロートルマリンはサンクワサバ地区でも産出していました(現在閉山中) かつては多くあったマナンのトルマリンですが、最近では全くもって新しいものを見かけません。 古くからの業者が古くからのストックを持っているのみというのが現状と言えるでしょう。 こちらの鉱山もすでに枯渇または閉山していると考えられます。 |
【ヒマラヤ産マルチカラートルマリンや希少トルマリン(電気石)】
ネパール・ヒマラヤにはその他珍しいトルマリンも産出します。 ヒマラヤトルマリンの聖地として名高いヒャクレイ地域(鉱山2153m)では、1956年から約8年間採掘がおこなわれ、延べ1300キロ(うち宝石質は10%程度と言われる)の産出があったと記録されています。 このヒャクレイ地域のペグマタイト鉱床は広大であり、今でも宝石質トルマリンの埋蔵が推測されますが、現在は度重なる地崩れにより鉱山は完全に閉山中となっております。 以下の解説に登場する希少ヒマラヤ産トルマリンはすべてサンクワサバ地区のヒャクレイ地区とファクア地区のものですが、現存するヒャクレイ・ファクアのトルマリンは新しく産出したものではなく、すべて50年代に産出されたもののストックとなります。無色透明のトルマリンをアクロアイトと呼びますが、多色・有色性を示しやすいトルマリンにおいて、透明なものは非常に稀産で高価です。 次いで神秘的な藍色のインディゴライトの産出も記録があります。 美しい500カラットのヒャクレイ地区産トルマリンがドイツ人コレクターに渡ったとか。 また、ウォーターメロントルマリンといわれる赤と緑が綺麗に分かれているトルマリンや、一つの柱状結晶で3色4色といった多色を持つ、パーティーカラー(マルチカラー)トルマリンなども存在します。 ヒャクレイ・ファクアのトルマリンは強い多色性に特徴があるといわれており、見る角度によって濃く見えたり薄く見えたり、違う色に見えてりする特性があることが分かっています。 その他、カボションカットを施すとキャッツアイ効果を示すトルマリンキャッツアイも確認されています。 鉱山の閉鎖により、只今市場に出回るのはかつてのストックものとなっておりますが、ヒャクレイ周辺では今も細々と村人が掘っているそうです。 小さな産出は稀にあるようですが、未だ大きな鉱床にはぶつかっていないようです。 今後地崩れの土砂が取り除かれ、ヒャクレイの採掘が再開することになれば、また素晴らしいトルマリンたちに出会えるのかもしれません。 |
【ヒマラヤ産ルビー(コランダム)】
宝石としてはダイヤモンドに次いで価値のある石とされるルビー。 ルビーという名前は宝石における呼称であり、宝石質の赤い色のコランダムのことを指します。 クロムと鉄の含有により赤からピンクまで様々な色調を持ちますが、赤いものほど価値があるとされ、ミャンマー産の最高質のものは「ビショップブラッド(鳩の血)」という異名を持ちます。 世界中の火成岩、変成岩中に産しますが、宝石となるような良質のものは決して多くありません。 ネパール・ヒマラヤ産においては採掘の歴史が非常に浅く、ガネーシュヒマールでその存在が確認されたのは、1980年初頭のことです。 ある程度の埋蔵量が期待されていましたが、採掘場が非常に高地であるということや、自然環境の厳しさから、大規模な採掘は大変困難となっております。 特にチュマール鉱(約3800m)とルニール鉱(約4200m)のヒマラヤ高地変成岩地帯が採掘場となっておりますが、チュマール鉱のほうが良質のものが産し、ルニール鉱のほうが産出量は多いというのがわかっております(84年クリストファースミス博士調査) しかしながら良質を産するチュマール鉱はもともとの埋蔵量も少なく、現在では完全枯渇状態となっております。 従って宝石質のルビーサファイアもヒャクレイ地域のトルマリン同様に市場にあるものはすべて80年代に採掘されたストックものであり、最高質のものはすべてヨーロッパの蒐集家などに流出してしまっております(ちなみに当店でも最高質のものをひとつ保持しております) ルニール周辺では今も若干ながら採掘がおこなわれておりますが、透明度のある宝石質は残念ながら産出しておりません。 この産地の特徴として、ひとつの石でカラーゾーニングが激しいということが上げられます。 ルビー色のボディに紫を帯びた青色が混ざり合うことがあり、強い2色性を示します。 この為、ルビーサファイアと呼ばれることがあります(但し、世界のその他の産地でも2色性を示すルビーやファンシーサファイアは確認されていますので、一概にネパールのルビーのみを示す特徴ではありません) 余談ではありますが、チュマール周辺やルニール周辺では80年代から90年代に激しく乱掘され、遠くから見ても場所が確認できるほど岩肌が露出してしまっております。 |
【ヒマラヤ産サファイア(コランダム)】ルビー同様にサファイアとは宝石質コランダムを指す宝石名であり、赤以外の色のコランダムをサファイアと呼びます。 やはり深い青色のものが最も価値が高いのですが、その他にも無色サファイアやイエローサファイアなど、含有物の具合によって様々な色を示します。 一大産地はミャンマーですが、インドのカシミール地方にのみ産するサファイアはカシミールブルーと呼ばれ、コレクターアイテムになっています。ネパール・ヒマラヤにおいてはタプレジュン地区にサファイアの産出があります。 カンチェンジュンガ近くのクプタールというところは通称「サファイアヒル(サファイアの丘)」と呼ばれ、かつては多くを産出しましたが、今はほとんど底を尽きた状態です。 残念ながらこのサファイアヒルのものは宝石質や大きな結晶が稀で、ほとんどが不透明で紫を帯びた薄ブルーに強い縞模様を示したものです。 筆者もファセットカットされた宝石としてのサファイアは見たことがございませんが、カボションであれば色の良いものも存在します。 良質のものは今後より手に入りにくくなると思われ、希少といえるでしょう。 通常見かけるタプレジュン地区クプタール産サファイアのほとんどは、紫を帯びた水色で不透明なものです。 しかしながらこの紫みを帯びた水色が非常に優美な色合いであり、カットしてビーズ加工するととても綺麗なものに仕上がります。 この色こそが「ヒマラヤ産」サファイアらしさであるではないでしょうか。 |